第206話 階層主・魔神ギルタブリル①
気付いたら僕は、高台に居た。周囲は大きく開けており、円形の舞台より外は断崖絶壁となっている。広さは然程なく、大きな公園一個分といった所だろうか? 辺りは古代の祭祀場の様で、地面に置かれた篝火。血の付着した長方形の石台を見て、僕は冷や汗を掻いてしまう。
「🙵□︎■︎■︎♋︎🙵♋︎⧫︎♋︎♍︎♒︎♓︎♎︎♏︎⧫︎♋︎⧫︎♋︎🙵♋︎◆︎🙵□︎⧫︎□︎■︎♓︎■︎♋︎❒︎◆︎■︎♋︎■︎⧫︎♏︎□︎❍︎□︎♒︎♋︎■︎♋︎🙵♋︎⧫︎⧫︎♋︎⍓︎□︎」
背後から、不思議な擬音が響いた。
擬音――としか言えない音であったが、その連続性には意味がある様にも思えた。
「魔神・ギルタブリル――!?」
僕は思わず身構える。翼を生やした蠍の魔神は、空に浮遊しながら此方を見下ろしていた。
「□︎♎︎□︎❒︎□︎♓︎⧫︎♋︎🙵♋︎■︎♋︎♓︎❍︎♋︎■︎□︎♌︎□︎🙵◆︎♒︎♋︎■︎♓︎■︎♑︎♏︎■︎🙰⍓︎♋︎■︎♋︎♓︎■︎♎︎♋︎❍︎♓︎⧫︎♏︎■︎□︎⧫︎□︎◆︎❒︎♓︎■︎□︎♌︎♋︎🙵♏︎❍︎□︎■︎□︎⬧︎♒︎♓︎🙵♋︎⬧︎♒︎♓︎」
「な、何言ってんだ、コイツ……?」
「♋︎♋︎🙵□︎❒︎♏︎🙰♋︎⧫︎◆︎⧫︎♋︎⬥︎♋︎❒︎♋︎■︎♋︎♓︎■︎□︎🙵♋︎……」
な、何語だか分からないが、今、少しだけガッカリしたのが伝わったぞ? 何なんだコイツ? コミュニケーションを取って来る魔物だと?
僕よりも上等じゃないかァァ――ッ!?
「――メンドウダ、ナ」
「!? うぉ! しゃ、喋っ――ッ!!」
最後まで言葉は発せなかった。急降下して来たギルタブリルが、尻尾を振り回して来たからだ。慌てて片手剣・シグルドで応戦する。尻尾の棘には猛毒がある。状態異常にならぬ様、僕は注意しつつ尻尾を叩き落とす。
此方が剣を持ったと見るや、奴の攻撃は変化した。右手にエネルギーソードを顕現し、振り被っては斬り掛かる。空中を蹴る様な動きは思った以上にやり難く、防戦一方となっていた。
「この動き――中身は人間かッ!?」
「……」
「今度はだんまりかよ!? ――っとぉ!?」
いかん。ギルタブリルの剣は正確だ。
隙が無い。
僕の様な素人剣法ではない。
間違い無く、術理を学んだ者の剣であった。
この剣捌きは――覚えがある。
元の世界のランカー
「――第8位!
「!!」
ギルタブリルが反応を見せた。
ビンゴって事か……!?
僕は言葉を続けた。
「何で此処に!? ていうか、何で階層主に!? お前等、何で――何でなんだよォッ!?」
「……」
くッそ、頭が上手く回らない。聞き出すにしても、もっと上手いやり方があっただろう!? 僕も冷静じゃないんだ。元の世界の知り合いが現れて――つっても、大した絡みは無いんだけどさ――平静でいられる訳ないじゃないかッ!
「カシン・ムゲンジン――」
「!」
翼を羽ばたかせ、空中でひっくり返りながら放ったソレは、神崎歩と同じ流派のスキルである。キャラ好感度をMAXにしたら、専用スキルを習得出来るんだっけか!?
「うぉぉォォォォッ!?」
一回斬る度に、数十回の斬撃が舞う。躱しきれないと判断した僕は、背中を見せて逆方向へと駆け出した。勇気ある転進って奴だね!?
火神・無限尽。
攻撃回数をアップさせるバフスキルだ。単純だが、全ての手数が増えるというのは強力だ。大人しく効果切れまで待つとしよう。
僕がそう考えた――その時だ。
「ぬぉっ!?」
――影が通り過ぎた。
思った時にはもう遅く、僕の身体は鷲の様な足に捕えられ、天高く浮遊してしまっていた。
「ソラヲトブ……キブンハ、ドウダイ……?」
「――ッ」
や、やばいっ!!
咄嗟に、空いた右手で
顔の横を擦過する爪。続く第二撃を警戒しながら槍を構える僕だが、掴まれた背中が徐々に肉に食い込んで来ててメチャ痛てぇッ!? ギルタブリルが動くと同時に槍で牽制する僕だが、こんなんジリ貧以外の何物でもない!!
「――マキシマイザー……ッ!」
状況を好転させる為、僕は切り札を切る。ギルタブリルの攻撃を吸収し、マキシマイザーの一撃を喰らわせてやる……!!
そんな、意志が伝わったのだろう。
「――へ?」
魔神・ギルタブリルは、僕を空から放り投げた。高度――いくつだ、此処? 少なくとも、地面に激突すれば痛いじゃ済まないだろう。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!?」
落下死とか冗談じゃねェェ――ッ!?
気分は正にスカイダイビング!!
正し、パラシュートは存在しない模様!!
――空から落とされる。
シンプルだが、何という残酷な処刑方法だろう!? 有翼種が無翼の者に行う最大の差別だ! 重力というのは平等では無かったのか!? 小さくなっていくギルタブリルの姿を見ながら、僕は恨み言と共に、絶叫した――
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