付き人は忙しい!2

ベクトール様が寝返りを初めてできてからおよそ20日が経過しました。その日の日中にそれは起こりました。

いつものようにベクトール様がベビーベッドの上で手を動かしたり、足を動かしたりして遊んでいるのを眺めていると突然ベクトール様の周辺にキラキラと光るちょうちょが出現しました。私は咄嗟に攻撃だろうかと思い、周囲を警戒しながらもしもの場合はベクトール様をお守りできるように護身用のナイフを構えました。しかし、そのちょうちょからは全く敵意が感じられませんでした。ベクトール様も最初は何かわからずに固まっていましたがすぐにちょうちょに手を伸ばして掴もうとしました。しかし、何度挑戦しても全く手が掠る気配もなくしばらくするとベクトール様から寝息が聞こえてきました。それと同時にちょうちょも姿を消しました。

翌日もそのまた翌日もベクトール様が目覚めるとちょうちょは出現し、ベクトール様が寝付くと消えました。

そんなことが1ヶ月ほど続いたある日、ベクトール様を包み込むように生暖かい風が発生し始めました。しかもこの風はベクトール様が起きている時も寝ている時も発生していました。旦那様と奥様に報告をすると念のため交代でベクトール様のお側に常に誰かがいる状態になるようにという指示のもと、ルーシイ様とルーナ様のお付のメイドたちも含めたマリビス家に仕えている使用人全員が代わる代わるベクトール様の近くにいる状態が出来上がりました。

そんなことが起きて数日たったある日、作業をしていると寝ているベクトール様を包む風に手が当たりました。すると、手を覆うように光のちょうちょが出てきました。特に攻撃をされたというわけではなかったのですが、その後も風に何か物が当たるとそれを確認するかのようにちょうちょが出てきました。

さらに数日経つとベクトール様の周りに水球が出てくるようになりました。そして、寝ている際に風に当たるとちょうちょが出てきて確認するときと水球が出てきて同じようにまとわりついて確認する場合の2パターンに変化しました。水球が出てきたときは旦那様や奥様も「3属性持ちだ。」ととてもお喜びになりましたが、私たちの話を聞いてより一層注意するようにとおっしゃいました。

それから月日は流れ、ベクトール様の異常さはより一層際立つようになりました。特に言語についての修得が早く、こちらの言っていることを正確に理解し、聞き返してくることも増えました。時々、とても難しいことを聞き返してくるのでそれにお答えするのがとても苦労することです。

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