第31話 咆哮!マウンテンVS謎の男

俺は、公園でトカゲを探していた

ただのトカゲじゃない、魔力を持ったやつだ

この世界の生物に、目に見えるほどの魔力が宿ることは滅多にない

あるとすれば…


そしてしばらく収集にいそしみ

トカゲを2匹ほどを確保したところで気づいた


…あそこのベンチに座って、コンビニの食い物を漁る黒くて太い男は…

ふふ、俺はついているな

先日に続いて、四天王をもう一人発見したぞ


俺はあたりを見回してみる

どうやら他に人はいない、今がチャンスだ


「こんなところにいたか、マウンテン」

俺は男の前に立ち、征服者の声で呼びかける


「…誰?」

「…ふん、まだ目覚めてないか…」

まだ死の恐怖は味わってないのだろう

だが、俺さえ目覚めていれば大丈夫だ

後はこうして…


「な…?!」

俺はカバンから、こっそり持ち出した予備の包丁を取り出した

そして、間を置かずに、俺はマウンテンに包丁を突き刺そうとする

当然、その凶刃を止めようと、こいつは俺の手を掴み…


「お、お前……いやアンタは…!」

「主人が誰なのか、思い出したか?」

このように、恐怖を与えるのは簡単だ

俺は包丁をカバンに戻し、覚醒したマウンテンに語りかける


「一人でトカゲを捕まえるのも飽きてきたからな

 人手が欲しいと思っていた」

若いことは素晴らしい…とあの時は思ったが、子供の体力では色々つらい

やはり青年の年齢ぐらいが一番だな


「お前のような体力バカがいると非常に楽に…」

作業が進む、と言おうとしたところ



「……ああ、思い出したよ…」



「前世でいいようにコキ使ってくれた事をなぁ!」

それは前世でも見たことのない、激しい怒りの表情だった


「くらえ『八拳連舞』『双拳連打』!」

マウンテンから巨大な拳が振り下ろされる

『八拳連舞』は八回攻撃の必殺スキル

『双拳連打』は、必殺スキルを二倍にするスキル

要するに『めちゃくちゃタコ殴りにしてぶっ殺す!』と言っている


ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


「…バカめ」

だがその拳は全て、俺に届く前に、黄色く透明な障壁によって阻まれる


「…な、俺の全力が?!」

「残念だが…竜の秘術を手に入れた俺にとっては、痛くもなんともない」

攻撃の九割九分を防ぐ障壁だ

いかなマウンテンといえども、蟻のようなダメージになる


「残念だよマウンテン…お仕置きをしないといけないな」

「ぐっ!」

マウンテンは慌ててこの場から逃げようとする


「逃がさんよ」

俺は先ほど捕まえたトカゲを、袋から手に持ち、呪文を唱える


「『猛き竜よ!巨大にして強大なる者よ!

  そは生命の頂点にして絶対者!

  死に怯えろ!竜の咆哮!(ドラゴンズロアー)!』

魔法の効果を受けたトカゲは、どんどん大きくなり

爪を、牙を、羽を生やしていく

数秒も経たないうちに、トカゲは大きなドラゴンへと姿を変えた


「いくぞ!」

「グギャアアアアアアア!」

ドラゴンは俺を乗せ、高速で逃げ出すマウンテンに体当たりをした


「なっ…ぐあああああああああああ?!」

吹き飛び、公園の木に叩きつけられるマウンテン


「竜の秘術を手に入れた俺に歯向かうなど…」

「…ちくしょう……!」

倒れこんだマウンテンを、俺が操る竜が踏みつけにする

マウンテンは竜に拳で攻撃しているが、無駄である

俺の障壁は騎乗した竜にも及ぶからな


「竜の召喚だと……なぜこの世界で行える…!」

「そうだな…折角だ。手品のタネを教えてやろう」

物事をわかってないやつに、上から教育をするのはとても楽しい

これぐらいはマウンテンに教えてやってもいいだろう


「下級のドラゴンは、この世界のトカゲに転生する

 そして、生命の恐怖を感じたトカゲは、ドラゴンに変身する」

まあ、俺もこの数日で発見したのだが…

異世界に転生したが、同じ身体を持っている種族がいない場合

類似の存在に転生して、そこから変態するようだな


「しかし、トカゲのような小さな生物は、生命の恐怖に関して鈍感なのだ

 …いつも命の危機にさらされているからな

 このままでは決してドラゴンにはならない」

押さえつけられたままのマウンテンに、俺は先生のように問いかける


「ならば、どうすればいいか…わかるかな?」

「竜の咆哮(ドラゴンズロアー)…恐怖を与える魔法、か…」

「ご名答!」

俺は正解者に拍手をしてやる

マウンテン、前世より格段に頭がよくなってるな

この世界の教育は、俺たちのそれより、かなり高度のようだ


「人間なら、お前のように包丁を突き立てればいいから楽なのだが…」

「くそ、やっぱりアンタはイカレてやがる…!」

悔しがるマウンテン

ん~、やはり敗北者を上から見下ろすのは楽しいなぁ


「はあ…しかしまあ、お前の態度を見てると、素直に従ってくれないんだな」

「当たり前だろ…!アンタのせいで前世で死んで…

 なんでまた従わなきゃいけねえんだ…!」

俺より下の者が、俺に従うのは当たり前だろう?

なんで死んだくらいで、従いたくなくなるんだ?

死は労働をやめる理由にはならんぞ


「仕方ない…また首輪を使うか」

前世で反抗的なマウンテンを動かすために使っていた首輪だ

これを俺が作動させると、辺りの魔力を吸い上げて爆発する

外そうとしても爆発する

たとえ体力バカのマウンテンであろうと、生きてはいられない


「そ、そいつは…!なぜココでそれを使えるんだ…?!」

こいつが言っているのは、つまり

『この世界は魔力が濃くないので、吸い上げて爆発なんてできないだろ?』

ということだ

やはり知力上がってるなコイツ


「流石にそれは秘密だな。真実はお前の手で掴め!…なんてな」

「や、やめろ…!うああああああああああああああああ!」

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