第8話 非情


「うわあああああああああああ!!!」

驚きと哀しみでダンは激しく取り乱した。さっきまで暖かった母が冷たく、無惨な状態となって死んでいる。こんなことがあるのか?こんな現実があっていいのか?ああ…現実とは非情すぎる…逃げ切れるという奇跡を信じて走っても残酷な結果からは逃れらない。逃れられるはずなどなかった。

「どうだ?人間…目の前で大切なものを失った気分は?」

「あああああああ!!!!夢であってくれ!!これは夢だ!!こんなの現実なわけがない!!まだ何も母さんに返してあげられてない!!母さん!母さん!目を覚ましてくれよ!母さん…!うわあああああああああああああ!!!!!」

エンスの消防士の言葉が全く聞こえないくらいダンは気が参っていた。

「安心しろ…お前もすぐにあっちへ送ってやるからな…」

ダンの首を目掛けてチェーンソーに変形した右手を振りかざすエンスの消防士。

その消防士の瞳には大粒の涙が浮かんでいた。

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