男子高校生の頭の中。

文屋の田中。

野球。

僕は野球をしている。野球と聞いて「灼熱の太陽」「坊主頭」「日焼け」など、青春を彷彿とさせるような単語が頭に浮かんでくる人も多いだろうが、うちの野球部はそこまで厳しくない。僕は襟足も伸ばしているし、パーマを当てていた時期もある。そんな僕でも、部活中は野球少年である。試合には勝ちたいし、ヒットは打ちたいし、早い球だって投げたい。

「今チームええ感じやねん」

チームの皆が口を揃えていうような雰囲気だったとき、エースで4番の中学からの友人が骨折した。全治3ヶ月。春の大会は絶望。夏の大会はでれるかどうか分からない。

「チームやばないか」

一瞬でチームの雰囲気が180°変わった。彼がいなくなってからというもの、打線は湿りっぱなし、守備もガタガタ、練習試合は全敗。彼1人の力が失われただけではないのは明らかだった。

そんな時、某元メジャーリーガーがYoutubeでこんな話をしているのを見た。

「綺麗な野球を目指しなさい。第三者が見て綺麗な野球を。」

ハッとさせられた。彼がいなくなってからというもの「彼の穴をどう埋めるか」「如何に工夫して姑息に点数を取るか、守り切るか」そんなことばかり考えて、肝心の自分たちの野球を見失っていた。自分達ができる野球を、確実に。当たり前の事を、当たり前に。そうすれば見苦しい野球ではなく、綺麗な野球になるのではないか。相手の良いプレーを防ぐ事はできない。それを如何に最小限で食い止めるかが重要なのではないか。

仲間に合わせたり、相手に合わせたり。それは本当の自分達なのだろうか。それで最大限の力が発揮されるのだろうか。自分達がやってきたこと、できることを信じて、確実に、一個ずつ丁寧に積み重ねていくことが最大限の力を発揮する遠回りに見えるけれども、最短の道なのではないか。

そんなことを考えた1日だった。

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男子高校生の頭の中。 文屋の田中。 @bunyanotanaka

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