第47話 エンディングのその後は

そわそわしながら待った1時間後、開票結果が校内放送で流される


『選挙結果をお伝えします』


『双葉姫子さん、209票』

『来知麗さん、252票』

『十堂花道くん、14票』


『今回の選挙は、来知麗さんが当選となります』


「やりましたわー!」

「うんっ、おめでとう、麗ちゃん!」

あたしは麗ちゃんを持ち上げ、くるくる回転をする

麗ちゃんも両手を横に伸ばした飛行機のポーズを取る

すごい子供っぽいけど、まあ…今はいいよね?



「…あれ、ひめちゃんは?」

ひとしきり喜びの飛行機ダンスを舞ったところで

彼女がクラスにいないことに気づく


「さっき結果発表が出た直後に、屋上の方へ向かってったで

 慰めるために、あめちゃんあげようと思ったんやけどなぁ」

「佐藤さん」

結構よく見ている佐藤さん

あめ玉をあげるタイミングを逃さないため、だろうか


「なんや知り合いなんやろ、麗ちゃんと美遊

 積もる話でもしてきたら、ええんちゃうかな?

 あの子はなんか…ほっといたらあかん気がするわ」

佐藤さんも関西から引っ越ししてきた人間だから

見知った人がいてくれるありがたさが、わかるのかもしれない


「ありがとうございますわ、佐藤さん。行ってまいります!」

「後であめちゃんあげるね!」

「それはうちのセリフやぁ~」

あたしと麗ちゃんは、屋上へと駆け出した



プリンセスは一人屋上で風に吹かれ、空を見上げていた

ドアの音で誰かが屋上に来た事に気づくと、入り口の方へと振り向く


「あ…」

それがあたしたちだとわかると、ほっとした表情を浮かべる


「ふぅ…負けてしまいました……

 みなさんのお役に立つために、頑張ろうと思ったんですけど」

そう…プリンセスはいつも、こうなのだ


「ふふふ…私、中身おばあちゃんだから

 もうカリスマも無くなっちゃった、って事ですかね?」

「それは……」

言いたいことがあるんだけど、上手く言葉にできない感じの麗ちゃん


「『……いいや、それは違うな。プリンセスよ』」

ここはあたしが、ゲームを通して見てきた立場から、言わせてもらおう


「そ、そのセリフは…ずるいですよ」

赤くなってもじもじするプリンセス

本当に結婚したのはシーダーなのかもしれない


「あたしも、麗ちゃんも、あの世界を見てきたみんなは

 プリンセスが大好きなんだ」

攻略不可能とまで言われたプリサガを、死ぬほどやりこんだのは

…やっぱりストーリーが、それを成す主人公が…好きだったから


「カリスマとか、家柄とか、美人だとか、そういうんじゃなくて」


「頑張って、最後まで役割を全うして、みんなのためになろうとした

 そんな健気なお姫様を、みんな助けたくなっちゃうんだよ」


「『私達にしかできないなら、それは私達がやることだ!』……って」


「それこそがプリンセスの…あなたの一番の魅力」

自分では気づきにくい事だけど


「けど、あなたが頑張らなきゃいけないほど、この世界はピンチじゃない…

 だから学校のみんなに、あなたの魅力が伝わりにくかったんだと思うよ?」

これがプリンセスの弱点…彼女は、平和な時は、普通の女の子なのだ



「…すごく勝手な事を言いますわよ」

麗ちゃんが声を出す


「ちょっとしたいざこざなんかは、わたくしと美遊様に任せて」

どこまでも頑張ってしまう彼女と、それに頼りきりだったあの世界

非常時には、仕方ない事だったのかもしれないけど


「第二の人生は、あなたの幸せのために、生きて欲しい」

何かに追われることなく、自由に


「そして、できればわたくしと…友達になってくださいな」

笑顔で、すっ…と彼女の前に右手を差し出す


それは、プリンセスが果たせなかった、もうひとつのこと


「あはは…な、なんだろ……

 勝手に涙があふれてきて……いやだね、年をとるって…」

ぽろぽろと出てくる涙をぬぐうプリンセス


「あの時から、随分時間が経ってしまいましたが…」

「…うん、ありがとうれーちゃん……これから、よろしくね」

麗ちゃんの右手を取り、固く握手をするプリンセス

その瞳からは、また涙があふれ…

そんな彼女を、麗ちゃんは抱き寄せ、よしよしと頭を撫でた






「…よし!もう吹っ切りましたよ!」

しばらく麗ちゃんの胸の中で泣いていたプリンセスが、元気を取り戻し叫ぶ


「私、これからお料理部に入る!

 実は前から、お料理を本格的にやってみたかったんです!」

プリンセスの料理エピソードは、メインシナリオには無いんだけど

美形たちを攻略するパートには、結構あったりする

プリサガの男性陣は、愛情料理に弱い


「マヨ卵かけライスを超える、スペシャルな料理を編み出して見せます!」

ちょっとひと手間でできそうな料理だからねぇ

もっと本格的で美味しい料理を作りたいという事かな


「…あ、そうそう。マヨ卵かけライス、前から気になってたんだ

 なんか試しに自分で作ってみてもあんまり美味しくならなくて」

学園の食堂でヒットする程ではないんだよね…何が違うのか


「ふふふ、実はですね、秘密の隠し味があってですね

 アレを混ぜないと美味しくならないんですよ」

「ホントですの?!今度作ってくださいまし!

 わたくしが作ったやつは、美遊様がメチャクチャ渋い顔しまして…」

「うん、じゃあ今度の土曜日くらいにどうかな?」

「ほうほう、じゃあわたくし、卵買っていきますので、美遊様の家で…」

…プリンセスと悪役令嬢が、笑顔でわいわい言ってるのを見て

あたしはなんだか優しい気持ちになった


二度目の人生を得た彼女たちが、どうか幸せでありますように



「み、美遊様、何ですのいきなり?!」

「ほぇ…」

「急に撫でられると困惑するのですが…

 あ、いや、嫌なわけではないのですけれど……」

「ふふ、麗ちゃんはいいプリンセスガードさんに巡り合ったよね」

「え、何で美遊様が、わたくしの騎士様だと気づいて…?!

 この前は、そこは伏せて話しましたわよね?!」

「私、実は『神の目』っていう、相手のステータスを見るスキルが…」

「あー!どうりで説得がやたら上手かった訳ですわ!」

「でも、美遊さんでも、れーちゃんは渡しませんからね!」

「いやいや、プリンセスでもそこは譲れないよ。麗ちゃんは渡さない!」

「ちょ、ちょっと、お二人とも!近い!近いですわ!」



エンディングのその後は、やっぱりハッピーなのが一番、だよね!

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現代に転生した悪役令嬢と、オタクに優しい黒ギャルが、クソゲースキルでおねロリ無双! ~小さな元悪役令嬢がむっつりかわいすぎて、ついついかまいたくなる件について~ 青単西本 @perusianblue

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