第6話 『それは私がやることなんだよ』

目を覚ましたら、そこはオレンジが支配する世界だった

いや、まあ、夕方の保健室なんだけども

寝てしまってたかー…

おおおおおおお…今日も麗ちゃんとくんずほぐれつお楽しみする予定が…!

夜10時以降のゲームは禁止だね、うん

毎回守れないんだけどさぁ…


カーテンを静かに開けて、静かに保健室の中を観察する

保健の先生は…よし!いない!

今のうちに帰ってしまおう

前、同じようにベッドで寝かされて、すごい怒られたからなぁ

病人のためのベッドを占有するなー!って

あたしが悪いことは悪いんだけど、ベッドに運び込んだのは他の先生たちだよぉ…


…あ

カバンは誰かが持ってきてくれてるけど、お弁当箱が入ってない!

たぶん中身食べた後に机の中に放り込んでそのままだ…

仕方ない、取りに戻るか…


こそこそしながら、教室まで戻る

ドアから中の様子を確認し、誰もいないことがわかってから、自分の机に

いや、誰かに見つかっても問題は無いんだけど、なんか恥ずかしいし…


お弁当箱回収完了!

家への帰還ミッションを開始する!

ううん、今日は麗ちゃんに悪いことしたなぁ

スマホ教導ミッションとお勉強ミッションは失敗したし

お詫びに駅前の美味しいシュークリームをおごるから、一緒に食べに行かない?

と誘ってみるのはどうだろうか

うん、いい案だね!


…と、そんなことを思いながら階段を下る

その途中のことだった


「…?生徒会室から青い光が漏れてる…」

この夕暮れ時に、青く光るものなんて…


………

……

さては…ゲームやってるな…!

大方、P〇4かス〇ッチあたりを持ち込んで遊んでいる

オタクに優しい黒ギャルは、ゲームの嗅覚にも優れているのだ!

おやおや、生徒会室で、これはいけませんなぁ~

…現場を押さえて、あたしも混ぜてもらおう!


生徒会室に静かに近づく

そっと扉を開こうとしてみるけど…やはり鍵がかかっている

だがしかし!その程度で隠そうとは考えが甘い!

こうやって地窓から覗けば丸見えだよ…!

…何で、学校ってこんな謎の窓があるんだろうね…?

まあ、それはともかく中を覗こう


『邪悪なる力よ、漆黒の闇よ!』

ほらほら~、やっぱりゲームやって…


『そは心の深淵を満たすもの!』

…あれ?これ、麗ちゃんの声……?


(…!?)


信じられない光景だった


床の上でぐったりしている、イケメン生徒会長

その上に、ゲームで見たような、青い魔法陣が浮かんでいる

青い光を発していたのはこれだ

さらにその魔法陣に上から手をかざし、呪文を唱えているのは……麗ちゃん!


『影に潜め!魔の囁き(デビルズウィスパー)!』


魔法陣から黒い影のような靄が出て、イケメンに吸い込まれて…


や、やばい…!

何がなんだかわからないけど、やばいことになってるっぽい!

あ、そ、そうだ…とりあえずスマホに録画しておこう…!

後でどういう状況なのか確認して…!


ガン!


しまった…!頭ぶつけた…!


「だ、誰で………美遊様?!」

やばい…!ひとまず逃げよう……!


「お待ちなさい!」

さすがに、この状況じゃ待てないよ…!

あたしは全力でその場を離れ、学校を出た




な、なんだったのあれ…?!

魔法陣…魔法陣だよね…

でもなんか見覚えあるような…あの呪文も……


……

………

プリサガだ!

プリサガで魔法撃つときに出てくるやつ…!

そして、あの呪文もゲームの悪役令嬢が使ってたやつだ……!

麗ちゃんは彼女と同一人物てこと…?!


で、でもイベントCGでは、あんな小さい子じゃなかった…

ひょっとして、マップ移動する時のちびキャラ状態?

わかんない…わかんないけど、生徒会長に何かしようとしてた…!


……いや、何かじゃない…あたしは知ってる…

あれは悪役令嬢の使う、禁断の催眠魔法だ…!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


〇悪役令嬢レイシィ・ライチェス

プリンセス・ユグドラシルサーガにおける主人公のライバルキャラである

父の仇をとるために、悪に染まり、悪を討つ覚悟をした人物だ

禁断の催眠魔法を使い、戦闘では配下を操って戦う

主人公に一度打ちのめされてからは

悪事は控え、主人公と協力して巨悪を滅ぼそうとする

しかし、道半ばにして、自らの領民を守って死亡

主人公に後を託した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


主人公に負けた後の彼女なら、たぶんそんなに問題はない

でも、悪に染まっていた時代の彼女だったら…?

イケメン生徒会長に洗脳魔法かけてたし、彼女がそうである可能性は高い

放っておけば、学校単位で催眠魔法を使い、悪の軍団を作り上げてしまうことも…


それはダメだ…!

なんとかして彼女を止めなければいけない…

誰かに相談して協力を………信じてもらえる気が全然しない…!

プリサガがドラ〇エくらい有名だったらなぁ…少なくとも説明はしやすいのに…!

シナリオはいいんだよシナリオは…

バグが多すぎるせいでクソゲー認定されてるけどさぁ!


なら、自分が戦って倒すしかない…?

主人公もそうやって彼女を説得した

彼女は、実力を見せつけられた後なら、素直に言う事を聞くのだ

けれど…


モンスターを催眠した仲間に惨殺させ

返り血を浴びてほほ笑む悪役令嬢の一枚絵を思い出す


……

む、無理無理無理!

ゲームならいざ知らず、化け物と戦ってきた人を相手だなんて……

いっそ、何が起こったかわかんなーい的な顔をして、誤魔化す…?



『いや、それは違うな。プリンセスよ』



……

怖い

現実にはリセットはない

失敗は許されない世界

でも……


「…私があのセリフを言う番が来た…って、ことなのかな」

私にしか、できないのなら

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