姉たちは学園に行きます。
試験という名のゴブリン討伐から1ヶ月が経過した。
バーナード父さんは僕たちがゴブリン討伐を行った9日後に帰ってきた。バーナード父さんは帰ってすぐに騎士団からの報告を受け、そのまま指示を出しているのを見かけた。その後は、執務室に閉じこもって作業をしていたので、食事の時以外で会えてはいない。ルーシイ姉さんとルーナ姉さんはあれからほとんど会えておらず、あっても何か恐ろしいものを見たような顔をして離れていく。その度にエラたちが僕に対してしばらくはあの状態が続くでしょうが気にしなくていいですよ。と言ってくれる。
今日もいつも通り部屋でお昼寝をしていると屋敷が騒がしくなり、目が覚めた。
「ベクトール様、まだ寝ていて大丈夫ですよ。」
ベットから降りようとするとすぐ近くに居たエラが声をかけてきた。
「いや、起きる。」
「そうですか。分かりました。」
エラは僕を再び寝かしつけるのは諦めてくれたようだ。しかし、部屋の外に出るために扉に向かって移動しようとするとエラは扉の前に立ってしまった。過去にも同じようなことが何度かあった。こうなってしまうとどうやっても部屋の外に常識的な方法で出ることはかなわない。僕の部屋は2階にあるが魔法を使えば、窓からの脱出も可能だし、攻撃魔法を使ってエラを攻撃すればエラを倒して出ていくことは可能だと思うがそれが常識的な行動ではないと理解しているので自重することにしている。
「エラ、どうしてにぎやかなの?」
仕方がないので自分の目で確認するのではなく、エラに聞いて確認することにした。
「それはですね。明日の朝早くにルーナ様とルーシイ様が学園に向けて出発されますので、荷物の積み込みなどが行われているからです。」
なるほど、ならば姉さんたちに会って早めにいってらっしゃいと言わないとアルミン兄さんの時のように言いそびれてしまうかもしれない。そうと決まれば少々常識的な行動ではないけど窓から飛び出してでも姉さんたちの部屋に行こう。ルーシイ姉さんの部屋は僕の部屋の1つ右隣で、ルーナ姉さんは2つ右隣の部屋だったはずだから。すぐに行けるはずだ!
「危ないのでベクトール様は今日は夕食の時間まで部屋にいるようにしてください。」
窓に向かって歩き始めるとエラは僕の両肩をつかんで目線の高さを合わせて言ってきた。
「分かった。」
どうやらやろうとしたことがばれたようだ。そんなに分かりやすかっただろうか?
諦めて自室でエラに布製のボールで一緒に遊んでもらい夕食までの時間を過ごした。夕食の席にルーシイ姉さんとルーナ姉さんどころかバーナード父さんとオリビア母さんもおらず1人でさみしく夕食を食べ、お風呂に入って寝た。
翌日、起きるとルーナ姉さんとルーシイ姉さんはもう学園に向けて出発した後だった。残念ながら今回も行ってらっしゃいと言いそびれた!ショックのあまり固まっていっるとエラに抱え上げられそのままオリビア母さんのもとへ連れて行かれた。
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