異世界昆虫日本侵略

第10話 黄金カナブンとバトル

　音の方角を見ると、金色に光る巨大カナブンが猛スピードで近づいてくる。大きさはフルフェイスのヘルメットぐらいの大きさだ。原付バイクと同じぐらいのスピードで近づいてくる。

　そんな巨大な物体が黒宮に突進してきた。

　黒宮もなんとか刀で反応しようとした。カナブンの突進にあわせて、地面に下げていた刀を力を込めてとっさに振り上げる。

　バキンッ！

「あっ……！」

　反応が遅れて刀を振り上げたため、カナブンを刀の鎬地で受けてしまった。勢いに負けて刃が根本から折れてしまった。

　黒宮の目が大きく開かれる。

　カナブンは刀との衝突により方向を変えさせられ、黒宮の右側を通り過ぎていく。そのまま地面に突き刺さる。

　近くまで着ていた鈴木はどうしていいかわからず、彼女の直ぐ側まで近寄り声をかける。

「大丈夫ですか！？」

「なっ……早く逃げてください！　あなたの実力では確実に死にますよ！　死にたいのですか？」

「と言っても……」

　鈴木は上空を見上げる。

　先程のカナブンは空中を旋回してこちらの様子を伺っている。

「さっきの必殺技みたいのは出せないのですか？」

　カナブンに目を離さないまま黒宮は答えた。

「私の魔力では１時間に１回が限度なのです。しかもこの刀では……」

　黒宮は折れた刀を見つめる。

　その隙きを狙ったかのように、カナブンが下降して突進してきた。

「ひっ！」

　今度のターゲットは鈴木だ。

「危ない！」

　黒宮が刀を握っていない左手で鈴木を強く押しのけた。

　鈴木は地面に倒れ込む。カナブンの突進が黒宮の脇腹に直撃する。黒宮はものすごい勢いで後方に飛ばされた。

　衝撃で地面を３回転した黒宮は、息ができない。

「……はっ！　……はぁはぁ……」

「大丈夫ですか！？」

　鈴木は声をかけるが、黒宮は痛みに顔を歪めて起き上がることができない。

　カナブンは再び空中を旋回すると突進してきた。今度の狙いは鈴木だ。

　なんとかしなければ。鈴木は手に持っていた金槌を握りしめ直す。

　イチかバチかだ。金槌を強く握りしめる。

「武器錬成！」

　しかし、金槌に変化は起きない。

「くっ、ダメなのか」

　鈴木は何の変哲もない金槌をカナブンめがけて振り下ろす。が、カナブンの衝撃に負けてしまい手から弾かれる。そのまま突進を腹に食らう。

　黒宮同様３メートルは突き飛ばされた鈴木はあまりの激痛に息ができない。

　二人は地面に這いつくばる。

　再びカナブンが旋回を始める。

　次突進をくらったら死ぬかもしれない。鈴木は死を予感する。

　ザッ。

　鈴木の目の前に黒宮が立ちはだかった。脂汗を出しながらなんとか立ち上がり、鈴木の前に立つ。

「鈴木さん、逃げてください！」

「け、けど、折れた刀でどうやって」

　折れた刀を握りしめ、カナブンをにらみつける。

「いいですから！」

　黒宮は必死の顔で叫ぶ。

　カナブンが狙いを定めて黒宮に向かってきた。

「いちかばちかだ！　その刀を貸すんだ！　早く！」

　鈴木の勢いに促され、黒宮は刀を鈴木に手渡す。

　刀を受け取った鈴木は強く握って叫んだ。

「頼む！　武器錬成！」

　すると、刀の周辺が強い光りを放った。

　一瞬のことだった。目を開けられないような光を放つと、折れていた刃が復活したのだ。

「やった！　できた！」

「これを！」

　刀は折れる前とは違って刃が黒く光っている。黒宮は刀を見て驚きの表情をするが、カナブンはすぐそばまで来ている。

　すばやく刀を受け取ると、突進するカナブンに向かって新しい刀を振り下ろした。

「はっ！」

　スパッ！

　カナブンが真っ二つに切断された。