第三話 記憶の「浄化」と「保護」
「ただいまー」
「帰ってきたときには挨拶を忘れずに」という習慣が役に立っているのか、言われる前に先に言うことができた。
「おかえり...ってお客さんかな?」
「うん、この子は『桜咲桃華』と言うんだ。」
「よろしくお願いいたします!!!」
「いいねいいね、元気が良くて。」
私達は軽く自己紹介をした。ただ、いきなり...
「よく見ると、彼氏&彼女みたい!」
と言われてしまう。
「いやいや、まだ知り合ったばかりだから...。」と茶々を入れるものの...
「あ、息あった。」
「あっ!?」
「わぁ!?」
「ふふ、ふたりとも仲がいいね!」
息があってたみたいで、照れてしまう...。
まあでも、仲が良いにこしたはないだろう。
「さて、そろそろ作業に移ろうか。みんな、来てくれる?」
「わ、分かった。」
私達は良神実に誘われるがままについていき、図書館の外に出た。
そこに広がっていたのは、いつも見る夕焼けの景色と、前見たときにはなかった、現実世界では見たことがないような、とてつもなく大きな樹があった。
「さて、今から『アレ』をするね。」
「アレって?」
「まあ、見てなって。」
すると、彼女は操っていた本を宙に浮かせ、手を私の方に向けて伸ばした。
「一体何を...ぐっ!?」
突然、頭の中が猛烈に痛くなった。まるで周りから何かを貼るかのようだ。
「あ、副作用出てるけどしばらく我慢してて!」
「ぐっ...がぁ...っ!!」
「本当に大丈夫なの!?とても苦しそうだよ!?」
「もうすぐ終わる!!」
彼女はなにかいっているようだが、私はその時は頭が痛すぎて全く耳に入ってこなかった。
風も強く吹いている。きつすぎた。
「結界・生成!!」
といった瞬間、風が一気に止み、頭痛も引いた。
「これで...終わり...?」
「うん、今のは『記憶保護』のための結界よ。これ貼らないとみんなノイズになっちゃう。」
「ほぇ...」
「だけどこの結界も100%ではないの。だから君も記憶を保護するために、より一層気をつけて生活して...ね。」
「私だって辛いこと、いっぱいあったんだから。」
辛いこと...か。あれ、辛いって、どういう感覚だっけ...。
思い出せない...。あのとき全ての記憶を失ったのか...。
「そこでね、貴方達に頼みたいことがあるの。」
「ん?」
頼み事なら得意だが、どんなのだろう。
「私の兄妹たちを、浄化してほしいの。」
兄妹たちも、この世界の住人だったのか...?ていうか、彼女に兄妹がいることさえ初耳だ。
でも...あれ、私って記憶を失う前、旅とかしてたよな...。
だけどその前は...?
「それでね、私の妹が開発してたこの試作品を使ってほしいの。」
「これって...ピストルじゃん。」
「このピストルはね、貴方しか使えないみたいなの。」
(いや、そんな事あるのか?)
「であとこのピストルは無限に撃てるみたい。リロードも挟まず。」
「だけど殺傷能力はないから安心して。」
「...へぇ...。んで、それを何に使えと...?」
「貴方が戦っていたあのノイズに、これを撃ってほしいの。」
「多分、弱点さえ撃てば、浄化はできると想うから。」
「分かった。武器は暫くこれで行くか。」
今まで盾を使っていたが、これさえアレば遠距離からチクチク攻撃ができるし、少しは便利になったかな?
「よし、記憶浄化計画、開始!!」
「おーっ!!」
続く...
記憶のハコニワ-小説版- 微風蒼井 @Murakami_shion
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