第29話 暴露!プリサガ四天王昔話

「…レイシィ・ライチェスさん。確かに、夫のスケッチと、よく似てらっしゃいます」


プリサガのボス、悪の宮廷魔導士には4人の配下がいる


支配担当の、レイシィ・ライチェス

暗殺担当の、ネームレス・フォレスト

荒事担当の、モンスター・マウンテン

経理担当の、カウンティング・ウッズ


レイシィは、配下になることで宮廷魔導士に近づき、復讐を企てていた

モンスターは中ボス戦で、カウンティングは経済ミニゲームで、それぞれ倒すことになる

ネームレス・フォレストは…


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〇ネームレス・フォレスト

ネームレス・フォレストは、悪の宮廷魔導士によって育てられた暗殺者である

学園に潜り込み、プリンセスの暗殺を企てるが…失敗

それ以来、戦闘の見せ場になる度、隙を突こうと現れるが

暗殺はすべてプリンセスの仲間によって防がれている


ネームレス・フォレストは、宮廷魔導士の死の後も、最終ボスを倒した後も生き残る

そして、プリンセスの国づくりを見て、ようやく自分の過ちに気づき、贖罪の意識を持つ


しかし、その直後、彼に家族を奪われた少女の手によって…


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「そうですわね、信じてもらうために…いくつか、彼の話をしましょうか」


麗ちゃんによって語られていく、ネームレスのエピソード

辛い物が大嫌いで、辛い食材をお皿から一つ一つ取り除いて食べた、とか

仕事のないときは気が抜けていて、日の当たる窓辺で猫のように眠る、とか

弱いのにチェスが大好きで、しょっちゅう勝負に誘われていた、とか


「あはは…あの人らしいですね…」

最初は半信半疑だった奥さんも、聞いていくうちに、次第に納得した顔になっていった

連れ添った奥さんには、彼の行動がわかるんだろう


「ホントに、あったんですね…ユグドラシル……

 自分は気が狂ったんじゃないかと、心配してましたけど…」

遠い目をする奥さん

彼の思い出を、頭の中で蘇らせて…


「あまり本音を話す方ではなかったですけれど…

 一回だけ、彼の思いを聞いたことがありますわ」




それは、学園の一室でチェスの勝負をしていた時の事


『え、お父さん、車で迎えに来てくれたの?』

『ははは、たまにはいいだろ』

『ありがとう~、もう部活でくたくただったんだ』


そんな、なんでもない親子の会話が、外から聞こえた


「父親、ですか…」

「…なあ、レイシィ」

「…何ですの?」

ネームレスは、チェスの手を止め、わたくしに語り始めましたわ


「俺は拾われた身…

 魔導士様に恩を返すのは当然である

 厳しい修行の日々も、後悔は無い」

自らの想いを、夕焼けと共に


「…しかし、時おり思うのだ

 もしも、自分が魔導士様の実子だったなら

 …暖かい家庭というものを、手に入れていたのだろうか…と」

「それは…」

自分から父を奪った宮廷魔導士

あのようなやつにそんな家庭が持てる訳が無い

そう思っているが、彼の前でそれを言うことは、はばかられた


「もしも、許されるなら…

 妻を娶り、子を成し、暖かな家庭を築きたい…」

「あなた…」

「…いや、何でもない。ただの感傷だったな…忘れてくれ」

そして、話は打ち切られ、静かなチェスの時間が続く




「そう…彼の夢は、家族を持つことだった…

 それを与えてくれたあなたには、きっと感謝してると…そう思いますわ」

元同僚は言っている

彼を支えてきた奥さんの努力は、報われたのだと

彼はあなたのおかげで、幸せだったと


「…ありがとう、ございます」

奥さんは目を閉じ、微笑みながら感謝の意を述べる

涙が頬を伝い、静かに彼女の右手に落ちた



「…ふぅ…言ってやりましたわ!」

と、いきなり麗ちゃんが豹変する


「あのようなゲームで、わたくしの恥ずかしい過去を暴露してくれたのですから!

 あなたの過去も、奥さんにばらしてやりましたわ!」

えええええ…


「向こうでせいぜい、恥ずかしさにのたうち回るといいですわ!」

「れ、麗ちゃん…せっかくいい話だったのに…台無しだよ」

いやまあ確かに、ゲーム見た時、滅茶苦茶恥ずかしがってたけども…

そんなちっちゃい復讐しなくても…


「ふふっ…夫の言う通りですね」

奥さんも今のコントで涙が引っ込んだのか、笑顔になっている


「レイシィ・ライチェスは無駄にプライドが高くて

 よくわからないことですぐ怒る…って」

「あんにゃろー!そんなこと言ってたですの?!」

流石、元暗殺者…人物観察眼は大したものだ

…けど、奥さん、今その話いらないよねー?!


「ど、どうどうどう…お、奥さんも煽らないでー?!」

奥さんは、懐かしいものを見るような目で

ニコニコしながらあたしたちを見つめているのだった

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