領民との交流

「ベク、見えてきたよ。ここが領都のル-ラ村だよ。」

馬車に揺られることおよそ20分、バ-ナ-ド父さんが声をかけてきた。最初はバ-ナ-ド父さんの前に跨がって乗馬する予定だったのだけれど、いざ乗馬してみると僕がバ-ナ-ド父さんの想定よりも小さかったようで前に乗せた状態で連れて行くのは怖いということになり、馬車が用意された。

「ベク?降りるよ。」

「はい。」

バ-ナ-ド父さんに着いて降りると外にはエリックさんが率いる1番隊の5人がいた。1番隊は家の騎士団のうちトップの実力を持つ10人で編成されている部隊である。普段は僕たちの護衛がメインの業務のようで家の入り口に1番近い部屋におり、どこかに出かける際にはついてきてくれる。

「さて、とりあえず父さんは町長に用事があるから町長の家で話してくるね。ベクはエリックとエラを連れて行くなら領都内を探索してきてもいいよ。」

バ-ナ-ド父さんはニコニコとしながら言った。

「うん。行ってきます!」

僕は元気よく返事をした。

「エリック、エラ頼んだよ。」

「「はっ!」」

エリックさんとエラが姿勢を正して敬礼をした。

「ん!」

僕も真似をして敬礼をしてみた。

「ブッ!ベクも敬礼してるんだね。うん、良くできてるね。」

バ-ナ-ド父さんが吹き出した、なのでひどいという気持ちを少しでも伝えようと思ってバ-ナ-ド父さんを睨むと頭を撫でながらほめてくれた。

「バ-ナ-ド様、準備ができたとのことです。」

「うん。分かった。今行く。それじゃあ良い子にしているんだよ。」

バ-ナ-ド父さんはそう言うと町長さんの家に向けて歩いていった。


「それじゃあ、行きましょうか。」

「うん。」

僕は返事をするとそのままエラの手を持って町に向けて歩きだした。

しばらく歩くと露店が多く出ている通りに出た。

「エラ、あれ何?」

吊るされている肉の塊を指差して聞いた。

「あれは、お肉屋さんです。」

残念ながら伝わらなかったようだ。

「違う。あのぶら下がってるの。」

「あれはオ-クの腕ですね。」

「おお~。美味しいの?」

「ええ。」

「どうした?ぼう…いやエラがついているということは領主様の所の子供か?そういえば4年ほど前に男の子が産まれたとか言ってたな…えっと名前は確か……ベクト-ルマリビス様だったっけか?」

肉屋のおじちゃんが声を掛けてきた。

「はい。ベクト-ルマリビスです。よろしくお願いします。」

「おお、これはしっかりとした方だ!そうだ。ちょいと遅いが誕生祝いだ!これを持っていきな!」

そう言いながらおじちゃんは店の前に吊るされていたオ-クの腕と奥の棚に置かれていたいくつかの肉を持ってきて渡してくれた。

「えっと、ありがとうございます。」

「おう。もし肉で困ったら家に来な!」

「はい!」

肉屋のおじちゃんにお礼を言って、もらった肉をエラに預けて移動しようとするとすぐ横の店から出てきたおばちゃんが果物をくれた。その後も通りの人が次々と誕生祝いとか言って物を持ってきては渡していった。おかげで物の数分でエラの姿が荷物の山に隠れて見えなくなった。ちなみにエリックさんは護衛なので常に周囲を警戒しておく必要があるため荷物は持っていない。僕は貰ったお花を持っている。

「エラ、大丈夫?」

「大丈夫です。」

エラは何の問題もありませんという雰囲気を出しながら答えてくれたが明らかに無理をしているのが分かったので1度町長さんの家に戻ることにした。

「戻ろうか。」

「そうですね。」

町長さんの家に着くとちょうどバ-ナ-ド父さんが出てきた。

「おお、ベク。やっぱりこうなったんだね。アルの時もル-ナやル-シイの時も初めて町に出たときも同じようになってたね。とりあえず馬車に荷物を積もうか。」

「はい!」

バ-ナ-ド父さんの言葉にしたがって僕は手に持っていた花を馬車に積み込んだ。

来るときは僕とバ-ナ-ド父さん、エラの3人が乗っていても十分にゆとりがあってとても広いと思ったんだけれども、荷物を詰め込むとなんとか3人乗れる状態になった。

うん。たくさん貰ったんだね。あれ?こんなに貰ったけど良かったんだろうか?まあ、いいか。なにか機会があればその時に貰った分のお返しをしようかな。何がいいかな?

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