第8話 対決!現代に転生した悪役令嬢VSオタクに優しい黒ギャル

「あたし、実はあなたのこと、よく知ってるんだ

 生徒会長にかけた魔法は、禁断の催眠魔法ってことも」

「ど、どこでそれを…?!」

「ねえ、取引しない?その催眠魔法をやめてくれるなら、あたしが知ってる情報を渡すよ」

まずは交渉…これで上手くいけば争わずに……


「なるほど、見た目のわりに只者ではなさそうですわね…」

「見た目のわりにってどういうことかな?!」

「……いいですわ、取引に応じましょう。こちらへいらしてくださる?」

…ダメか…!


「…ならまず、その手にしてる指輪を外して、こっちに投げてくれるかな?」

「…?!どこまで知って…!」

指輪は魔法の発動に必要なアイテムで、これを装備してないと魔法が使えない

装備を外せば、持続系魔法も解除される


「…問答無用ですわ!」

そうだよね…!催眠魔法なんて便利な代物があるんだから

疑問は捕まえてから喋らせればいいんだよね…!

わざわざあたしの土俵には乗ってくれないか…


「会長!用務員さん!そのピンク髪の女を捕まえなさい!」

カーテンに隠れていた生徒会長

掃除用具入れから出てきた用務員さんが

呼びかけに応じ動き出す

彼らは、一斉にあたしに向かって襲いかかり…


パチッ!


あたしは教室の電気を消した


「!」

カーテンと掃除用具入れに仲間を隠すため、わざわざ窓際に立ったんだろうけど

教室の入り口には照明のスイッチがある

今の麗ちゃん本人に体力はない

すぐ目は慣れるだろうけど、操られてる人間は動きが鈍い

まごついてるうちに本人を捕まえて、指輪を捨てる!

カバンから例のものを取り出して、できるだけ近づく…!


「そ、そうはさせませんわ!」

「用務員さんは教室の電気をつけなおしなさい!」

「会長はわたくしのそばに!」


パチッ


電気がつけなおされる


「くっ…」

判断が早い!

男性陣を迂回して移動したから、麗ちゃんのところまで、まだ半分ある!


「会長!用務員さん!もう一度、そのピンク髪の女を捕まえなさい!」

再び命令をしなおす麗ちゃん

しかし…


「なんですのそのウイッグ?!」

彼女はターゲットを『髪の毛の色で指示』する癖がある

頭がカラフルなゲームキャラならではの発想だ

だから暗くした時に、カバンから取り出した『金髪のウィッグ』をかぶった

素早く装備するために、体育帽に縫い付けてあるから

すごい不格好なんだけど、仕方ない


「…?」

命令がわからずに動きが止まる男性陣

実はウイッグからピンク髪が少し見えちゃってるんだけど、大丈夫のようだ

あたしは二人に認識されてない


「ええええ?!そ、そんな目標ずらしが…?!」

ゲームだと、例のドラゴン変身をすると

催眠魔法されたキャラのタゲから外れるんだよね…


「じゃ、じゃあ金髪の女を捕まえなさい!」

…やった!


男性陣が再び動き出す

会長と用務員さんは、自分の近くにいる金髪の女をターゲッティングした

用務員さんは当然、近くにいるあたしだが…


「…あ、し、しまっ…!」

会長は、『近くにいる金髪の女』来知麗を捕まえにかかった


「この…やめっ…」

今しかない!

会長に両手を抑えられてる麗ちゃんから、指輪を抜き取る!

彼女の左手に手を伸ばし…


かぶっ!


「いったああああああああ?!」

か、かみつかれた!


「悪の令嬢どこいったあああああ?!」

優雅さの欠片もない攻撃に、思わず叫ぶ


「うっさいですわ!」

彼女も、それどころじゃないという感じで叫ぶ


「会長に用務員さん!そこの小麦肌の女を…」

「ああああああああああああああああ!!」

「ひっ」

なり振り構わない咆哮。

ここは、彼女の命令より大きな声で、かき消すしかない!


「あたしは!知ってる!」

再び、彼女の細い指に手を伸ばす


「くっ…そんな大声で、ひるむとでも…!」

彼女は、負けじと命令の声をあげようとする


「レイシィが!仇討のために!悪女を!演じていたのを!」

彼女のあげようとした声が、一瞬止まる


「…そ、そこの小麦肌の!」

「本当は!罪悪感に!苛まれている!ことも!」

あたしの指が、彼女の指輪にかかる


「女を…」

「だから!あたしが!」

弱弱しくなっていく彼女と反対に、あたしはしっかりと彼女の指輪を掴み


「捕…まえ…」

「止める!」

手を、勢いよく振りぬく


魔を秘めた輝きは、持ち主の手を離れ、空を舞い、誰かの机の上にからん、と落ちた



「あ、ああ……」

制御を失った生徒会長と、あと一歩まで近づいていた用務員さんが崩れ落ちる

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