第252話 狂流川の暇潰し


 ――SIDE:狂流川冥――



 自存派の人達と協力して、学校を占拠してから一日が経った。世間では私は国家転覆を企てた犯罪者らしい。アイドルが一転して、テロリストだって。刺激的でサイコーでしょ?☆


 きっとこうなったのは、運命だったんだと思う。あの日、物陰に隠れていた一人の男の子を見付けた事により、私の行く末は決まってしまった。より面白い方に。より刺激的な方に。口封じとして運転手のオジサンは殺しちゃったんだけど、逆に引き返す道が無くなって良かったと思うなぁ。あのオジサンも本望だよね? だって、アイドルのMe'yに命令されて自害出来たんだもの。私の役に立てたんだよ? きっと幸せの絶頂で死んでいったんだろうなぁ☆


 角の生えた男の子にして、私は全ての情報を聞き出した。魔種混交という存在や政府の悪行。私の知らない未知のお話に、思わず『面白そう!』って、目を輝かせたわ。


 だから、すぐに自存派に接触した。リーダーのレイヴンさんは、想像してたよりも頼りなさそうでガッカリしちゃった。これなら簡単に掌握出来ちゃうって。実際にその通りになっちゃったね? スキルを使わなくても、適当に誘導してあげただけで、コロっと堕ちた。こう言った弱気なタイプは、不安を煽るのが効果的。後は『貴方の味方でーすっ!』 って、忠犬アピールをしてあげたら簡単に騙せちゃった。今では自存派は私の玩具。指先一つで操れちゃう!



「……狂流川さん、此処に居たんですね」


「んー? なぁに〜?」



 棒のキャンディを口から取り出しながら、私はやって来たレイヴンさんへと向き直る。



「現状の報告に来ました。どうやら政府の人達も対応に困っているみたいですね? 要求への返答は、今の所はありません」


「そう、じゃあ現状維持だね。わざわざレイヴンさんが言いに来なくても良かったのに」


「僕自身、やる事が無くて暇なんですよ」



 自嘲気味に笑う彼。

 でも、それは嘘だと思う。



「暇って言うか〜……緊張してるんでしょ♪」


「……はは。やっぱり、分かりますか」



 レイヴンさんは、力無く肯定した。



「この作戦に同胞達の運命が懸かっていると思うと、どうしても落ち着かなくて――」


「ふぅーん……それで、こんな教室まで足を運んで来たって訳ね? 気持ちは分かるけど、まだ1日しか経ってないんだよ? そんな調子じゃあ、儀式までは持たないんじゃない?」


「……お恥ずかしい限りです」



 落ち込んだ様に、肩を落とすオジサン。

 仕方ない。少し元気付けてあげようかな?



「――大丈夫だよ、レイヴンさん。こっちには神奈毘の巫女が付いてるんだもの。私達の作戦は、絶対に上手く行く。政府の人達だってコッチの要求にばかり気を取られて、本当の狙いには気付いてないみたいだしね。案外、呆気なく決まっちゃうんじゃないかなぁ☆?」


「だと、良いのですが……」



 尚も不安そうにするレイヴンさん。

 うーん、この心配性は治らないのかも。


 そこで彼は何かに気付いたのか「そう言えば……」と言って、話題を変えて来た。



「あの、一部の生徒達の姿が見当たらないのですが……心当たりはありませんか?」


「一部? あぁ――」



 そこまで言われて、私は漸く思い出す。



「そう言えば、暫く放置してたんだっけ――」


「は? 放置……?」


「ね。どうせだったら、一緒に来る?」



 気分転換にもなるし――ね。



「……は、はぁ」


「決まりだね☆ ――じゃあ、着いて来て!」



 私はフンフンと鼻歌を歌いながら、探索区へと歩いて行く。こんなにも広いアカデミーだけれど、今は入り口を封鎖しているから、出歩いているのは魔種混交の人達だけ。それもそんなには多くは無いから、殆どが無人みたいだね?


 私が向かったのは、探索区の中でも裏路地にある、大人なクラブハウスである。未成年は立ち入り禁止なんだってー☆ まぁでも、私は入っちゃうけどね? 今は店主さんもいなくなっちゃったし、誰でもフリーで入れまぁ〜すっ☆



「く、狂流川さん、コレは……?」


「オブジェだよー。お洒落でしょ♪」


「……」



 軒下に吊るされた店主さんを見て、レイヴンさんは絶句する。こう言うグロい系は苦手だったのかな〜? ――まぁ、どうでもいっか。


 私は店の中へと入っていく。



「奥の扉がダンスホールだよ。今は学生の皆が使ってるんじゃないのかな?」


「使ってる――とは?」


「見れば分かるよー☆」


「――ぅ」



 レイヴンさんは、恐る恐る扉を開けた。隙間から覗き込む様にホールを見て、やがて、ゆっくりと扉を閉める。



「どうだったー? まだヤッてた?」


「……何故、こんな事を」


「ただ、捕まえておくのも可哀想でしょ? 運動不足の解消も兼ねて、互いに気持ち良くもなれるから良いかなーって☆」


「……」



 小首を傾げる私。黙ってしまったレイヴンさんの代わりに、私は再び扉を開ける。



「わぉ♪」



 激しい腰付きで女子生徒達を襲う男子達。当然皆は全裸でーす! こうやって集めてみると動物みたいで面白いよね☆ 幾人かは床に突っ伏して寝ちゃってるけど、もしかして死んじゃったのかなぁ? 流石に一日中ぶっ通しで理性を無くさせたのは不味かったのかも?


 人質の数が減っちゃったっ!☆


 キャパシティ的には50人程度の小さな箱。そこに100人くらいを詰め込んで、ギュウギュウ状態でヤらせたから、臭いも凄い。汗と体液とが混ざり合い、とんでもない悪臭になってるね?



「止めって言うまで続けてね☆ ――って、言ったのは私だけれど……ふーん。成程成程……続けさせたら、こんな風になっちゃうんだー?」



 これが私の力。私のスキル絶対支配ドミネーション。天樹院君に止められてたから、今までは自重してたけど、これからは思う存分にスキルを行使出来るのっ! 縛られてないってサイコーだねっ☆



「あ、う……ぁ……」


「あは☆ 他人の事を嗅ぎ回るから、そういう目に遭っちゃうんだよ? ――報道部部長さん?」



 全身に白い体液を付着させた部長さんが、呻き声を上げる。すぐに彼女は足首を掴まれ、男子の集団へと引き摺り込まれてしまった。


 助けてー。だって。もしかして、文字坂さんって、男性経験少なかったのかなー?


 それが、1日でこれかー。



「経験人数いっぱい増えて、良かったねっ☆」



 私は笑顔で手を振った。


 女子達にはスキルを行使してないから、素のままで狂乱を楽しんでくれてるみたい。


 皆生き生きとしてて、嬉しいなぁ。中には、動かなくなっちゃった人もいるけれど――



「――まだ生きてるかな? 石瑠藍那さん」


「……」



 目を開けたまま、反応を示さなくなった藍那さん。文字坂さんがまだ抵抗出来てるって言うのに、こっちは随分と呆気なかったね? 太腿を伝う血と体液。その量を見るに、百回ぐらいはヤられたのかなぁ? ヤらせておいて何だけど、百回ってエグいよね。私って、初めては好きな人とが良いタイプだから、尊敬しちゃう。


 まぁ、死んでなければどうでもいっか☆



「暫くしたら、1年生と交代かなー? 誰を虐めたら翔真君の反応が良くなるのか分からないから、取り敢えず虱潰しにヤって行くね?」



 つまり、コレはゲームなの。

 翔真君と私との、楽しい楽しいお遊び。



「楽しみだなぁ……」



 この様子を見て、翔真君は怒るのかなぁ?

 悲しむのかなぁ?

 悔しがるのかなぁ?


 それとも――



「早く、早く来てね……翔真君……」



 私はスカート越しに、自身の秘所へと指を這わせる。もう随分と彼には会っていない。


 欲求不満、か。

 リューコちゃんじゃないけど――

 

 私も、限界が近いよ?



「急いでね翔真君。皆が壊れちゃう前に――」



 ――私を救って。


 言葉を飲み込むと同時に、笑みが溢れた。

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