第21話 激甘!シュークリーム屋さん
クククク…
単なる保険のつもりだったが、思いの他上手くいったな…
俺は、自らの幼い身体を見て、術が成功したのだと悟った
辺りを見回してみる
白いベッド、白いカーテン…ここは病室だな
俺はトラックに轢かれそうになり、ショックで倒れ、ここに運ばれた
おかげで前世に目覚めることができた
この術の最大の欠点は、命の危機を感じる前に死んでは
前世に目覚められないことだが…大丈夫だったな
しかし…やはり若い身体はいい…
今なら、あの頃よりも大規模な魔法を行使できるだろう
まずは手始めに…
「大丈夫か尊士?!」
考えの途中で、病室に駆けつけてきた男
…この世界での俺の兄…が割り込んできた
「だ、だいじょうぶだよぉ…お兄ちゃん」
「トラックに轢かれそうになったって、お兄ちゃん気が気じゃなくて…」
…ちっ、なぜこの俺がこんな媚びた声など出さねばならん…
しかし、準備が整うまでは、家族として過ごす方が楽だ
ここは我慢するか
「でも、お兄ちゃん生徒会長でしょ?今日もお仕事いっぱいだったんじゃ…」
「バカ…家族の方が大事に決まってるだろ」
そう言って、俺の頭を撫でる兄
甘ちゃんめ…せいぜい利用させてもらうぞ
兄に撫でられ、眠気が出てきた俺は
これからの復讐劇に、胸を躍らせながら目を閉じた
「いい匂いがしますわ~
さすがわたくしが目をつけていただけの事はありますわ」
あたしと麗ちゃんは、例の駅前で評判のシュークリーム屋さんにやってきたのだった
あたしも目をつけてたんだけど…そこは言わないでおこう
「今日は奢ってくださるんでしたわよね、ねっ」
令嬢パワー0%の素敵な笑顔で催促してくる麗ちゃん
「お腹いっぱい食べるといいよー」
「やったー!ですわ」
お店のお姉さんが『姉妹かな?』って感じでニコニコしながらこっち見てくる
「ご注文をどうぞー」
「レアチョコにプレミアムいちごに抹茶に…
クッキーシューにコルネ型も欲しいですわ!」
「だ、大丈夫?一気にそんなに…」
「へっちゃらですわ!」
いかん、美味しそうなシュークリームのせいで、完全に子供に戻ってらっしゃる
「余った分はこちらでお包みして、お持ち帰りもできますので
お好きなだけ注文いただいてかまいませんよー」
お姉さんっっっ!
いやまあ、お店の人としてはそう言うだろうけどねぇ!
「じゃあ、ここからここまで全部くださいですわ!」
ええええええええ?!
絶対食べきれないと思うけどなぁ…
そして、席で待つこと10分くらい
「来ましたわー!」
さっきとは別のお姉さんが、沢山のシュークリームをテーブルに並べてくれる
茶色い岩から出てくる煙が香ばしく、なんとも食欲をそそる
まずは二人一緒に、プレミアムイチゴから…
「ん…プレミアムイチゴ美味しいね!」
ただ甘いだけじゃなく、イチゴの酸っぱさもありながら美味しい
これはプロの技だ
「お口の中でイチゴがポポンがポンしてますわー」
「…うん?」
何か変な感じだが、次のシューに向かう
「クッキーシューもいいね~
この外がパリっとしてるのに中がしっとりしてるのが…」
「これぞまさにパリニュワなお味ですわね~」
「…んん?」
麗ちゃん?
「ほろ苦さと甘さのハーモニー、やはり抹茶は日本伝統の味」
「ニガニガスイートキュンキュン♪といったところですわね」
「んんん?!」
狙ってるね!これ明らかに面白コメント狙ってるね!
「あの…テレビのスイーツ特集とか見たのかな?」
「見ましたわー。リアクション芸、楽しいですわよね~」
芸能人が美味しい物食べてリアクションするTV番組
最近ちょっと飽きてきたんだけど、麗ちゃんはまだまだお好きのようだ
「あ、口元にクリームついてるじゃん」
もりもり食べてるせいで、そこまで気が回ってないようだ
ホント子供返りしてるな…
あたしは麗ちゃんのほっぺの抹茶クリームを指で取り
ぱくっ
自分の口に入れた
ん~…美味しい~生クリーム成分が補充されていく~
「ほぇ…」
麗ちゃんは、あたしがクリームを口に入れる様子を、ぼうっと見つめていたが
「あ、え…み、美遊様?!」
と、急に驚きだした
「どしたの?」
「あ、え、えとあの…そ、そんな恥ずかしいことを…」
恥ずかしい?
…あ、いや、ちょっと恥ずかしいことしたかもしれない
なんか子供のようにはしゃぐ麗ちゃん見てると
そんな考えすっ飛ぶんだよね
「い、いえ、わたくしの方が恥ずかしいでしたわね…
夢中になって食べ漁るなどと…」
れいちゃん は しょうきに もどった!
「い、いや、いいんだけど…
その、急に大人しくなられると、こっちもなんか恥ずかしくなっちゃって…」
「そ、そうですわね…今日はもう気にせず楽しみましょうですわ!」
「お-!」
あたしたちは、気恥ずかしさをノリで吹っ飛ばそうと決めたのだった
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