第一章 ゼロから始める記憶保護生活
第一話 -現実世界、ただいま。-
「そろそろ現実世界に戻ったほうがいいんじゃない?」
いきなり良神実が声をかけてきた。少しビビった。
「ここでも、「時間」と「日付」と「曜日」という概念はあるからね...。」
「あと、ここでは現実世界で何が起きているかわからないからさ。」
「なんというか...その...なんだろ...。」
言葉が詰まっているのか、照れているのか、いや、照れる状況ではないな。緊張しているのかもしれないな。ただ、この子、どこかで見たような気がする...。
「まあ、とにかく、戻ってみるのもありだよ...えへへ...。」
そうだな、一度帰ってみることにしようか...?
「分かった、一度現実を見に行ってくるね。」
「うん!」
「あ、そうそう。帰りたくなったらそこの台座に立つといいよ。現実セカ期からここに戻るにはベッドの上で寝ると戻れるかもね。」
「あと一つだけ。ここでの記憶と現実の記憶は全部ここに記録されるからね。」
そう言うと、私はコクっとうなずき、
「ああ、行ってくるわ。」
といって言われた台座に立った。
______________________________________
――戻ってきた...現実に。
「いててて...腰が...」
「しかもこの匂い...。なんだよこれ...。」
「ていうか、もう夜なのか。」
目覚めたとき、体全体が重くずっしりとした感覚に襲われた。
周りはゴミ置き場のようで、汗とゴミの臭いがものすごかった。
生ゴミではなかったため、自分の体が生ゴミ臭に覆われることがないので助かった。
だが、どうしてこの場所でハコニワに入ってしまったのか...。よくわからないな。
まずは、ここを抜け出してから状況を整理するか。
抜け出した先に広がっていたのは、ドヤ街のような夜の誰もいない町並みだった。
この時間帯はホームレスもいないかもな...。
それにしても、夜の街に出たのは久しぶりだ。
(とりあえず、家に戻ってこの臭いをなんとかしなくては...。)
そう思い、ダッシュで家に帰った。
ただ、家についたのはいいが...
「...あれ!?鍵がない...!?」
なぜだ、カバンはしまっていて何も取られていないはずなのに...。鍵が消えている。
「一体何があったんだあのときに...!」
「あ゛ー、これからどうする、私よ...。」
「泊めてくれるところ探すか...。」
あきらめて泊まるところを探しに行ったとき、誰かの足音が聞こえた。
「...誰か来る...。」
「近づいてきた...!!」
気配がしたので振り向いてみると、
「あ、こんばんわぁ...。」
なんとも可愛らしい桃髪の女性が現れた。
「こ、こんばんわ...。」
なにか私に用があるのか...?この女性、見たことないぞ...?
「あの、大丈夫ですか!?昼間の裏道にあなたが連れて行かれるところを見たんです...。それっきり、あなたの姿を一回も見ていなかったのですからとっても心配で...。」
心配してくれていたのか...。ありがたいな。なんか心配かけてごめんだけど。
「ああ、そんな事があったんですか...。」
私はほぼ何も知らないから、素でこの反応をしてしまった。このとき、私は申し訳無さで一廃になった。すると、
「もしかして、あなたは記憶を失っているんですか...?」
そう聞いてきた。私はもちろんYesと答えた。
「とりあえず、心配してくれてありがとう。」
「君の名前は...?」
「桜咲桃華(さくらさきももか)です!!あなたは?」
「村上紫音だ。よろしくね。」
「はいっ!!」
「ところで、確か鍵がないって言ってましたよね...。」
そう言われた瞬間、なぜわかったと驚いてしまった。意外と近くで聞いていたのか...?
「もし...その...よかったら...なにもないけど...私の家にしばらく身を隠しておきませんか...?」
「いま外にいるのはかなり危険だと思うし...。」
たしかにそうだな...って、ええ!?
「それって...つまり...しばらくの間泊めてくれるってこと...?」
「はいっ...///」
なぜか、声と様子が変になっている。もしかして照れている?
「ぜひ、お願いします!!」
「はいっ!!じゃあ、私についてきてください!」
衝動にかられて即答したが、大丈夫なんだろうか。いや、私は大人だし、独身の旅人だし...べつにえっちなことされてもいいよ...ね...?
まあいいか、とりあえず向かうことにしよう...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます