第22話 戦慄!ラブラブスイート☆カップルジュース(オレンジ)

気恥ずかしいのを吹き飛ばしたあたしたちは

再びシュークリームをもぐもぐ食べはじめた

しばらくの間は、お互いに美味しいものを楽しんでいたが…


「あ、わたくし、アレやりたいですわ!」

麗ちゃんが、少し離れた席で恋人同士っぽい二人が飲んでる

『カップルが1つの飲み物をストローを使って二人で飲むやつ』を指さした

正式名称なんて言うんだろう…?


「ええええ?!」

「…ダメですの?」

「う、うん、いいけど…」

とりあえずメニューを確認してみる

『ラブラブスイート☆カップルジュース(オレンジ)』

よくこんな恥ずかしい名前のジュース頼んだね、あの二人?!


「お、お姉さん…これ……お願いします」

「え?」

注文を聞きに来てくれたお姉さんも、意外そうな顔してるじゃん!

これ頼む客がこんなに…って感じだったよ?!


「わ、わかりました。少々お待ちください…」

止めてくれればいいのに…

と、心の中で思いつつ待つこと5分


「来ちゃった…」

「これですわね♪」

麗ちゃんはとても嬉しそうだ

彼女は自分の側に向けられているストローを手に取り…


「じゃあ、わたくしが5秒を数えたら開始という事で…」

何かおかしなことを言い出した

5秒…?


「うんん??」

「あ…何か特別なルールでもございますの?」

こ、これは…


「え、えっと…何か勘違いしてると、思う」

「勘違い…?

 これって、ジュースを同時に飲み干し奪い合うゲームではないですの?」

「違うよ?!」

どういう間違え方?!

い、いや、現代人じゃないし、そういう間違いもありうるのか…


「これは恋人同士が、同じものを飲みあって、仲の良さを証明するやつだよ!」

「………え」

顔がプレミアムイチゴのように赤くなる麗ちゃん


「い、いやでも、現代にはゲームのように楽しめる食事がありましたし

 わたくしてっきりそういう方面のものかと…」

「…残念ながら……」

回転寿司を最初に見たからかな…


「ま、まあ、それぞれのコップに移して飲もうか…」

「お…お待ちください!」

…うん?


「それはもったいないですわ!このまま一緒に…飲みましょう!」

麗ちゃんが大胆に攻めてきた?!


「あ、あたしはいいけどさ…」

「わ、わたくしも…いいですわよ」

「……」

こうなるともう止められない


あたしたちはお互い、顔を真っ赤にしながら

ラブラブスイート☆カップルジュース(オレンジ)を飲み干したのだった



「あー!なんかすごい恥ずかしかった…」

「わたくしもですわ!おあいこですわ!」

「…」

「…」

妙な沈黙

これ以上恥ずかしさがこみあがる前に、あたしは話し始めた


「そ、そろそろお腹限界じゃない?」

「そ、そうですわね…」

「残りは、包んでもらおうか」

退席の準備を始めるあたしたち

…なんか周りの人たちに見られてる気がするので、早めに退散したい

気のせいだとは思うんだけどさぁ


「お姉さん、残り包んでもらえますか?」

「はーい」

「あ、後、お持ち帰りセットを二つお願いします」

「わかりましたー」

お姉さんは素知らぬ顔で、てきぱきと片付けを進めてくれる

流石プロだ、違うねぇ


「二つ…そんなに食べますの?食いしんぼさんですわね♪」

「明日、生徒会長と用務員さんに持ってくんだよ」

「あ」

そう話したところで

『今度またお詫びにお茶菓子持っていこう』と言っていた事を思い出す麗ちゃん


「…そうでしたわね」

「うん、まあ…それが終わったらまた遊びに来ようよ

 今度はあそこのボーリングとかいいんじゃない?」

窓の外に見える、屋上に白いピンの飾り物がしてある建物を指す


「ボーリング…って何ですの?」

「みんなで楽しめるスポーツだよ」

「へぇぇ…現代は色んなものがあって楽しいですわね」

「でしょー」

「あ、でも、わたくしの国も負けてませんわよ?

 今度貴族内に伝わる遊戯盤をご紹介しますわ!」

「お、いいね~」

すぐまた笑顔に戻る麗ちゃん

やっぱり麗ちゃんは笑ってる顔が一番似合うよ

そう思うあたしなのであった

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