第17話 時は廻る1

 とってもよく似ている。というよりはまるで姉妹か、いやまるで双子のように見える。


 背の高さも体型も、大きめなはっきりした二重瞼の目、漆黒の宝石のように輝く瞳、小ぶりで形の良い鼻、ふっくらとした紅い唇。


 全体のすべてがまるで、自分が鏡で写したようによく似て見えた。


 『髪型も似てるのかな?大きめのニットの帽子を被っているから、よくわからないな。それに、なんか怪我してるみたい?両手に白い包帯を巻いているの』


 凛音(りおん)はこの春で高校2年生になった。高校1年生のときの成績は、常に学年でトップから落ちたことはなかった。


 誰もが振り返るような美少女であるが、友人とつまらない駄洒落を言い合いながらよく笑う、そんな気取ったところなどない気だての良い娘である。


 運動神経の方はあまり良いとは言えないが、いつもどんな場面でも一生懸命に汗を流す姿は、周りのみんなから暖かい好感をもって受け入れられていた。


 仲間と大勢で楽しく過ごす時間も好きであったが、ひとりでぼーっとしているのも好きな不思議な娘である。


 父親は40代半ばになる国内でも有名な大企業に勤める、ごく普通のサラリーマンである。


 仕事はまじめにこなしてはいるが、出世欲や金銭欲など皆無であり、まずは家庭をそして家族を大事にする善き父親である。


 母親も穏やかで優しく美しい女性である。凛音は生まれてからこの方、両親に叱られた経験が一度もなかった。


 両親が一人娘に殊更甘いというわけではない。凛音は叱られるようなことをしない娘であった。


 両親も我が子を厳しく叱るよりも、優しく教えるそんな教育方針のようだった。


 凛音は同性の友達が多い。親友をあげろと言われても困るほど仲が良い友人が多かった。


 頭が良いのに可愛いし、さらに性格も良いから男子生徒からは当然モテる。下駄箱に入れられる手紙や自宅に送られる手紙、スマホに届くメールなども数知れないほどだ。


 今時の若い子と同様に、いつも手離さないスマホやパソコンなどでつながるネットの世界においても仲が良い友達が多い。


 毎日17時までに帰宅して1時間勉強をする。19時前後に帰宅する父を待って、親子三人で楽しく食事をするのが常であった。


 食事を済ませたらリビングルームに3人揃って、23時までテレビを見るのが日課となっている。


 その後は自分の部屋に入り、1時間ほどネットサーフィン。そしてベッドに潜り込む。毎日毎日同じスケージュールであったが、そんな毎日が楽しく充実していた。

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