領都へ

姉さん達が学園に行ってから20日経った。それまでは僕が起きている間は常に近くに居たエラが僕が家の中に居るときのみ離れるようになった。しかし、お外に出ようとするとどこからともなくやって来るのでまだ1人で外に出たことはない。

最近は1人で部屋に居ても暇なのでバ-ナ-ド父さんの執務室を訪ねたり、執務室の横にある書庫で本を読んで、疲れたらオリビア母さんの部屋でお昼寝をすることが日課になっている。最初は書庫でお昼寝をしていたのだけれど、オリビア母さんが寝ている僕を見つける度に自分の部屋に運んで寝かしつけるようになったので、自分から訪ねるようにした。オリビア母さんの近くは非常に落ち着けるのでお昼寝をするのにこれ程いい場所はなかなかないと思う。そんなある日、いつものようにバ-ナ-ド父さんの執務室を訪ねるとバ-ナ-ド父さんに声をかけられた。

「ベク、ちょっとおいで!

今日、街道で目撃情報が相次いでいたゴブリンの殲滅が完了したと騎士団から報告を受けたから、領民を落ち着かせるためにも領内のすべての村に騎士団を大々的なアピールともし万が一にもゴブリンの残党がいた場合の殲滅要因として派遣した。だけど、1か所派遣していない場所がある。どこだか分かるかい?」

バ-ナ-ド父さんはにこにことしながら聞いてきた。

「はい。バ-ナ-ド父さん。それは屋敷のすぐ近くにある街、領都でしょうか?」

「なぜ、そう思う?」

バ-ナ-ド父さんは少し驚いた表情をしながら聞いてきた。

「騎士団が来るよりも領主が来る方が領民が安心できます。しかし、領主は忙しく長くここから離れることはできません。したがいまして、すべての村や町を回ることは不可能です。だからといって、どこかだけを訪問すれば訪問した場所と訪問していない場所との間で不要な争いをうむことになりかねません。ですが、領都であるならば、領主が住んでいる場所でもあるのでただ領主が町におりてきたついでにゴブリンについての情報を告知しただけとなり、不要な争いを避けることができるからです。」

「まったく、ベクは賢いな。アルも、ル-ナやル-シイですら4歳でそのような返事はしてこなかったぞ。」

「それは、周りにこのように応える人が居なかったためではないでしょうか?」

「ハッハッハ!そうかもしれないな。」

僕が真顔で答えるとバ-ナ-ド父さんは笑ながらもどこか納得した表情をした。

「よし、それじゃあベク。一緒に町に行くとしようか!」

「はい。分かりました。」

バ-ナ-ド父さんは立ち上がると僕の頭を撫でながら言った。

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