現代に転生した悪役令嬢と、オタクに優しい黒ギャルが、クソゲースキルでおねロリ無双! ~小さな元悪役令嬢がむっつりかわいすぎて、ついついかまいたくなる件について~

青単西本

第1話 転校!ちびっこ令嬢!

―――それは、運命の再会だった


さらさらのブロンドヘア

青と白の、フリルとリボンのついた服

整っていながらも、まだ幼さのたっぷり残る顔

そして、10歳ほどに見える小さな身体


彼女を見たあたしは、電撃が走ったようなショックを受け、感動に打ち震えていた


…プ、プリサガの悪役令嬢だあああああ!


えっと、プリサガっていうのは、あたしがやりこんだ

『プリンセス・ユグドラシルサーガ』っていうゲームなんだけどね!

そのゲームのライバルキャラにそっくりなんだよこれが!

いやまあ、ゲームとは違って、ちょっと背丈は小さいけども

かえって小さな子が頑張ってコスプレしてる感じがしていい!

ふおおおおおお、まさかリアルでこのような奇跡に出会えるとは…!

運命という名のデスティニーだよおおおおおおおお!


「では、転校生さん。自己紹介をどうぞぉ」


担任の先生が、壇上にいる彼女に声をかける

そう、彼女はこのクラス、森木学園1-3の転校生

あたしの目は…いや、この教室の全ての目は

その転校生の少女に釘付けだった


彼女は、自らの小さな手を胸に当て

その胸を大きく張りながら、自己紹介を始めた


「頭脳明晰容姿端麗、この世のすべてはわたくしにひれ伏す!

 咲き誇る悪の華!その名は、来知 麗(らいち れい)!ですわ!」


そこまで一気に話すと、人差し指を口に添え、軽くウインクをする


「見惚れてしまっても、よろしくてよ?」


…い……いたああああああい!

自己紹介失敗ランキングで、かなりの上位を狙える痛紹介!

インパクト狙い過ぎだよもう~

…と、普通なら思うのだが……


「ふふふ…決まりましたわね!さすがわたくし!

 みなさんが呆けてしまう程の妖艶な美女…」

「「「かっ…かわいいいいいい!」」」

「えっ?」


クラスメイトたちには、小さな彼女の背伸びした紹介が

かわいい方面でクリティカルヒットしていた


「ね、ねえねえ、自分で考えたの?その紹介」

「綺麗な髪と瞳だけど、海外出身だったりする?」

「あー!美遊ずるい!私もなでなでしたいー!」

「ちょ、ちょっ…皆様、何をっ…」


押し寄せたクラスメイト達に、もみくちゃにされる転校生

あ、ちなみにあたしは、その中の

彼女を抱きしめてひたすら頭をなでなでしてるやつです

あたしは、夢渡美遊(ゆめわたり みゆ)って名前で

ピンク髪小麦肌、ちょっと崩した着こなしの

いわゆる『オタクに優しい黒ギャル』だよ


「かわいい~…お持ち帰りしていいかな?」

「い、いえ、そういうのはちょっと…」

「制服着てないのは何で?」

「合うサイズが無かったので、特注をお願いしてるのですが…まだ到着してなくて…」

「こんなかわいい子が、まさかうちのクラスにやってくるなんてなぁ」

「飴ちゃん食べる?」

「あ、あのその…あうう……」


かわいいって言われ慣れてないのか、どんどん顔が赤くなっていく

もはや、最初の勢いはどこへやら、借りてきた猫のように大人しい

その態度が、ますます我々の劣情をそそるとは知らずに…


「も、もう!なんなんですの~?!」


転校生を愛でる会は、その後十数分もの間、続けられるのだった




そして、かわいがりすぎて彼女がぐったりしてきたところで

ようやく正気に返ったクラスメイト一同


「う、うう…は…辱められましたわ」

「…あー、うん。ごめんね」

どさくさに紛れて、もっと彼女のもちもち肌を堪能したかったんだけど、残念


「まあ、ここ中学の学舎だから、小学の学舎にお帰り」

ここ森木学園は小中高一貫校

なので、この子は小と中の校舎を間違えたんだろうなー、という皆の予想


「ち、違いますわよ?!わたくしは決して小4などではなく、立派な中学生ですわ!」

「へー…」

皆からの疑惑の目


「せんせー、ホントですか?」

「いやまあ、転入学通知書には、中学生と書いてあるのよねぇ…」

「マジで」

「マジよぉ」

担任の先生も不思議そうに首をかしげる


「まあ、授業受けてればすぐにわかるかな…」

「そうねー」


「…そういう事なら、そろそろ授業していいかな?」

教室の扉の前で、1限目の英語の先生が待っていた


「ああ!す、すみません。みんな転校生の子で盛り上がっちゃいまして…」

担任の先生が謝る

そういやこれ、朝のHRの時間だったよ!




「じゃあ、前の学校でどこまで教えてるか知りたいから

 いくつか質問に答えてくれるか?」

「りょ、りょうかいですわ!」

英語の先生による、教科書進行度チェック

これで麗ちゃんの実力がわかる…!


「Are you ( ) America.『あなたはアメリカの出身ですか?』

 ( )の中に何を入れたらいい?」

「何ですのそれ?呪文の詠唱ですの?」

「……」

「…じゃあ、This is a pen.を日本語で言ってくれるか?」

「あ、お待ちください。何か聞き覚えがありますわ…

 わかりましたわ!『炎の矢』の詠唱文ですわ!」

「はずれ」

「麗ちゃんー?!」

麗ちゃんなかなかのゲーム脳

…というか、英語やってないの…?


「え、ち、違いますの?!わたくし、何かやっちゃいました?!」

「残念だけど…」

「お、お慈悲を!きちんと勉強しますので、どうか降格だけは…!」

「うーん…居残り勉強が必要かな…」

頭を抱える先生

英語の『え』の字も知らなそうだもんなぁ…


「誰か放課後に残って、この子に英語…

 というか、この分だと多分他も遅れてそうだし

 全教科、教えてやれるやつ、いないかー?」

「はい!はい!はーい!」

あたしは速攻で手を挙げた

これは、お近づきになるチャンス!


「あたしに…あたしにやらせてください!」

「美遊…いやまあ、先生的には非常に助かるんだが

 勉強そんなに得意でもないだろ?

 何でやりたいんだ…」

「それは、この子が…」

……あ、いや、ちょっとまて

ゲームの悪役に似てるから…などと言ったら傷つくかもしれない…

ここは黙っておこう、うん


「お…オタクに優しい黒ギャルは、転校生にも優しいんじゃん?」

(また言ってる…)

クラスメイトのちょっと呆れた声が聞こえた気がしたけど

あえて気にしない振りをする


「ま、まあいいか。人に教えるのも勉強になるって言うし…

 じゃあ勉強が追いつくまでの間

 放課後、美遊は転校生につきあってやってくれ」

「やったー!」

先生の許可を頂いた!


「よろしくね、麗ちゃん!」

「だ、だから、抱き着かないでもらえます?!」

あたしの腕の中で赤くなってる麗ちゃん

もうホントかわいいなぁ


「せ、先生!身の危険を感じるので、誰か別の方に変えて…!」

「うーん、クラスの誰でも一緒だと思うぞ」

先ほどの熱烈なかわいがりを考えると、ねえ…

いや、あたしが一番ベタベタしてましたけど!


「わ、わかりましたわ…仕方ありません…

 ううう…な、なぜこんなことに…!」

だって麗ちゃんがかわいいから!

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