第244話 秘密の暴露会①
相葉の発表に背を押され、次に口を開いたのは神崎だった。……神崎の秘密と言うと、やっぱりアレか?
……鳩胸か?
いや、しかしアレは身体的特徴。こんなシリアスな場面で明かす様な話ではない筈だ。
一体、何を話すつもりなのだろう――?
僕が、疑問に思っているとだ。
「……俺は、女だ」
『!!』
「今まで黙っていて……悪かった……」
……?
何か、良く聞こえなかったな?
俺はカンダタ……?
……はて? 覆面を被ったパンツ一丁の盗賊が、どうかしたのだろうか?
「おん……は? ……え?」
「歩君が……その、本当に……?」
「…………」
ほら、皆も絶句しちゃってるよ。
相葉なんて、白目を剥いちゃってるぞ?
神崎……一体何を言ってるんだ?
「この事は、翔真にしか話していない……」
「え?」
僕は思わず声を上げてしまう。他の三人は怪訝な目をしたが、紅羽だけは驚いていた。
いや……何の事だか、さっぱり何だが?
「――ごめん。ちょっと良い?」
「……っ」
「あ、ちょっ!」
僕が静止する前に、東雲の奴は神崎の胸を揉んでいた。な、なんて事を……!? ただでさえトラウマだって言うのに、こんな公衆の面前で神崎の鳩胸を揉む奴がいるかッ!?
驚く僕だが、しかし、その反応は意外――
「……っ、く……、……もう、良いか……?」
「――」
――何だ、この艶かしい反応……?
何かエッチぃ気分になってくる……いや、相手は神崎だぞ!? 僕は何を考えて――
「……お、女の子だ……」
へ?
「歩君! 本当に女の子だ――ッ!?」
『えええええええええええッ!?』
叫び声が上がる室内。
そんな中でも、僕は混乱の渦中にいた。
神崎が――女?
いやいや。いやいやいやいや……。
え? ――鳩胸は?
あの話は何だったの?
僕の勘違い?
だとしたら――え?
あの時揉んだ、あのオッパイは――?
「う、嘘だぁぁぁぁぁぁッ!?」
僕は思わず、絶叫してしまった。
「な、何故貴方がそこまで驚くッ!?」
心外だ! と、言わんばかりに僕をキッと睨み付ける神崎。……その所作がもう女の子……!
か、可愛い……。
え? 可愛くないか……?
神崎。え? 神崎!?
お前……マジで女だったのかよぉぉッ!?
「可愛過ぎだろう――!! 始めに言えッ!!」
「な、な、な……」
僕の言葉に、赤面する神崎。
あーもう、ぐちゃぐちゃだ。
収集付かんね、コレ。
「初対面で口説く奴が居るかッ!!」と、憤る神崎。「いや、初対面じゃないから!」と返す僕。事態はグダグダに混迷して行き、話の続きは、暫く経ってから再開された――
「――つまり、婚約者の仇を討とうと?」
「あぁ……そういう事だ……」
「何も男装なんてしなくても……」
「……"私"だって、悩みはしたさ。しかし、針将仲路に近付く為なら、手段を選んではいられなかった……」
「その針将仲路だが――拉致されたってな?」
「……」
「神崎、お前……どうしたいんだ?」
仇を討つというのなら、このまま放っとくというのも手だと思うのだが? 言外に、僕はその選択肢を神崎へとチラつかせた。
「……正直、分からない」
「……」
「奴を亡き者にしたいのか。それとも、正樹殿の墓前に詫びを入れて欲しいのか。私自身の心の中でも、迷いが生じているのは事実だろう」
言って、神崎は学生服の襟元を正す。
「――どちらにせよ、奴には生きてて貰わねば困るのだ。"俺"の為に。正樹殿の為に。生きて贖って貰わねば……ッ!」
「――なら、歩も救出に参加するの?」
「指揮官が、良いと言うのであれば――」
挑む様な目で、僕を見る神崎。こんだけやる気を出されちゃあ、嫌とは言えないよね?
「分かったよ。相葉と神崎はメンバーに入れておく。でも、前提条件として、東雲の協力を得られなければ、救出作戦は成り立たない……」
「……」
「そこんとこ、どうなのかな? 東雲歌音?」
僕は東雲へと視線を向ける。
今度は、彼女が秘密を明かす番だろう。
キツイとは思うよ?
さっきまでの二人と比べて、東雲の秘密は重さが段違いだ。また、立場の問題というのもある。魔種混交の自存派として、東雲はアカデミーに潜入していた。皆を欺いていたという負い目もあるだろう。同胞達だって裏切れない。
同胞……1-Aに潜伏していた魔種混交。草薙太一は連れて行かれてしまっていた。拉致されたのか? それとも自分から着いて行ったのかは分からない。この場で重要なのは、魔種混交としての転移能力を行使出来るのは、目の前の東雲歌音以外には存在しないという事である。
彼女の協力を得られなければ、アカデミーへの潜入なんて夢のまた夢。神宮寺なら無理矢理にでも東雲の事を従わせたのかも知れないけれど、僕はそんな事はしたくない。此方に協力するかは、彼女自身の意思で決めて欲しいんだ。
だから――僕は東雲の言葉を待った。
他の皆も、同じ気持ちだ。
そうして、沈黙のまま十分が経過した頃――
「……私は――」
東雲が、重い口を開き始めた。
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