第220話 現状把握


「クラス対抗戦の概要?」



 僕は通天閣の言葉に耳を傾けた。そう言えば、まだ説明を聞いていなかったな。僕が寝ている間に何らかの発表があったという事か?



「今回のクラス対抗戦は、トップクランが付けた生徒のpointで決まるらしいぜ?」


「ポイント? ……評価みたいな事か?」


「that's right! 訓練教導が終わる度に、それぞれの生徒にクランの代表がpointを付与する。最終的には教室単位で纏めて、一番pointを多く獲得出来たClassが勝者って訳だ」


「何だか、テストみたいだな……? ポイントは100点が満点なのか?」


「……いや、20点だ。1人20点を上限として、三日間採点されるらしい」



 神崎が僕の問いに答えてくれる。四角いテーブルを挟んで、向こう側が通天閣。隣に座るのが神崎という配置で僕等は朝食を摂り始めた。



「1日目の結果はもう出てるのか?」


「今、URLを送ってやる。そっちを開いてくれれば、クラス対抗戦のページへと飛べるぞ」


「ふぅん……?」



 神崎が自身の魔晶端末ポータルを操作して、僕にショートメールを送ってくれた。内容を確認しつつ、送られてきたアドレスをタップすると、1年次第2回クラス対抗戦のホームページへと飛ぶ事が出来た。ページの作りは簡素だね? まぁ、必要な情報さえ確認出来れば良いんだから、凝る必要なんて無いのだろう。


 僕はページを眺めながら、パンを齧る。


 その内容は以下の通りだ。


 [教室順位]

 1.1-A…301点

 2.1-B…276点

 3.1-C…262点

 4.1-D…248点


 [個人順位]

 1.御子神千夜…20点

 2.鶯卍丸…20点

 3.針将仲路…20点



 まぁ、概ね予想通りと言った所だけど……個人順位。これは何だ? A組が揃って最高得点を叩き出している。忖度か何かだろうか?



「神崎……」


「あぁ、分かっている。個人順位に引っ掛かりを覚えているんだろう?」


「but、A組だけじゃない。八尾比丘尼の教導を受けた連中は、軒並み20pointをGetしている。教官のAKITOが一律で20pointを与えたんだ」


「それって、有りなのか……?」


「……有りかどうかは分からんが、全員が一律で同じ点数を獲得したという事は、順位としての変動は少ないだろう」


「え?」


「YES、各クランの生徒の希望者数は、大凡で均等にされている。問題の八尾比丘尼は各教室から8人だ! イコール、no problem!」


「いやいや、問題はあるだろう……」



 いないとは思うが、個人順位に拘っていた生徒は、八尾比丘尼を選ばなかった時点で泣きを見る事になる。公平な基準を持たず、教官役が自由に評価点を与えらるというのなら、相手の心象によっても評価が変動する可能性があるという事だ。……金を掴ませて評価点を買うとか、それに近しい不正が幾らでも出来てしまう。



「お前の懸念は最もだが……今はそこまで考えなくとも良いと思うぞ?」



 神崎が僕の考えを察して、言葉を続けた。



「日本の三大クランが一生徒の不正に手を貸すとは思えんし、仮に何処かが買収されたとしても残り二つのクランが不正を糾弾するだろう」


「不正とまで行かなくとも、生徒によっては評価を甘めにする者は出て来てしまうんじゃないのか? ほら、神宮寺秋斗とかは朝廷とズブズブだって言うし、公家連中には頭が上がらないのかも知れないだろう?」


「そうだとしたら、受け持った生徒全員に満点を上げたのはおかしいだろう? 点数をやるのは公家出身の連中だけで良い。実際、八尾比丘尼を選択した俺も20点の評価を貰っているしな」


「だとしたら、何で――?」


「訓練教導の内容に寄るものだと思う。昨日は助言を貰っただけで終わってしまったからな? 評価と言って、生徒達に差を付ける事は出来なかったのだろう」


「助言?」


「普段、お前にして貰っている事と似た様なものだ。一人一人にヒアリングをし、これから成長する為の情報を授けてくれたぞ」



 ――成程ね。神宮寺秋斗は随分と熱心に生徒達の面倒を見たのだろう。神崎の口振りから、その事が良く伝わる。奴もレガシオン・プレイヤーだからな? 多少は弁えているという事か?



「……まぁ、忖度かどうかは、二日目の評価点で決まって来るかな?」


「理由を差し引いたとしても、初日に一律で20点をやった事は他のクランから見ても好ましくは思われないだろう」


「今頃はルミナス、マイティーズに詰められていても不思議じゃないね」



 実に良い気味だ。

 想像しながらニヤける僕。



「……Smileはまだ早いぜ? ――翔真。お前は昨日、訓練教導をsabotageしたんだよな? 対抗戦のboobyだ。盛り返す手段はあるのかな?」


「あー……ちなみに通天閣。君、点数は?」


「6点」



 低っっく!?

 コイツ教官に嫌われてんじゃねっ!?



「――wait!! 念の為言っておくが、これでも平均点は取っているからな!? 八尾比丘尼以外を選んだ生徒は、皆こんなもんなんだッ!!」



 そりぁ、お前の教室がショボいんじゃない?

 言い掛けた言葉を、僕は必死に飲み込んだ。


 

「……平均点、ね」



 20点満点中、6点が平均? 他のクランは、そんなにも厳しい値付けをしているのだろうか? 内容が分からないから、何とも言えないな?



「――それじゃあ、御託の続きは2日目の僕の点数を見てから言って貰おうかな……? 追い付ける、追い付けないの議論は、そこからでも遅くは無いと思うしね……?」


 

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