第16話 騒乱!悪役令嬢と奇跡のクラス

あたしは昔、病弱だった

お医者さんも原因がわからない病気

結局それが治った…と思われる今でも、結局原因は何だったのか、わかっていない

よく咳き込み、熱を出し、特に寒いときは家の外になんて出られなかった


ただ、身体は辛くても、心はそこまで辛くなかった

そう…あたしにはゲームがあった

お隣のオタクくんが、引っ越すときに色々なゲーム、ハードをくれたのだ

あたしは夢中になって、それらのゲームをやりこんでいった

ゲームをやっている時は、身体の辛さも、痛みも、忘れることができた


そうやってあたしは、オタクくんからもらったゲームを一つ一つ、攻略していき…

半年が過ぎた頃には、もうそれらすべてをクリアしていた

…ただ一つを除いて


プリンセス・ユグドラシルサーガ


オタクくんをもってしても、クリアできなかったという、曰くつきのゲーム

これだけは最後に残しておいた

ゲームをやりこみ、成長して、オタクくんが登れなかった山を越えるんだ、と


そして、ついにその時は来た

あたしは奇妙な興奮を覚えながら、ハードにプリサガを挿入し、電源を……



「美遊様……美遊様…っ」

「んにゃ…?」

悪役令嬢がお隣に…

プリサガにこんなイベントあったっけ…?


「当てられてますわよ…」

「…当ててんのよ?」

「当ててんだぞ、夢渡」

だんだんとはっきりしてくる意識

麗ちゃんにつつかれていて、今は授業中で、そして、先生があたしの名前を呼んで…


「ほ、ほあー?!す、すみません!」

完全に寝てたー!


「えへへ…え、えっと…な、何でございましょう…?」

麗ちゃんもやってた、てへぺろのポーズで誤魔化そうとする


「0よりも小さい数を負の数、0よりも大きい数を正の数と言うが…」

スルーされてしまった

まあ、怒られなかっただけセーフ


「正の整数の事を、別名で、何と呼ぶんだったかな?」

んー…なんだったっけ…?寝起きで頭が回らない…

スマホで調べたい…


「…忘れました!」

「正直でよろしい。宿題追加で勘弁しよう」

この数学の先生は、答えがわからないのに粘ると余計に怒るタイプ

なので素直に言ってしまった方がいい!

これぞ学園生活の知恵なのですよ


「では、隣の…麗。何と言うか覚えているか?」

麗ちゃんがあたしの代わりに当てられてしまう

が、がんばれ…!

たしか、ちょっと前に放課後勉強でやった気がするぞ!

あたしはもう忘れたけど…!


「えっと…し、自然数…ですわよね?」

「おおーっ」

…やった!

そういやそうだった!自然数!


「もう授業にもついてこれるようになったわね!」

「えらいぞ麗ちゃん!」

「ご褒美に飴ちゃんあげるわ」

麗ちゃんの前に座ってる佐藤さんが、飴玉を渡そうとしている

あの子、何かあるとすぐ飴玉渡してくるんだよなぁ


「こらそこ!教師の前で堂々とおやつを渡さない!」

「ああー!すんませんすんません!つい関西の頃の癖が」

関西人でもそんなほいほい飴玉くれないと思う


「ふふ、立派に成長したな…ボクも鼻が高いよ」

「何でお前そんな偉そうなの」

「麗ちゃんファンクラブ会員ナンバー1の俺も嬉しいよ」

「あ、じゃあ、あたし幻のファンクラブ会員ナンバーゼロで!」

「え、ちょっと、いきなり乗っ取りに来るのやめてくれる?!」

「拙者はダークファンクラブ会員マイナスナンバー1で」

「闇の勢力もやってきたぞおい?!」

「お待ちなさい。まずはこのマネージャー美遊を通してからですねぇ…」

「エアメガネくいくいはやめろ!」

こう、なぜか突発的にテンションがおかしくなるのがうちのクラスだ


「あ、あはは…」

褒められて嬉しいんだけど、授業に追いつけたのは

スキルポイントを使ったおかげでもあるので

微妙にバツが悪そうな顔をする麗ちゃん


「つか、ファンクラブとか会員がどうとか…ノリが昭和だなお前たち?!」

先生がツッコミ役に回った

頑張れ先生!こうなってしまった我々を止めれるのは先生だけだ!


「どこで覚えたんだそんなの」

「「「動画サイトでー」」」

「あー、最近の子はそういうので覚えるのか…」

ジェネレーションギャップぅ


「先生、最近の子とか言いだすともう年ですよ」

「まだ30歳行ってないぞ!」

彫りが深い顔だから、38歳くらいと思ってた

先生ごめんよ

…いや待って、30歳行ってないなら、先生、平成生まれじゃない…?

昭和がどうとか言えないんじゃない?

サバ読んでない?


「あー、いや…まあいい、このままだと話が終わらん。続きやるぞー」

「はーい」

「このクラスだけ、毎度毎度、騒ぎすぎだと思うんだよなぁ…」

まあ、おかしいよね

あたしも奇跡のクラスだと思う

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