第41話 出馬!森木学園生徒会選挙

そして、一週間が過ぎた朝

あたしは麗ちゃんと待ち合わせをして、学校に向かっていた


最近はいつも一緒に登校している

学校まではそんなに長い距離ではなく

待ち合わせをして登校するほどでもないのだが…

なんとなく、麗ちゃんと一緒と言うのが嬉しかったりする


と、おだやかな登校をしていたのだが…そこに、意外な人物が通りかかる


「あ、生徒会長様ですわ」

「おや、美遊さんとリトルレディじゃないか」

イケメンが登場

どうやら麗ちゃんの呼び方は、リトルレディで定着したらしい


「イケメン今日はどうしたの?

 普通はあの家からじゃ、この通学路通らないんじゃない?」

「今日は病院に寄ってから来たんだ。生徒会で遅くなりそうだしね」

「あー…」


あの後、あたしたちはナース…いや、尊士くんを

『三森山に突如発生した竜巻に巻き込まれた』

という設定で、病院に担ぎ込んだ


「美遊さんたちが尊士を見つけてくれなかったら、危なかった…弟の命の恩人だよ」

「あ…う、うん…」

ちょっとバツが悪い…痛めつけたのあたしだし

ただ、ホントの事話しても信じてもらえないし、これが最善だったと思うんだけど


「二人とも、毎日お見舞いに来てくれてありがとう」

「い、いえ、乗り掛かった舟と言いますし…」

「おかげで、すごいスピードで回復してるらしくて、今週中には退院できそうだって」

「よ、よかったですわね」

まあ、イケメンは社交辞令のつもりで言ったんだろうけど…

それはホントに麗ちゃんのおかげです

毎日お見舞いに行った時に、麗ちゃんがこっそり小回復(ヒール)を使っている


ただ、その回復魔法をかける時に


『これはナースの双子の弟で悪くない方ですわ…

 だ、だからヒールをかけるのも許されますわ…!』


麗ちゃんが毎回ぶつぶつ言ってるのが、ちょっと怖かったりする


…と、イケメンと会話をしながら登校する途中で、さらに知り合いがやってくる


「よっ!久しぶりじゃねえか」

「マウンテン!」


マウンテンが登場


彼はあの後、ナースの記憶を完全消去したことを聞いて

『ぬるいんじゃねえか?

 解呪の魔法を使わせて、転生術を消して殺すって事もできたんじゃ』

などと言ってたりする


頭いいな!誰だよお前!…って言いたくなる気持ち、すごいよくわかる

ゲームのマウンテンこんなキャラじゃなかった~

これが『〇〇はそんなこと言わない』ってやつか


まあ…転生術が解呪で消えるかどうか、確認できなかったし

イケメンの事も考えると…ねぇ


「あれ?山田くんと知り合いかい?」

「…え、山田?」

「山田純一くん、昨日うちのクラスに転校してきたんだよ」

「え」

「いや、元々近くに住んでたんだが、俺の地域だけ

 なぜかあっちの林中学校の校区だったんだ」

「でも、こっちの森木学園の方が近いのに…って話したら、変更が認められてよ」

あ、麗ちゃんがぷるぷる震えてる

わたくしはあんなに苦労して転校してきたのに、こいつはあっさり…

とか思ってるんだろう

…いや、麗ちゃんは年齢の壁を超えて来てますからね?


「そんで、こいつとは…あー…」

「昔、一緒に遊んだことがありまして

 その時のあだ名がマウンテンでしたの」

「あ、ああ、そうそう『一緒に遊んだ』んだ」

四天王ごっこ(本物)をして遊んだ仲です


「お前には色んなこと教えてもらったよなー」

あの時のことを思い出すマウンテン

たしかに、ゲーム内でも結構、レイシィの世話になってた気がする


「しかし…前よりはマシですが、相変わらず小太りしてますのね

 少しはお痩せになったら?」

「しょ、しょーがねえだろ!こっちの食いもんめちゃくちゃうめーんだから!」

「あー、それはわかりますわね」

「駅前のシュークリームとか美味しいですものね」

「だよなー」

「うんうん、シュークリームは美味しいよね」

「あたしあそこのだとプレミアムいちごが好き」

シュークリーム美味しいで一致団結するあたしたち4人

国の違いも、美味しい物があれば乗り越えられるのかもしれない


「あ、そうだ。そろそろ生徒会選挙が始まるけど…立候補するかい?」

ああ、もうそんな時期なのか…

麗ちゃんが転校してきてから2か月…あっという間だったなぁ


「もちろんですわ!わたくしのカリスマ、お見せいたしますわ!」

「最近色々あったから、抜け殻になってるんじゃないかと思ったけど」

「むしろようやく、自分の夢(やぼう)に着手できますわ」

「これが若さか」

9歳だしね


「そ、それでですわね…

 美遊様と一緒に選挙やりたいのですけれど…ど、どうでしょう?」

あたしを誘ってくる麗ちゃん

…急にもじもじしだすのかわいい


「公約に『放課後になったら、校舎内でゲーム機で遊んでもよい』

 ってつけようと思うのですけれど」

「乗った!」

「美遊さんの乗せ方わかってるね、リトルレディ」

「俺もちょっとづつ、こいつがどういう奴なのかわかってきたぞ」

ゲーム大好きオタクに優しい黒ギャルですよ?


「まあでも、麗ちゃんの頼みだったら、理由なしでも聞いちゃうけどね」

久しぶりに、がばーっと麗ちゃんを抱きしめるあたし


「はぅ…み、美遊様ぁ……もう……」

麗ちゃんは相変わらず、やわらかくてあったかい

恥ずかしがりながらも、麗ちゃんはあたしを見上げてほほ笑んでくれた


「ふぅん…あいつ、昔は結構カリカリしてたが…」

「…そうなのかい?」

「今は、笑ってる事の方が多いんだな」

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