第27話 開催!うちの子の方がかわいい選手権

「あ、ほっとしたら首元が気になってきた。ちょっと失礼するね」

「え」

もうイケメンしかいないしいいかな、と思い

いつものちょっと胸元開け気味の恰好に戻すあたし


「ちょ、美遊様?!殿方の前で胸元をはだけるなど…」

「そ、そんな言う程広げてるわけじゃ無いと思うんだけど…

 いつも通りに戻しただけだし…ねー、イケメン」

「そ、そうだね、うん」

ちょっと赤くなって目をそらしてるイケメン

…あれ?意外と耐性ない?


「……」

「どうしましたの?」

「うーん…ここは黒ギャルだったら

『へぇー、やっぱ男の子ってこういうの興味あるんだぁ』

 とか言ってちら見せすべきなのかな?と…」

「やらなくていいよ?!」

「あはは、冗談だよ冗談」

本当にやろうとしても、たぶんそんなスケベムーブできない

恥ずかしくて


「むー」

…と、この一連のやり取りを見て、急に不機嫌になる麗ちゃん


「なんか彼女がすごい睨んでるんだけど」

「美遊様は渡しませんわよ!」

ぎゅー、と珍しく麗ちゃんの方から抱き着いてきた

あ、あれ?これひょっとして嫉妬ってやつ?


「ほら、変な誤解生まれちゃった…」

「あたしのせい?!…いや、あたしのせいか」

嫉妬させてしまった…

でも、麗ちゃんには悪いけど…嫉妬されて…すごい嬉しい……

あたし、いけない黒ギャルだなー…


「ごめんねー、あたしには麗ちゃんという恋人がいるから

 イケメンの熱い視線には答えられないや」

麗ちゃんをこちらからも抱きしめて、頭を撫でる


「はうっ、美遊様…も、もう…」

冗談なんだろうなー、と思いつつ恋人のワードに嬉しさを隠しきれない様子

うあああ…めちゃめちゃかわいい……

恋人どころか結婚も視野に入れたい


と、そんなイチャイチャをイケメンに見せつけていると


「あ、あの…お茶菓子お持ちしました…」

短パンの小さな男の子が、お盆を持って部屋に入ってきた

お盆の上の物は羊羹とお茶だろうか…美味しそうだ


「……!」

あれ?麗ちゃんの目が急に鋭く…?


「そうだね…ボクもお断りするよ

 ボクには目に入れても痛くない弟の尊士がいるからね!」

「なっ?!」

やってきた弟を抱きしめて、逆にこちらに見せつけてくるイケメン

そうか、イケメン…お前ブラコンだったのか……


「ふふふ…なかなかかわいい弟をお持ちのようで…」

「そうだろうそうだろう…ボクの弟は世界一かわいいからな」

「かわいさなら麗ちゃんの方が上だよ!」

「なるほど、確かに彼女はかなりのかわいさ力を有している…

 しかし、真にかわいいのは尊士の方だ!これは譲れない!」

突然始まる、うちの子の方がかわいい選手権


「あの…お兄ちゃん?」

「み、美遊様?」

何を言ってるんだかわからない言い争いに、困惑する低年齢層の二人


「お互い引かずか…」

「なら、仕方ないね…」


「「ふよふよで勝負だ!!!」」


「…何ですのこのノリ」

決着はゲームで!これはデュエリストとして当然の事!

…イケメンが乗ってくるとは思わなかったけど


「ふよふよ3本勝負!勝った方の押しがかわいい!しばらくこれを認めること!」

「オーケー、それでいこうじゃん!」

ぽかんとしてる麗ちゃんに一応の捕捉を入れる


「実は、イケメンと初めて会ったのは、ゲーセンのパズルゲームコーナーでね」

「あの時のふよふよはボクが勝ったが…激しい戦いだった」

「それ以来、なんとなくふよふよのライバル的な感じな訳で」

「はぁ…まあ、よくわかりませんが、わかったフリをしておきますわ」

「正直だね!?」

「というか、生徒会長様って、遊技場に行ってもいいんですの?」

「別にうちの学校に、ゲームセンター通いを禁止する校則は無いからね」

ソファーの目の前にあるでっかいモニターに

小さなハードをつないで、ふよふよを開始するあたしたち

このモニターいいな…頑張れば買えないかな…


〇一本目

「ふよふよふよふよふよふよふよふよ!」

「ぐっ…ぐああああああ!」

大連鎖を組もうとしたイケメンに、小連鎖をいっぱい叩き込んで

連鎖できなくしてあたしの勝利!


〇二本目

「ふふ、アンタ、なかなかやるじゃん…」

「データさえあれば、ボクが負けることは無い!」

大連鎖を阻止できず、あたしの敗北

流石に一戦目で慣れたのか、小連鎖で埋まったふよを、上手く掘り起こしたな…


〇三本目

「く…間に合わない…!」

「やったー!勝ったじゃーーーん!」

小連鎖一回からの大連鎖であたしの勝利!


あたしは翔ちゃんという格上と毎回戦っているのだ…!

大連鎖同士で勝負したなら負けるけど、小回りはこちらの方が上!

…どうでもいいけど、なんで成績優秀者に限って、パズルゲーム上手いんだろう

なんかそういう頭の構造になってるのかな?


「くっ、すまん尊士…しばらくお前を一番かわいいと言えなくなった…」

「むしろかわいいと言ってほしくないんだけど…僕も男だよ」

「そんな?!…いやまあそうだな…男の子だもんな」

独り立ちしていきそうで寂しいお父さんのような視線を、弟に向けるイケメン

…なんか結構ダメ人間な気がしてきたぞ…イケメン……


「尊士かわいいの心は、そっと胸にしまっておくよ…しばらくの間は」

「期間は一週間くらいでいいよ」

「ホントか?!ありがとう」

「なんか他人事に思えなくなった」

「美遊様ぁ…」

あたしも麗ちゃんが結婚したらきっと泣くし



その後、美味しい羊羹をいただいて、なんやかんやあって

あたしたちは池波家を後にしたのだった


…あれ?

あたしたち、何しに来たんだったっけ…?

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