第20話 時は廻る4

 何かとても困ったような顔をしていた。

 悲しそうな目をして見ていた。

 名前を聞いたことがいけなかったのかな。


 あ、だめだよ。だめ!

 この子、手にも怪我してるじゃない!しかも両手に怪我してるもん。


 ごめんね。ごめんね。本当に・・・・・

 気がつかなくて変なこと言っちゃって。


 「ごめんなさい、気がつかなくて、手も怪我しちゃってるんだね」


 つまらないこと言ったから、悲しい思いさせちゃった。ごめんね。本当に。


 そんなことないよって、答えてくれたみたいに小さく首を横に降った。


 良かった、嫌な思いさせなかったみたい。でも、焦っちゃったよ。汗かいちゃった。


 どこから出したんだろうか?怪我してる手で、そっと小さなタオルを差し出してくれた。


 赤い地に桜が刺繍された小さなタオル。とっても可愛い。いいなあ。


 汗を拭いてね、という優しい心づかい。大きな瞳が優しく微笑んでいる。自分のタオルあるけど、使わせてもらうね。


 「ありがとう」


 とっても、とっても嬉しかった。

 とっても優しい匂いがした。


 汗を拭いた部分を裏に返してタオルを畳む。あれ、可愛い刺繍がある。


 『RIO』ローマ字みたい。

 リオって読むのかな?もしかしたら、この子の名前かもしれない。


 「この刺繍、もしかしたらお名前?リオちゃん、お名前なのかな?」


 頷いた訳じゃないけど、恥ずかしそうに瞳が肯定したように見えた。


 私の名前は凛音(りおん)だけど、パパもママも、友だちも皆が「りお」って呼ぶの。わあ、私のあだ名と一緒じゃない!


 リオちゃんか、とても可愛い名前だね。


 「リオちゃん、私のあだ名も同じ。なんか、嬉しいな」


 なんかリオちゃん、私にとっても似てる気がする。火傷しちゃってるけど、良く見ると眼も鼻も口元も結構、似ちゃってる。


 姉妹か、もしかしたら私たち双子でもいけちゃうかもしれない。


 なんか嬉しかった。よくわからないけど、久しぶりで会った姉妹みたいに嬉しかった。おしゃべりができる訳じゃないけど・・・・・


 二人でいろんなお話をした。知らない人が見ていたら、たぶん一方的に私が一人でしゃべっているだけだけど。


 でもね、ちゃんと私にはリオちゃんの気持ちがわかるんだよ。口に出さなくても。


 凛音が楽しそうに話す。リオが微笑む。

 凛音が悩みを打ち明ける。リオが頷く。


 20分位かな。ほんの短い時間だった。二人の時間はあっという間に過ぎていった。

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