第6話 永遠の愛2

 最重度の知的障害者の施設であった。最も重い程度の知的障害を有する利用者たちが生活する施設である。0歳児から高齢者までが生活する施設であって、利用者は80人ほどの定員であった。


 様々な理由により、家庭における日常生活が困難な利用者を24時間お預かりして、生活していただく施設である。利用者のお世話をする社会福祉士や介護福祉士や保育士、看護師、栄養士など様々な福祉の専門職種の職員が働いている。


 明雄は、現在この施設を管理運営する事務職として勤務している。施設には入所者とほぼ同数の80人程度の職員がいるが、施設長をはじめ福祉関係の専門職員がほとんどであり、一般事務職は明雄を含めて4人のみである。


 仕事が一番の趣味という真面目で堅物の管理課長、そしてその部下の管理係長である明雄と、係員は22歳の人事担当者と20歳の福利担当者である。管理課は庶務や経理、建物管理などの事務系の管理係と福祉専門職を指導する福祉系の地域係の2係で構成されている。


 就職した福祉団体は本部を中心として、都内にいくつかの施設を抱えている。現場の施設勤務を希望していた明雄であったが、採用時は本部の総務部門に配属され、いくつかの部署を異動し、念願の施設に異動できたのは40歳になった今年の4月であった。


 異動に当たっては、主任から係長に昇任し給料も上がったが、ポストや給料よりも念願であった福祉施設に異動できたことが一番の喜びであった。


 管理係は明雄を含めて3人のみである。部下の真歩と幸子は年齢は2才違うが同期採用の仲良しで、少人数で毎日忙しいが明るく楽しい職場である。


 真歩はクールな美女である。優しいのだが冷たく見えるため損をするタイプである。一方の幸子は愛嬌のある可愛い娘であった。


 幸子は身長も163cmある真歩と比べて、155cmと小柄であり、童顔と甘えるような話しかたも20歳よりは若く見える。幸子は福祉系の職員からも可愛がられ、皆から『さっちゃん』と愛称で呼ばれている。


 真歩も優しいのだか、シャイで自分からは積極的に声をかけない、そんな女性である。人事担当という仕事柄、他の職員のように他人の噂話にも一切関わらないし、『美人であるが冷たい人』というのがイメージになってしまっていた。


 明雄にとっては二人とも優秀で可愛い部下である。幸子の可愛らしさも好きであったが、真歩のさりげない優しさも好きであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る