第309話 蒼魔vs.秋斗①
地を蹴ると大地が爆発した。
粉塵が舞い散るよりも早く、一瞬で神宮寺との間合いを潰す僕。
「なまっちょろい――ッ!!」
しかし、すぐに対処された。
神宮寺が行使したのはスキル【
神宮寺の掌底は物理完全無効の【金剛体】に阻まれる。――が、此処までは読んでいたのだろう。無理に攻撃を仕掛けずに、同じく仕込んでいたデバフスキル【オール・カース】を僕に行使した。掌から放たれる邪眼の呪い。呪術は基本必中だ。放たれた時点で効いてしまう。対処するなら、詠唱中に潰すのがセオリーだろう。奴もそれを分かっていて、敢えて右掌に仕込んで来た。自前のスキルじゃない……! アレは、アイテムか!? 邪眼付きのグローブ。レジェンダリー装備のソロモンだろう。装備時には体力減少のデメリットがあるが、それを承知でこの戦いに持って来たという訳か――!?
……面白いッ!!
総合力を-50%されながらも、僕は笑った。逆境こそが僕のバフだ!! 効果時間は360秒。なら、その時間をコイツで耐える――!
「マキシマイザ――ッ!!」
「!」
叫び、紫電を纏う僕。総合力低下? それがどうした。防御力が下がるのは僕にとってはアドなんだよ! 舐めた攻撃を仕掛けてみろ。数百倍にして返してやる!!
「ッ、馬鹿の一つ覚えが――!!」
「馬鹿で結構! これが僕の武器なんだよ!!」
「【
「投げてないし、勝つ気だよォ!! お前、僕のマキシマイザーを侮るなよォ!?」
「……言っても分からんか……!! 過去の成功体験を忘れられず、一つの技に固執する馬鹿! なら、この僕が思い知らせてやるぞ――ッ!」
「何を……ッ!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」
そこから、神宮寺の猛攻が始まった。
数多のスキルを操り、遠近両刀の好きの無い攻めを見せる神宮寺に対して、僕は成す術も無く削られていった。攻撃を捨て、防御に全振りした構えでもこの被害である。悔しいが、あらゆる面に於いて神宮寺は僕の上を行っている。総合力ではない。使用するスキルの取捨選択。刹那の合間に最適解を繰り返す奴の技術は、一朝一夕で真似出来るものではなかったのだ。
「く……ッ!」
結果論かも知れないが、それでも【
斬・射・砕、と。武器を切り替えながら、逃げる僕に猛追してくる神宮寺。
しかし、分かっているのか、コイツ――!
神速で繰り出される凄まじい攻撃の嵐。
だが、確実に擦過ダメージは吸収している。
マキシマイザーが……打てるぞッ!!
「……来いよ……!」
「ッ!!」
額に汗を浮かべながら、口元を吊り上げる神宮寺。此方の吸収は百も承知って事か!?
挑発!? 何かを狙っている!?
此処で勝負に乗るのは、馬鹿がやる事か!?
しかし――
「ハイパァァァッ!! 翔真斬りだぁぁッ!!」
「――ッ!」
間髪入れずに、僕は乗るッ!!
悩む時間は皆無!!
何故なら僕は馬鹿だからァァァァァッ!!
「吹き飛べェェェェ!! 神宮寺ィィ!!」
「――フッ」
完全に意表を突いた一撃だ!!
回避行動も間に合わない!!
無属性防御無視の、マキシマイザーだぞ!?
「当たれば一撃ィッ!! 絶対に勝つ!!」
「……確かに。当たればね?」
「――!?」
「――【空間転移】」
神宮寺が呟くと、奴に向かっていたマキシマイザーのエネルギー波は、発生した異空間の穴へと吸い込まれてしまった。
思わず、呆然とする僕。
「――さて? 分かったかな、石動蒼魔」
「……」
「どんなに強い一撃でも、当たらなければ意味が無い。スキル【空間転移】は、座標指定が必要な、扱いが難しいスキルだが――習熟すればコンマ数秒も掛からずに自身の手前に時空の穴を展開する事が出来る……」
「それって、つまり――」
「僕に決め技は通らないって事さ。言ってしまえばコレは、"マキシマイザー殺し"という奴だ。スキルに胡座を掻いて、楽をしていたツケを払う時が来たんだよ……?」
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