第224話 真相究明①
呆気に取られる二人を置いて、僕は施設舎の裏っ側に連れられてしまう。当然、辺りには人っ子一人存在しない。完全に神宮寺秋斗とマンツーになってしまった。男同士二人きりというシチュエーション自体がキショいのに、よりにもよって相手がコイツだと言うのが最悪だ。
「良い加減、離せッ!」
「――っと」
僕は、掴まれていた腕を強引に外すと、改めて奴へと向き直る。石瑠翔真は言っていた。神宮寺秋斗に気を付けろと――
この状況は考え得る中でも最悪なのでは? 今すぐ戦闘が起きたとしてもおかしくはない。彼我の戦力差は圧倒的だ。プレイングスキルでカバー出来るか? 神宮寺秋斗の正体が、僕の知るプレイヤーだったとしたら、技量の差なんて殆どないだろう。
ステータスで負け。
技量で負け。
……あと、何だ……?
――いいや。
ネガティブな事を考えるのは止そう。兎に角、大ピンチだという事が分かってれば良い。
「警戒しているね? ……まぁ、それも当然か。――石動蒼魔。お前、何処まで覚えている?」
「!!」
「あー、いーいー。この程度で驚くな。コッチはお前の正体も、お前の目的も看破した上で質問してるんだよ。……見えるか? この眼が?」
「……天帝眼」
神宮寺秋斗の右眼は、碧色に輝いていた。
さっきまでの瞳の色とは違う。
「スキル【
「……天樹院から盗ったのか?」
「盗ったとは人聞きが悪い。僕のは飽くまで物真似さ。スキル効果だって劣化している。それとも君って、模倣して学習する事を窃盗とか言い出しちゃうタイプなのかな?」
「おい、余り過激な発言はするなよ……!」
「ふん? まぁ、何だって良いけど……さ!」
「!!」
言って、神宮寺は僕の首を掴んで来る。
――速いッ!!
躱すどころか、反応すら出来なかったッ!?
「記憶障害か……可哀想に。いや、むしろ良かったのかな? おかげで君は、辛い現実を忘れる事が出来た……此処数ヶ月の異世界生活は、実に楽しいものだっただろう?」
「はぁ!? 何を見て言っているッ!?」
こちとら目覚めた時から最悪だっつーの! 妹に虐められ、姉にシゴかれ、校内ネットじゃ玩具扱い! 挙句の果てには生徒会の化物連中に目を付けらるとかいう不幸っぷりだ!!
楽しかった事なんて――少ししかないわッ!
「不服そうだね? ――でも、コレで不服に思うって事自体が、幸せの証だと僕は思うよ?」
「お前に僕の何が分かる……? 同じプレイヤーだからって、何でもかんでも理解出来ると思ったら大間違いだぞ!?」
「――!」
「図星だな? お前の正体だって、見当は付いてるんだ。なぁ、ランキング1位、御剣直斗ッ!」
プロゲーマー集団・
「……」
「卓越した技量に豊富な知識。そして、レガシオンに懸ける情熱。僕が知る中で、その全てを兼ね備えたプレイヤーは、お前しかいないッ! ……ABYSSの中で、化物になった黄泉の連中と会ったぞ! お前が奴等を変えたのか!?」
赤城駿、野原花糸、鼎夕……不可抗力とはいえ、僕は奴等を殺してしまった……ッ!!
その原因がこの男にあるというのなら、
僕はコイツを許せない……ッ!!
「……アレは、不幸な事故だった」
「――ッ」
「ABYSSの100階層には"無色の果実"が存在する。僕はソレを"
「レ、レガシオン……」
「レガシオンを得た者は、"超越者"へと進化する事が出来る。……僕は黄泉の皆を"超越者"へと進化させたかったんだ――」
「超越者? 進化? それって、ゲームの中の話だよな? 今はそんな事よりも、現実の――」
「――レガシオン・センスはゲームじゃない」
「…………は?」
「言うなればアレは、並行世界の知識により形成した仮想シミュレーターだったんだよ」
「仮想……」
「君の世界にも、"ABYSS"は有ったんだ。現実にではなく、ネットワークの中にだけどね?」
……意味が分からない。
ネットワーク?
インターネットの中にABYSSが有って?
それで?
レガシオンは、仮想シミュレーター……?
「僕等はね? プレイヤーとしてではなく、本当の意味での"探索者"として、レガシオン・センスというゲームを通しながら、仮想空間内に実在するABYSSを攻略してたんだよ」
「――」
「チッ、面倒だな……? そもそもABYSSとは何か――? 君の場合はそこから説明しなければいけないって事か」
言って、神宮寺は僕へと語っていく。
「ABYSSとは"塔"の頂上に位置する天空の歪み。次元に出来た
「保たなかったら……どうなる……?」
「そりゃあ崩壊さ。以前と同じく、全人類は死滅……いや、全生命体は死滅する」
「………………」
以前と同じ――?
以前――
「この現象は避けられない……だからこそ僕は、レガシオンを求めたんだ。超越者となり、並行世界の移動に耐え得る肉体を得た上で、限られた人類を崩壊する世界から脱出させる。此れこそが僕の目的であり、僕の使命……」
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