第17話 保存!少女の心とえっちな画像

何度目かの放課後勉強会

そろそろ授業にも追いついてきたので、やることも少なくなってきたけど…


「美遊様ーっ、スマホお教え頂きたいですわー」

「おお、すっかり忘れてたけど、そんな約束してたね」

現代という名の、別の科目があった


「…おや?その手にあるもの…スマホ新しく買ってもらったの?」

麗ちゃんの手には一台のスマホが握られていた

アンドロの…たぶん、4万円くらいのやつ


「いえ、違いますわ。これは元々わたくしが持っていたものですわ…たぶん」

「え、どゆこと?」

持ってるのに使い方がわからない、とは…?


「わたくし、トラックに轢かれそうになって、前世の記憶を思い出した…

 と申しましたわよね?」

「うんうん」

「その際に、どうやら逆に忘れてしまった現代の記憶があるらしくて…」

そんなことが…

ハードディスクの上書きみたいに、記憶が一部上書きされちゃったのかな


「どういう基準で何を忘れてるのかは、さっぱりわからないのですが」

「回転寿司とかスマホがわからなかったのは、そういう…」

知識偏ってるなぁ…とは思ってたけど…


「まあ、ともかくスマホを…と思ったけど、これ充電切れてるな…」

長い事動かしてなかったんだろうから、当然かな


「お、あたしのモバイルバッテリーでも充電できるじゃん

 じゃあこれで充電しなおして…」

「???」

麗ちゃんは笑顔で?をいっぱい浮かべている


「…後で説明するからね」

とりあえず、充電できたところで電源を入れる


「…パスワード覚えてる?4桁の数字なんだけど…」

「うーん…」

「まあ、覚えてないかぁ」

「パスワード…金庫の番号、みたいなものですわよね」

心当たりがあったのか、何かを思い出そうとしている麗ちゃん


「1048(ですわ)…ですわ!」

語呂合わせ?!


「前世ではよく暗号に使って遊んでおりましたわ!」

プリサガにも語呂合わせの文化あるのか…

今更だけど、プリサガ世界はなぜ日本語なのだろう…


「それは…この世界でも使って……」

ともかくにも、数字を入力する


「…たねぇ!」

一発でビンゴした!

そういう個人の癖みたいなところは、転生し、記憶を失っても変わらないのかな

…なんだか少し安心した


そして…


「美遊様!画面の中に、なんか小っちゃい絵がいっぱい並んでますわ!かわいい!」

「小さい絵をこう、ちょんちょん、と押すとその絵に合わせた機能が使えるんじゃん」

「美遊様!やってみたら、小さな絵が別の小さな絵に吸い込まれて合体しましたわ!?」

「あー、それどこかで押しっぱなしになってて、アイコン移動させちゃったんだな…」

「わ、わたくしのせいで、スマホ壊れてしまったのです…?」

「だ、大丈夫!すぐに戻せるから!」

「美遊様!何もしてないのに壊れましたわ!?画面が真っ暗に!」

「待機モードに入っただけだから!心配しないで!」

わちゃわちゃしながらスマホをいじる

こう、おっかなびっくりやってる時が一番楽しい気がする


「…む、難しいですのね…スマホ」

「なれると便利なんだけどね…」

初めてだと難しいよねぇ…


「ちょっと中身、確認させてもらっていいかな?」

「いいですわよー。わたくしちょっと休憩しますわ」

麗ちゃんは、佐藤さんからもらった飴玉をなめながら

窓際に風に当たりに行った


「SNSはやってない…か」

思い出すきっかけになるかも、と思ったんだけど


「写真とか保存してあるかな…?」

と、ギャラリーを覗こうとしたら…


「!」

え、エッチな画像がいっぱい…?!

かろうじて乳首や股間は見えてないけど

扇情的でえっちなイラストがいっぱい保存されていた


「どうしようかこれ…」

法律上は、ギリセーフな気はするけど

教育上はちょっとよろしくないのでは…?

いやでも、本人が保存してたってことは、つまりそういうの好きだって事だし

それをあたしが勝手に消してしまうのは…


「…どうしましたの?美遊様」

「わああああ?!」

いつの間にか背後に戻ってきた麗ちゃんに、見られていた


「え、ど、どうしてそんなえっちな絵が…?!」

それはあたしのセリフだよ?!


「美遊様、さてはえっちな絵をいっぱい仕込んで

 わたくしをいやらしい娘に教育しようと…?!」

どこからその発想になったの…?!


「ち、違うよ!元から入ってたんだよ!」

仕方ないので、真実をありのままに伝える


「え、じゃあ、わたくしがそんないやらしい絵を、いっぱい貯めこんでいたと…?!」

「う、うん……」

「ふええええええええええ?!え、いや、そんな…え?!」

自分の性癖に驚く麗ちゃん


「ほ、ほら、よく見てよ。なんとなく好みの絵ばっかりじゃない?」

「い、言われてみると確かに…」

納得しちゃったよ!

麗ちゃんはこういうのが好みか…覚えておこう


「じゃ、じゃあ、ホントにわたくしが…」

いつにも増して麗ちゃんの顔が赤くなっていく


「ほ、ほあああああああああああああああああああああああ!」

真っ赤な顔を両手で隠して、床を転げまわる麗ちゃん

これひょっとして、恥ずかしい記憶だから消えてたんじゃなかろうか…


「こ、このようなものー!」

そして、自分の醜態の証拠であるスマホをひっつかみ

窓から投げ捨てようとする


「だ、ダメ!それ4万円するやつだよ!」

「え?」

値段を聞いて、投げ捨てようとした手が止まり、スマホは床に落ち…


「お、おっと、危ない!」

…る寸前で、あたしがキャッチした


「あ、ありがとうございますわ…」

あぶなかった…

一時の恥で、4万円を投げ捨てることはあるまいて


「そのようにお高いものだったとは…

 ごごティーがいっぱい買えてしまいますわ」

「令嬢がごごティー換算するとは…」

「おいしいですわよ!?」

「おいしいけどね!」

まあ、ごごティーはおいしいから、しょうがないか


「このえっちな絵は残しておくので

 スマホを色々いじって、頑張ってたどり着いてください」

「え、ええ……」

「えっちという目的があれば、上達は格段に早くなるから」

「そ、そういうものなのです…?」

そういうものなのです


「わ、わかりましたわ…美遊様がそうおっしゃるなら……」

仕方ないと言いつつ、スマホを受け取る麗ちゃん


こうしてあたしは、一人の少女のえっちな画像と性癖を守ったのだった

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