第5話 完徹!ゲーミング黒ギャル!

今日はよき日であった、うん。

かわいい転校生とお近づきになれたし

…あ、そうだ。折角だしプリサガちょっとやろっかな

えーと…メモカBを用意して、Aのデータを全部移して…

Bは抜いて…ソフト入れて、オープニングは飛ばして…

画面にでっかく映る『プリンセス・ユグドラシルサーガ』の文字


「んで…コンティニュー…と…」

データのロードに成功しましたの文字


「よし!今日は一発で読み込んでくれたじゃん」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


禍々しい姿の、黒きドラゴンの前に、プリンセスは立っていた


「今度の生贄はお前か?」

「ええ、そうです…」

このドラゴンは、王の娘を生贄に要求する

代わりに、百年の間は、おまえたちを襲わないでおいてやろう…と

しかし、王は自分の娘かわいさに、庶民から養子をとる決断をした

そいつを生贄に捧げればよい…と


そして選ばれた主人公

一年の間、プリンセスとして、学び、育ち、仲間ができた

食うにも困っていた自分には、過ぎた思い出だった…と、彼女は思っている


「私では不服でしょうか…?」

もし、王の血縁こそが必要な要素であったなら、結局、彼女は役に立てない


「強き魂の持ち主よ。そなたは生贄に相応しい」

「…よかった」

宮廷に巣食う悪の魔法使いを、仲間と共に倒した

彼にそそのかされていた王は正気に戻り、彼女に泣いて謝った

…しかし、王の子供は、わずか五歳の娘一人だけ

このまま王の本当の娘が生贄になれば、王家は滅んでしまう

生贄になるのは、やはり…


「私にしかできないなら、それは私がやることなんだよ」

プリンセスという、重い立場を背負わされた彼女は

お決まりのように、このセリフを口にする


(これが、私の最後の役目…

 みんなのため…怖くなんてない…)


「…いや、それは違うな。プリンセスよ」

「…?!」

そこに駆けつける、かつて主人公が救った仲間たち


「「「私達にしかできないなら、それは私達がやることだ!」」」

皆、それぞれに武器を持ち、構える。

邪悪なる竜を倒し、自分達の姫を救うために。


「…みんな!どうして…!?」

「プリンセス一人が生贄になって生き永らえるなど、愚の極み」

「もう終わりにしよう」

「あいつを倒して帰ろう、みんなで過ごしたあの学び舎に…!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「……くぅ~~~~~~!」(バンバンバン)

あたしは興奮して変な声を上げながら、床をたたいた


もう何回やったかわからないクライマックス

悪の大ボスを倒すために一致団結するこのシーンが、あたしはとてつもなく好きで

結構昔のゲームなんだけど、このゲームをまたやるために、ハードが捨てられない


…あの子に似てる悪役令嬢は、このクライマックスには参加していない

改心した彼女は、少し手前のシーンで、領民を守るために命を落としているのだ

令嬢がここに参加してくれたら最高なのにな…

お話的には、あそこでライバルの悪役令嬢が死ぬから盛り上がるんだけどさ…!


悪役令嬢が死ぬ寸前のところから、新しいセーブデータ作ろうかな…?

あそこも名シーンだしなぁ…やるか!


そうして、夜はふけていく

お肌には大変よろしくないけど…

ま、まあ、まだ若いし大丈夫…だといいな…!




次の日


「あふ……」

興奮しすぎて一睡もできなかった…

夜中にゲームやるもんじゃないね、うん


「おや、だらしないお顔してますわよ?

 これですの?これが欲しいんですの?」

1000円札で頬をぺちぺちやってくる麗ちゃん


「いや、別に欲しくないけど…

 徹夜しちゃって…眠くてぇ…」

「ふふふ、やはり庶民ですわね。自己管理がなってませんわ!

 その点、わたくしは昨晩もぐっすりと…」

「おやふみぃ」

「だ、だから…すぐ抱きつくのやめ…っ…わたくしは抱き枕では…」

麗ちゃん抱き枕…いいなぁ…誰か作ってくれないかな…


その後、お昼まではなんとか粘ってみるものの…


「すやぁ」

「完全に寝てますわねこれ」

「も、もっと食べたい…」

「なかなかに貪欲な寝言ですわね?!」

麗ちゃんがなんか言ってるけど、もう意識がはっきりしなくて、思考できない…


「うーん、授業の邪魔だな…」

「誰かちょっと肩貸してくれ。保健室に寝かしてこよう」

「あ、男子はダメだぞ」

「えー」

「えーじゃない!」

「でも、男子が近寄りたい理由もわかるかなー」

「美遊ちゃんってなんかいい匂いするのよね。香水使ってるのかな?」

「ここはわたくしがやって、美遊様に恩を売りつけますわ!」

「いや、肩届かないでしょ」

「むー」

「麗ちゃんは私が運ぶわ!」

「いや、俺がお姫様だっこで!」

「わたくしは運ばなくていいですわよ?!」


………

……

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