騎士爵領立志編3ー7
翌日、教会にて日課の神への祈りを捧げる。
さて行くか、今朝早くに近衛が屋敷を訪れアメリア様からの言付けを残していった。内容は朝9時に温泉宿の前で待っている、村の案内を楽しみにしているという物だった。
時間より少し早く宿に着き待つと、教会から9時を知らせる鐘が鳴った。同時に宿の扉が開き近衛を引き連れアメリア様が現れた。
「ユウリ、本日は村の案内を頼みますね」
アメリア様の表情が何故か少し硬い、「畏まりました」と跪くとアメリア様は安心したのか表情から硬さが抜ける。
アメリア様に村を案内するために畑から回ることにする。
麦はある程度収穫も終わり、野菜用の畑ではトマトやきゅうりなどの夏野菜が実っている。
アメリア様は野菜畑が気になる様で、何度も止まりながら、畑を見ていた。
「そいえば、シルワ村付近の開拓村は野菜の生育が悪いと聞いているのだけど、この村は何が違うのかしら?」
「この村は野菜の畑に森の土を持って来て混ぜているのです」
何かを思い出す様に独り言を言い考えている。
「面白い試みね、近くの村には教えてあげ無いのかしら?」
「勿論伝えようとはしてるんですが、我が家は近隣の貴族家と交流がほぼ無くて、そこに土を混ぜろ何て言っても信用され無いので・・・」
「なるほどね、なら
森から持ってきてると言う話だとやはりその辺りが関係あるのかしら?」
木も育つとなると、魔物しいては魔力と関係があるのだろうか?こうなると腐葉土を作って混ぜてる事で成長が良いのか魔物の死体が分解された事に意味が有るのかわから無いな。
考え込んでいると、何かを聞き流してしまっていたのか、アメリア様の俺を呼ぶ声が聞こえた。
「ユウリ、ユウリ聞いている?」
「すみません、少し考え事をしていました」
「仕方ないわね、昨日あれから部屋に戻った後、紅茶と一緒に蜂蜜を頂いた時に、この村で作っていると聞いたのだけど養蜂もやっているの?」
「小規模ながら行ってはいますが、山の付近になりますし
視察としては避けた方が宜しいかと」
「護衛もいますし、心配であれば増員致しますので、出来れば見学させて頂きたいですが無理でしょうか?」
森で一番ランクの高い魔物でもDランク、養蜂も隠すほどの事では無いし見て頂くか。
「分かりました。では念の為、護衛の近衛の方を増員して頂いて向かいましょう」
「ユウリ、無理を聞いてくれて感謝するわ。貴方に話したいこともあるので宜しくね」
アメリア様の話したいことはジャスパーの事だろうか?俺も刀の事について聞くタイミングを探していたから丁度良いな。それにしても時々表情が固くなってる気がする。悩み事だろうか?
「アメリア様、先程表情が硬かった様ですが何か悩み事でも?」
アメリア様は表情に出ている事に気づいて無かったのか少し驚きを見せ、その原因について話し始めた。
「昨日、ブレンダ殿に事情を説明した時の事なのですが・・・」
_________________________
「以上が今日起こった事の全てです。
そう告げ
ミランダ殿は腕を組み目を閉じ考えこんでいる。少しの時間が立ちミランダ殿は口を開いた
「アメリア様頭をお上げ下さい。
アタシは王宮の情勢に疎いんでこの際ハッキリと聞いておくよ、ジャスパーって隊長は第二近衛騎士団から出向して来たんだろう? アメリア様、アンタ誰から恨みを買ってるんだい?」
スカーレット卿に話すべきなのか正直迷う所だが、戦力という一点において人数は少ないながらも魅力的で有る事は否定出来ない。
「先ず前提として
スカーレット卿は眉を顰める。
「ご存知かと思われますが、
スカーレット卿は理解出来ないといった様子で顎に手を当て考え込んでいる。
「アタシには理解出来ないんだけど、言い方は悪くなるけど、アメリア様がたとえ気に入らなかったとしても、居てもらった方が便利じゃ無いかい? 他国に嫁いで貰うにしろ、国内の有力貴族に褒美として降家するにしても、利益の方が大きいと思っちまうんだがねぇ」
意を決し狙われるに足る、その理由を話す。
「
スカーレット卿が勢いよく立ち上がりこちらを驚愕の表情で見つめる。
「アメリア様・・正気なのかい? 」
「はい、その為にスカーレット卿にも、ご助力頂きたいと思っております」
スカーレット卿は沈黙の後、魔力が膨れ上がったのを感じたと思うと、いつの間にか首元にナイフが当てられていた。
それを見た護衛が剣を抜き一前に出た。
“スカーレット卿!何の真似ですか!”
”これは王国への叛逆行為ですぞ!“
護衛に「下がりなさい」と命令を下す。 スカーレット卿はナイフを仕舞うと大きな溜息を吐いた。
「はぁ・・・これは問題有りだね、貴族でも家を出るしか無い三男以下や平民で優秀なのを集めたお陰で平均的な戦力は有るんだろうね」
スカーレット卿には問題点を一瞬で気づかれてしまった様だ。
「
「だろうね。平民から引っ張って来ようにも自力でBランクになれる様な奴は、傭兵で生きていくか高い給金で高位貴族に囲われる。王女で有りながら囲えて無いうえに指導出来る者も居無い、有力貴族にも傭兵にも伝手が無いのに、王を目指している。これは泥舟だねぇ」
唇を噛み締める・・・スカーレット卿の言う事は最もだ。
「スカーレット卿・・・いえミランダ殿、
護衛達に振り向き「騒がぬように」と伝えミランダ殿の眼をじっと見た後、深く頭を下げる、目先の少しばかりの支援ではこの人は首を縦に降ら無いだろう。
ミランダ殿の笑い声が響いた。
「アハッハハ その覚悟は中々のもんだね。アメリア様、派閥に入ろうじゃないか」
ミランダ殿の言葉に嬉しさが込み上げる。
「但し条件があるよ」
「
どんな無理難題が来ようとも必ず乗り越えてみせる。そう決意しミランダ殿の瞳を真っ直ぐ見据える。
「条件は一つ、ユウリの協力を取り付けること、あの子がアメリア様の派閥にはいると言えばアタシも手を貸す」
「それだけで宜しいのですか?」
「ユウリはスカーレット領の次期領主だからね。今日の事で断られるかもしれ無いよ?それにユウリの加護も期待してるんだろう? 」
そうだった、今日
「アメリア様、言い忘れてたんだけど、ユウリに今日はもう休むよう伝えてあるから、交渉するなら明日で頼むよ」
時間を置いて、冷静になる前に返事を聞こうと思っていた矢先にそれを潰された事で頭を抱えてしまいそうになる。
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