第18話 これって、もしや…

 中村優斗なかむら/ゆうとは後片付けをしている。

 今やらないといけないことであり、仕方なくとも真剣に取り組んでいた。


「本当に埃っぽいな……」


 せき込んでしまう。

 今までどれだけ、掃除をしていなかったんだろうと思うほどに、室内が散らかっている。


 小学生の終わり頃からまともに片付けもしていなかった。

 多分、五年近くは、この室内の埃と向き合っていなかったのだろう。




「……」


 室内の床は大体片付いた。


 でも、まだ散らかっている。


 一旦、軽い休憩を取ってから、掃除機の電源を入れ、音を鳴らしながら埃を吸い取っていく。


 掃除していることで、埃以外の存在にも気づいてきた。


 それは昔、読んでいた本など、小学生の頃の思い出があるということに。


 小学生の時、関わっていたモノは捨てるとかではなく、やみくもに、この部屋に押し込んでいた気がする。

 そんな記憶が、優斗の脳裏をよぎった。


 何年も前の出来事だが、昔の漫画を見ると、自然と思い出せたのだ。




「……こういう漫画とかも読んでいたっけな」


 一旦、掃除機を止め、手にしている漫画を見開いてみた。


 小学生がよく読んでいる雑誌に掲載されているであろう感じの漫画だ。

 昔は面白いと感じていたが、ある程度年齢と重ねると、意外と普通に感じる。


 でも、じっくりと読んでみると、ストーリーの流れが簡潔でわかりやすい。

 書いている側もしっかりと考えているのだと、実感できるようだった。




「というか、次のことをしないと」


 いつまでもダラダラと、過去を振り返っている場合じゃない。

 振り返るのは、休みの日にしようと思う。


 その漫画を先ほど綺麗にした棚のところに、一先ず置いておいた。


「あとは……他の棚のところだな……えっと……」


 この部屋にある棚は、一〇台ほどある。

 それら全部の清掃。


「そんなにあんのか……今日中にできか?」


 スマホを確認すると、夜八時を余裕で過ぎている。


「食事もしないといけないし……」


 あと一時間くらいで、急ぎ足で掃除すればいい。


 今日の目的は、過去と繋がりのあるものを見つける事。

 ただ、それだけなのだ。


 多分、ここにはアルバムがあり、それさえ、見つければ一応、自分の中では合格である。




「うわッ、ヤバいな」


 少しでも埃を取ろうものなら、棚にかかっている埃が雪のように上から振ってくる。


 汚いというか。

 あまり、よい気持ちにはならない。


「ん? なんだ、アレ……」


 じっくりと見てみると、棚の少し上らへんに糸みたいなものがあった。

 白い線のようなもの。


「服とかの糸? それとも……クモ、なのか……?」


 辺りでは埃がまっていて、わからなかったが、再びじっくりと見ると、本当にクモの糸だった。


「な、なんで?」


 何年も掃除すらもしていなかったのだ。

 ゆえに、虫がいてもおかしくはないだろう。


 もう少し早くに気づいて、掃除すればよかったと後悔しても遅い。


 いらないってのに。

 こんなクモの糸とか。


 少々怒りまじりに、箒の先端を使い、糸を取り除こうとする。


「何とかってところか」


 この様子だと、他にも色々と面倒ごとが増えてきそうだと思う。


 けど、やらないといけない。

 嫌だと思っても、やるのなら早いところ取り掛かった方がいいに決まっている。


 優斗は無心になりながら、掃除用具を駆使して棚の埃を全部、取り除くのだった。




 四〇分ほど経過した頃合い。

 何とか終わった。


 最初よりも、室内が綺麗になった方だと思う。

 見栄えもよくなった。


「あとは、アルバムだよな」


 昔の出来事と一番繋がりがあるであろう、あのアルバムである。


 母親は何も教えてはくれなかったが、絶対に何かあるはずだ。

 それさえ、見つけることができれば、あの二人のことも、より一層わかってくると思う。


「ここか? いや、この周辺かな?」


 どこに何をおいていたのか全く不明。

 すべて手探りで、あのアルバムを見つけようとする。


 昔使っていた剣道用具や、小学生の頃使っていた教科書。

 それから、昔来ていた服など。

 多種にわたるほどに、その棚には置かれていた。


 掃除する前は酷い散らかりようで、まったくわからなかったのだが、綺麗になったことで不明瞭なことが明るみになってきている。


 でも、アルバムがない。


 もしかして、母親がどこかに保管しているとか。


 だとしても何度も探し続けた。




 そして――


「これって……まさか」


 ついに、それらしいものが見つかった。


 表紙が赤色で、それ以外のデザインがない仕様の本状のモノ。


 優斗は開いてみる。


 これは当たりだろう。


 田舎のような場所を背景に撮られた写真が何枚も、手にしているアルバムには保管されていたのだ。


「や、やっと、見つかったぁ……」


 頑張った甲斐があったと心の底から感じていた。


 次のページ、もう次のページと、めくっていくと、とある写真が視界に入る。


「これって……夢の中で見た、あの女の子かな……?」


 小学生の頃の優斗が、小学生らしい幼い体系をした二人の女の子と映っている写真が数枚ほど見つかったのである。


 あれは、夢の中での出来事ではなかったのだろう。

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