第4話 撮影!居眠り令嬢!

と、まあ、この調子ですべてを見て回っていたら、辺りはすっかり暗くなっていた

れーちゃんは、背中ですーすーと寝息を立てている

…めっちゃかわいい

持って帰ったらダメかなぁ…

なかなか起きてくれなくて、仕方ないから家に持ち帰りました、って言えば

夕飯ぐらいまでは一緒できそうな気がするぞ

家から学校まで近いし

ほんでそこからお泊りなんてことも…


「こーらっ」

「はひゃっ?!ご、ごめんなさい!」

妄想中に声をかけられ、驚いて振り返ると

そこには黒髪ポニテ体操着姿の少女がいた


「あ、よかった…翔ちゃんだ」

彼女の名前は一刀翔子

お隣に住んでる文武両道の…いわゆるできる幼馴染ってやつ

残念ながらノートとかは見せてもらえない


「よかった…じゃないでしょ。幼女をお持ち帰りとかリアルでは犯罪よ」

「ち、違うよ?!いやちょっと考えたけども?!」

「考えたんじゃない…」

めっちゃ疑われるあたし

昔、幼女が12人出てきて『お姉ちゃん♪』と呼んでくれるゲームがあってさ

それを、ニタニタしながらやってたんだけど、彼女にその現場見られたせいかな…?


「こ、この子は同じクラスの転校生でありまして

 学校案内してるうちに眠っちゃったといいますか」

「転校生?!い、いやウソでしょ?」

やっぱりそう思いますか…あたしもそう思うよ


「ホントだってあたしはやってないし無実だし…

 幼女をお風呂で洗ってあげたいとか思ったことなんて一度も無いし!」

「……」

黙ってスマホを持って操作を始める翔ちゃん


「ああ待って待って警察に電話しないで。大丈夫落ち着いて証拠はないから!

 君は推理小説家になれるよって言われちゃうから待ってー!」


パシャ


「え?」

今のは…写真?!

幼女誘拐の証拠写真を取られてしまった?!


「とりあえず、これで我慢しときなさい」

…と、思ったら、彼女が見せてきた写真は麗ちゃんの寝顔だった


「おおお、麗ちゃんの寝顔かわいい」

いやまあ、すぐ横で寝てるんですけども…写真もいいなぁ


「むにゃ…うるさいですわ…」

「あ、起きちゃった?ごめんね」

「はっ?!寝てしまってたのですわ!」

う、連れ帰る野望が…


「美遊様、ありがとうございましたわ。ここからは自分で歩きますわ」

「あっ…」

麗ちゃんのぬくもりが無くなって少し寂しい


「あ、えっと…こちらの方はどなたで?」

「一刀翔子ちゃん。あたしの幼馴染だよ」

「翔子です、よろしくお願いします」

「頭を撫でてこないですわ…!なんという礼儀正しいお方…」

「え、そこ基準なの…?」

「会う人みんなに撫でられてたら、こうもなりますわ…」

ごめんよー…でも麗ちゃんも、かわいいという罪があると思う


「わたくしの名は来知麗、美遊様のクラスメイトで転校生ですわ」

「あ、ホントだったんだ…」

「だから言ったじゃんー!麗ちゃんは合法だよ!」

「合法て」

そのうち危険麗ちゃんと呼ばれるようになる、かも


「あ、ちょっと寝てる間に一枚撮っちゃったんだけど、いいかな?」

「えっ、それくれるんじゃ…」

「本人の許可が出ればね」

あ、うん、まあ確かにそれが筋なんだけども

でも、本人に言ったら絶対くれないんじゃ…


「おおお、なんですのそれ?!」

…え?


「あ、スマホご存じじゃない…?」

「なんかみなさん変な板を触ってるなーと思いましたが」

スマホを知らないとは…

ご家庭がそういう教育方針なんだろうか

ある意味お嬢様っぽい、かも…?


「面白そうなアイテムですわね!解説して欲しいですわ!」

「またキラキラしてる…」

「じゃあ、美遊が解説してくれると思うから、写真この子にあげちゃっていいかな?」

「OKですわ!というか、写真撮れるのですねそれ!」

許可出ちゃったよ!


「といっても…今日は遅いし、また明日かな?」

夕暮れがもう違う色になりかけてる


「えー…」

「じゃあ、せっかくだしうちに泊まってかない?スマ〇ラあるよスマブ〇」

お泊りの野望を捨てないあたし


「やめなさい。転校初日なんだから、お母さん心配するでしょ?」

「あー、うん…確かにそうだね」

「ごめんね、この子、かわいい子見るとついはしゃいじゃうのよ」

「いえ、美遊様には優しく案内していただきましたわ。謝ることなどありませんわ」

いい子だ…

こんな子をあたしは、一緒にお風呂入りたい~とかなんとか言ってたのか…!

…入りたいなぁ…


「そうそう。オタクに優しい黒ギャルは、美少女にも優しいじゃん!」

「……」

ジト目で見てくる翔ちゃん

この決め台詞は、評判がイマイチよろしくない


「この子ねー、こんなこと言ってるけど、ホントは自分がオタ…」

「わー!」

「??」

あ、あぶないあぶない…麗ちゃんに勘違いさせるところだった…


「あ、え、えっと、疲れてない?送っていかなくて大丈夫?」

「大丈夫ですわ。家はそんなに離れていないので」

うーん…?

麗ちゃんのようなお嬢様が住むような大豪邸、近くにあったかなぁ…?


「そっか。じゃあ、また明日ね」

「ええ、また明日ですわー」

そう言って、今日は笑顔で別れる

夕焼けに赤く染まる彼女は、とてもかわいくて…綺麗だった

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