第2話 回転!お食事令嬢!

きーんこーんかーんこーん


「じゃあ、勉強しよっかー」

「お、おー…」

なんやかんやで放課後

あ、ちなみに麗ちゃん、全教科遅れてました…

本当に小学生なんじゃ…?


「やる気なさそうねー

 美遊なんてやめて、私の指導を受けない?」

と、言いつつ胸元をちらりと見せてくる、ちょっと大人っぽいクラスメイト


「だめー!麗ちゃんは渡さないじゃん!」

「あはは、冗談よ。美遊取られちゃったからくやしくて」

「むぅ」

「美遊様、顔赤いですわよ」

あたし、不意打ちにはちょっと弱い


「じゃあ、また明日ねー。しっかり勉強するのよ」

「はーい、お母さん」

「お母さんじゃないからね?!私、美遊ちゃんの同級生だからね?!」

クラスメイト達も次々帰っていく

これからは二人でお勉強の時間だ


「さて、まずは英語の教科書開いて…」

「…なんでわたくし、あなたのお膝に座らされていますの?!」

「つきっきりで勉強しなきゃ、すぐには追いつけないっしょ?」

「これ、そういうのとは違う気がしますわ?!」

「じゃあ、最初の4P目からやってこうか」

「人の話聞いてます?!」

あたしの膝の上でもじもじしてる麗ちゃん、いいわぁ…


「えと…そ、そうですわ!お勉強の前に、学校を案内して欲しいですわ!」

「お、確かにそっち先にした方がいいね」

「ふー…」

「じゃあ、いこっかー」

「肩車はいりませんわよ?!」

「むぅ、残念」

さすがに肩車は子供っぽすぎたかな

麗ちゃんを肩から椅子に戻す


「…じゃあ『お嬢様、お手をどうぞ』」

どっかのアニメで見た執事を真似して、麗ちゃんに手を差し出してみる


「そ……そーいうので、いいんですわよ」

麗ちゃんはあたしの手を取り、柔らかに微笑んだ




「…で、ここが食堂じゃん」

「お食事は重要ですわね!」

「わたくし、フルコースが食べれるくらいの豪華な食堂がいいですわ」

「んー、設備は豪華かもだけどね…」

大きなのれんをくぐり、入り口から中に入った

スープのいい香りと、お皿の動く音がする


「な…なんですの?!この謎の機械に囲まれたテーブルは?!」

驚く彼女の目の前には、ベルトコンベアで運ばれていく料理たちがあった


「あ、回転寿司知らない?外国住みだったとか?」

「え、えっと…まあ、そのようなものですわ」

いやまあ、これは知ってても驚くけどね


「回転寿司っていうのは、回転するベルトコンベアに料理を乗せて

 欲しいものが回ってきたらそれ取って食べるんだよ」

「ほほう…」

「ホントはお寿司しか乗せないんだけど

 校長が知り合いから、回転寿司の機械を安く買ってきて

 折角だから食堂に使おうという…」

そもそも、安いからという理由で買うもんじゃないと思うんだけど…


「テーブルマナーの欠片もない食事ですわね…」

「…お嬢様にはお気に召さないかな…?」

優雅さの対極にある食事だよねぇ…


「いえ!めっちゃ楽しそうですわね!」

「おっと、これは意外な反応」

「まさか動いて楽しませてくる料理があるなんて…世界は広いですわ…!」

「な、なるほど。当たり前にあって忘れてたけど、普通、料理は動かないよね」

改めて、回転寿司はすごい発明だと思う


「美遊様!ここに座ればいいんですの?」

「そうそう、そこから好きなお皿を取って…」


すかっ…すかっ


「届きませんわ?!」

あー、あたしも小さい頃やったなぁ…意外ととるの難しいんだよね


「欲しいのあるなら、取って渡そっか?」

「いえ、しばしお待ちを…!いずれ乗り越えねばならぬ試練…!

 必ず取ってお食事を成し遂げてみせますわ…!」

謎の気合入っちゃったー


「えい!…ええい…!こ…こにょお!……ほおおおおおおおおお!」

「お嬢様が出してはいけない声してる…」

…にしても、動きが雑というか…動くのに慣れてない感じがする…

令嬢ってそういうものなのかな?



それから10分後



「や、やりましたわ!ついにお皿獲得ですわ!」

おおおー…と、

いつの間にか集まって来たギャラリーが拍手をする


「皆様、ありがとうございますわ!

 皆様のご声援のおかげで、やりとげることができましたわ!」

いや、みんなには悪いけど、たぶん関係ないと思うよ


「もちろん、コーチのご指導のたまものでもありますわよ」

「いつの間にかコーチにされてる?!」

「このまま、目指すは世界選手権ですわ!」

「いや、なんでそんなテンション高いの?!」

あ、あるのかなぁ…?回転寿司お皿取り大会…


「とりあえず、あと10皿!今の感覚をものにしますわ!」

「ええええ?!」

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