転生と死

周囲を確認しようと手足を動かそうとしてみたがうまく動かすことができない。周囲を見渡そうにも視界がぼやけててなんとなく明るい気がするがそれ以上のことは分からない。耳を澄ませばいろいろな音が聞こえてくるけど雑音が多すぎて良く分からない。少なくとも周囲に人はいないような気がする。

さて、ここはどこで僕はどういう状態になっているのだろうか?

「ワオォォン~!」

なんだ?犬の鳴き声?いや遠吠えか?

「「「「ワオォォン~!」」」」

どんどん近寄ってきている。なんとなくこの場を離れた方がいい気がするのに体が動かない。

どうしよう!

「ふぎゃ~!」

痛い!ていうか声出た!ふぎゃ~!って生後間もない赤ちゃんの泣き声がこんな感じだった気がする。

やばい!意識が遠のいていく。

ああ…


♦♦♦


「おい!なぜ戻ってきた!」

「ここは?」

「君はついさっき現世に送り出したではないか!なぜ、戻ってきたんだ?」

どうやら僕は再び戻ってきてしまったようです。

「なぜ、ここにいるのでしょうか?」

「それはワシが聞きたいんじゃよ!質問に質問を返すな。」

よく分からないが怒られてしまった。とはいえなぜここに来てしまったのか自分でもさっぱりなんだけどな…。

「すいません?」

「なぜ、疑問形なのじゃ!まあ良い。少しおとなしくしておれ。今君の記憶とお主が現世に降りてから何が起きたのかの確認をするからの。」

「はぁ。」

「それっとな。」

頭に手を置いて何かを確認すると今度はどこからともなく出してきた水晶玉を見始めた。

「なるほどの…。君はどうやらオオカミの群れに襲われて食い殺されてしまったようじゃの。おかしいの、君が現世に降りて5分後には君を世話してくれるであろう女性が来るはずじゃったんだがの…。10分経っても現れておらぬではないか。全く何が起きたのじゃ?」

どうやら僕は世話をしてくれるであろう人に拾われる前にオオカミの群れに見つかり食われてしまったようだ。まったく、今までの会話や行動からこの人は神様であると思っていたのだが、どうやらダメな神様のようだ。

「おい、君今失礼なこと考えていたじゃろ。ここでは心の声も丸聞こえなんじゃから注意しろよ!」

「分かりました。」

「さて、君を保護させる予定だった女性じゃがどうやら家を出てすぐに足を痛めて家に帰ってしまったようじゃ。いつもなら、君を降ろした後5分ぐらいで薬草を採取するためにそこを通る予定じゃったのじゃがな。まあ良い、次こそは保護してもらえるように彼女のもとに降ろそう。とはいえ、君がすぐに死んでしまったら君の記憶を覗くことでワシが怒られることになりかねないからの…。そうじゃ、君に回復魔法と空間魔法、あと、使役術を使えるようにしてやろう!これでそう簡単に死ぬこともなくなるじゃろう。なんせ、けがをしても回復魔法で治すことができるし、襲われても空間魔法を使えば逃げることもできるからの。そして使役魔法によって襲ってくる魔物を使役して味方につけることもできるようになるから全く問題なしじゃな。」

再び自己完結し始めた。

「よし、ではもう戻ってくるではないぞ!」

再び、僕は現世に放り出されたのだった。

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