付き人は忙しい!!1

~エラside~

私は貴族に仕えるメイドの1人です。縁あってマリビス領の領主様の次男であるベクトールマリビス様をお世話することになりました。元々、王都の孤児院で暮らしていた私は10歳で孤児院を出て王都にあるメイドや執事の養成施設に入りました。そこで、常に成績上位を取り続けた私は15歳でマリビス家に雇われることとなりました。最初は、リンメイド長の指示で先輩メイドのメラやアイラについて仕事を学んでいました。そんなある日、旦那様が奥様のお腹の中にいる子供の世話係をしないかと聞いてきました。その時は、うまくできる気がしていなかったので少し考えさせてくださいと言い、旦那様もまだ生まれてくるまでに時間があるからそれまでに考えておくようにとおっしゃいました。それから2か月後無事に奥様がベクトール様を出産しました。ベクトール様は予定よりも早く産まれてきたのでお医者様の手配が間に合っておらず私たちメイドが全力でサポートに当たりました。そうしてサポートをしている中で私の中で何かが変わっていくのを感じ、ベクトール様が産まれたその日のうちに私は旦那様にお世話係をしたいですと申し出ました。旦那様は笑いながら任せたとおっしゃってくださり、その日付けで私はマリビス家のメイドからベクトール様のメイドになりました。

ベクトール様のメイドになってからすぐにベクトール様の異常さに気が付きました。私は孤児院でまだ首も座っていない子供の面倒を多く見てきましたが、これほどまでに泣かない赤ちゃんはいませんでした。ベクトール様も産まれて数日はよく泣いていましたが、日を追うごとに泣く回数は減っていき1月もすれば1日に5度ほど泣くだけになりました。代わりに「アー」とか「うー」と声を出して何かを訴えてきます。最初は何を訴えてきているのか全く分かりませんでしたが、そのうち法則性があることに気が付きました。「アー」と言っているときはお腹がすいたときのようで奥様が母乳を与えれば再び寝入ってしまいます。「うー」というときはおしめが汚れた時でそんな時はおしめを変えてあげれば落ち着きました。はっきりと言ってとてもベクトール様のことが怖いと感じてしまい、リンメイド長や先輩メイドのメラやアイラにも相談しました。ですが、その時は皆偶然でしょうと言って笑っていました。

その後、数か月経つとアルミン様、ルーナ様、ルーシイ様がベクトール様に会いに来る許可が下り、毎日のように訪ねて来られました。ですが、毎回ベクトール様がお昼寝をしている時に訪ねてきてしまい、奥様からベクトール様が寝ている時は子供達とは合わせないようにと言っていらしたので、なかなかお会いすることは難しかったです。そんなある日、たまたまベクトール様が起きていらっしゃるタイミングでルーナ様がいらっしゃいました。

ルーナ様は初めて見たベクトール様にとても興奮され、ベクトール様に向かって一生懸命に手を振っておられました。すると、ベクトール様が興味を持たれたようでルーナ様の手を追いかけるように寝返りをしました。まだ、年齢的にも寝返りをするような年ではなく、今まで一度も寝返りをする予兆もなく普通の子でしたら何度もできないと怒りながら練習をしてできるようになることをたった1度で成功させたことにとても驚きました。まあ、その後うつぶせの状態で手足をばたつかせていたので仰向けにしてあげればとてもうれしそうな顔をされていました。ですが、ベクトール様の本当の恐ろしさはこのすぐ後からでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る