第7話 変身!魔法少女悪役令嬢!
どうやってちびっこ悪役令嬢をわからせるか、考えること1時間
…ぷるるるる!ぷるるるる!
スマホに誰かから電話がかかってきた
「はい…もしもし?」
『み…美遊様、お話を…』
誰かからあたしの番号を聞いたのだろう
麗ちゃんの方から接触してきた
…スマホ知らないって言ってたのにな…家の電話かな…?
「お、おかしいと思ったんだよ!こんな小学生くらいの子が転校してくるなんて」
まだ状況が全部飲み込めてる訳じゃないけど…
慌ててる演技はしとこう
「闇の組織の闇のなんとかが動いてたりするやつだよね?!」
…自分で言ってて何だけど、具体性ゼロだね!
「やっぱり警察に行こう…警官の人に信じてもらえるかわからないけど」
『お、お待ちくださいですわ!』
やっぱり口封じしときたいのだろう
警察というと、とたんに慌てだした
これで駆け引きして、うまいこと情報を引き出せれば…!
『わ、わたくしは決して会長様に、悪いことをしようとしていた訳ではなく…』
「じゃ、じゃあ何なの!?」
『…悪いエナジーに取りつかれていたのを、祓おうとしただけなのですわ!』
「………え?」
『じ、実はわたくし、魔法の国ユグドラシルから来た魔法少女でして…』
ど…
どういう言い訳なのそれ?!
『人知れず、人間界にたまった悪いエナジーを消滅させるという、使命があるのですわ…』
「えー…」
その設定、最近、朝の子供アニメ番組で見たことあるんですけど!?
『お疑いなのは無理からぬこと…』
信じろという方が無茶だよ…
『仕方ありませんわ。特別に魔法少女への変身シーンをお見せしますわ』
「え…!ま、マジでっ?!」
できるの?!
い、いや、プリサガにそんなスキルは…
…ドラゴンに変身するスキルはあったなぁ
『一瞬裸になるので、ものすごく恥ずかしいのですが…他ならぬ美遊様なら…』
な、なるほど…!
自分の裸で釣るつもりだこの子!
さては、翔ちゃんと話してた『幼女とお風呂に入りたい』のくだりを
寝ぼけながら聞いてたな?!
これは悪い令嬢ですわ…!
『今夜、いつもの教室でお待ちしてますわ。そこでお見せします』
「ど、動画撮って送ってくれない…?」
『…動画?なんですのそれ?』
「ですよねー!魔法の国はスマホ無さそうだもんね…!」
『今夜いらしていただけないのでしたら…仕方ありませんわ。また転校しますわ』
「…」
これ行ったら、間違いなく口封じされちゃうやつですよね…
『それでは、月明かりの校舎で…お待ちしていますわ』
その言葉を最後に、電話は切られた
…どうする?
罠なのは違いないけど…逆にわからせチャンスでもある
向こうにとっては、あたしは何も知らない少女
誘い出せた時点で勝ったと思うだろう
しかし、あたしはプリサガのおかげで、彼女の戦い方を知っている
足元をすくって勝つのも、不可能ではない
勝って彼女を止める…!
貧弱クソザコ現代人で、チートスキル持ちファンタジーキャラに、勝ってみせる!
夜の校舎を、警戒しながら一歩一歩、歩く
たぶん大丈夫…彼女のスキル構成なら、廊下での不意打ちは難しいはず
でも、できるだけ廊下の中央を…
背中のリュックは、すぐ取り出せるようにチャックを半開きにしている
歩いてるうちに落とさないかが心配だ
通いなれた1-3の教室、そこから光が漏れている
周りに人がいないことを確認して、ゆっくりと扉を開く
「………」
教室の窓際に、その少女は立っていた
月の光と、教室の明かり、二つを浴びてきらきらと輝いている
彼女はこちらを振り向くと、その口に指を当て
幼い身体に似つかわしくない、妖艶な微笑みを浮かべる
「ふふ…真夜中の教室で、二人きり…イケナイ事をしているようですわね」
「イケナイのは麗ちゃんの方じゃないかな?」
視線を麗ちゃんから少しだけ外して、机の下を見る
…!
ちょっとわかりにくいけど、誰かが机とカーテンを使って隠れてる
生徒会長か、それとも…用務員さんか見回りの先生を従わせたか…
恐らくだけど、麗ちゃんの側にある、掃除用具のロッカーにも隠れてる可能性は高い
近づいたら一斉号令であたしを捕まえる気だ
「あの時、生徒会長にイケナイ魔法かけてたでしょ」
「ええ、でも会長様の魔のエナジーを出すために仕方なく…」
「それ、嘘だよね?」
「……」
「魔法で影が出てくのじゃなく、逆に入ってたからね」
「…よく観察してますのね……ではなぜこちらにいらしたのです?」
目つきの険しくなる麗ちゃん
彼女には、そんな表情は似合わない…と今では思う
スマホや回転寿司で目を輝かせていた頃が、一番かわいかった
「あたしはただ、そんな魔法を使ってほしくないだけだよ…『レイシィ・ライチェス様』」
「!?」
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