第37話 転職!守護騎士(プリンセスガード)

「…くそ!ドラゴンB、C、D!三方から同時にレイシィを狙え!」

先制反撃は、スキル所持者が狙われているか、正面に敵がいる時にのみ適用される

色んな方角から麗ちゃんだけを狙うのは、戦法としては正しいが…


赤いオーラのようなものが、あたしを包む

それを見たドラゴンは、命令を無視してあたしを攻撃にかかる


『先制反撃(カウンターアタック)!』

「グォオォォォォォオォォォォォ!」

緑の風の刃にて、ドラゴンが三体、真っ二つになった


「よし!いけるじゃ…うおっ…?!」

真っ二つにしたドラゴンの片方が

こちらに転がってきて、足の爪が服をかすめる


「もうちょっと、安い服着てくればよかったじゃん…」

「な、なぜだ…なぜレイシィを狙わん?!」

作戦が失敗して、動揺するナース


「いや、そのスキル、見た事がある…

 攻撃の対象を自分に向けるスキル…『攻撃集中(プロボック)』!

 そして、先ほどの『先制反撃(カウンターアタック)』…

 そうか…守護騎士…!お前はプリンセスガードか!」

プリサガにおける上級職、守護騎士(プリンセスガード)

主人公のプリンセスを守るスキルを大量に習得できる

転職条件は体力50以上、そして…


『プリンセスとの好感度がMAX』になってること…!


あたしはプリサガが好きだけれど

主人公を好感度MAXになるほど好き、という感じではない


つまりこれは…

『あたしが麗ちゃんを、好き好き大好き♪』な事を

ステータスウインドウさんがお認めになったという…


ふあああああああああああああああああああああああ


…と、恥ずかしさにのたうちまわりましたよ、ええ

麗ちゃんは転職条件とか知らないので、秘密にしております

これは墓場まで持っていきたい…


作戦会議のために、麗ちゃんの魔力を借りて

ステータスウインドウを確認したら

『転職しますか?』とか出てきてびっくりした


「レイシィが何か小細工をしたな!まさか現地人を女騎士に仕立てるなど…!」

「くっころ!」

「なんだ?!何を叫んでいる?!」 

「…意味は無い!

 なんか女騎士と呼ばれると、そう言いたくなっただけじゃん!」

「ふ…ふざけるなああああああ!貴様ああああああああ!」

よーしよし、いい感じに頭に血が上ってるぞ


「ならば…全員でかかればいい!『先制反撃』は失敗もある!」

「ぐっ…!」

作戦ミスはしてくれないか…!


「俺が突撃、二体は脇から攻撃しろ!」

ドラゴンは巨体だから、一度に三体が限界…

六体一斉とかならやばいけど、これなら…!


「『竜騎突撃(ドラゴンチャージ)』!」

「『先制反撃(カウンターアタック』!」

突撃してくるナースの乗ったドラゴンに、『先制反撃』を使用するが…


「…な?!」

「くはははは!竜の障壁は絶対に破れない!

 俺の乗る竜が先に倒れることは無い!『先制反撃』破れたり!」

知ってる!…が、今は仕方ない!

効かないことに焦るフリをする…!


「『瞬間障壁(プロテクション)』!」

爪が届く寸前、麗ちゃんの習得した障壁が、あたしを包む


「…ふん、ダメージを軽減したか。だが」

「美遊様!」

「大丈夫…麗ちゃんは必ず守るから…!」

肩にドラゴンの爪の一撃が加わり、血が出てきている


「わたくしがもっと、障壁のレベルを上げられたら…!」

プランBはガチンコ勝負

あたしの大量に余ってたスキルポイント

麗ちゃんの少し残ってたスキルポイント

あたしたちは全てを使いスキルを習得し、戦っている


「は!催眠魔法にスキルポイントのほとんどを振ったお前に

 今更プリンセスの戦法など、真似できるものか」

「……」

光の道を歩んでこなかった少女に、その戦法を取る資格は無い

ナースは暗にそう言っている


…だけど!


「『いや、それは違うな。宮廷魔術師よ』」


プリサガで、あたしが一番よく使っていた守護騎士シーダー…

あたしの中の彼が、それは違うと言っている!


「麗ちゃんは、今の最善を尽くしてるだけじゃん!

 それが似てるかどうかとか、そんなものどうでもいい!」

失敗も後悔もある

けど…今、信じるもののために、全力を出さない理由にはならない!


「……そうですわ…!今できるやり方で…!」

麗ちゃんは吹っ切って、新しく覚えた魔法を唱える


「小回復(ヒール)!」

柔らかな光があたしを包み、癒していく

傷口は完全には塞がらないものの、痛みはかなり楽になった


「ありがとう、麗ちゃん…!」

「はっ…!そんな小さな回復で…!先に魔法力の方が尽きてしまうぞ」

「……」

こいつは決して逃がさない…!

あたしは、ナースを確実に仕留めるための一手を打った


『ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃちゃん、はいっ♪』

「…は?」

足でリズムをとりながら、あたしは歌を歌い始めた


『♪ユグドラシルサーガ 愛と希望の物語♪』

「おい、お前!なぜ急に歌を?!」


『♪敵は強いぞムキムキだ 回復必須だポワポワしよう♪』

「やめろ!何のつもりだ!」


『♪スキスキユニット強くしすぎて 周りがヨワヨワすぐ詰むぞ♪』

プリサガテーマソング『愛と希望のシミュレーション』

気の抜ける歌詞だけど、オフボーカルで

ラストバトルに流れると、何故か燃えるんだこれが


「美遊様…わかりましたわ…!」

この歌に、あたしの決意…麗ちゃんの決意、スキルを乗せて…!

決して引かない…!勝つんだ…!

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