第116話 それ何てエロゲー?


「私……兄様にいっぱい酷い事をした……謝っても、許して貰えないと思うけど……でも」



 大粒の涙を流しながら、しゃがれ声を出す麗亜。



「お願い……いなくならないでぇ……っ」


「……」



 ――そもそも、追い出そうとしたのはお前だろう。とか、言ってる事とやってる事が違うだろう、とか。言いたい事は色々あった。ただ、ヒックヒックと泣き続ける麗亜を見ると、それら全てが馬鹿馬鹿しく思えたのも事実だ。


 だから、僕はこう答えてやる。



「――ハッ! 何を言うのかと思ったら……居なくならないでだとぉ? 僕は石瑠翔真! 武家の名門・石瑠家の次期当主だよぉ? 当主の僕が、フラフラとどっかに行く訳無いじゃない!?」


「――」


「杞憂なんだよ! 麗亜の心配は全て杞憂!! むしろ、僕が居なくなると思われている方が不愉快だね!? 安心しなよ。この先お前が心底嫌がっても、僕はこの家に居てやるからさぁ!?」



「ハッハ――ッ!!」と、笑いながら翔真を倣って宣言してやる僕。実際、他に行くアテなんて無いしね。……内実は結構、切実です。



「……本当? 本当に何処にもいかない……?」


「あぁ」


「私を……許してくれるの……?」


「いいや?」


「……っ」



 麗亜には悪いが、此処ら辺はしっかり言っておこう。許す許さないとか、そういう問題じゃない。何故なら僕は"翔真"じゃないから。ただこの肉体を借り受けてるだけのゲーマーだ。麗亜の被害に遭っていたのは主に翔真だ。彼に比べれば僕はまだ全然虐めなんて受けていないし、彼が受けたであろう苦痛とか諸々を僕は知らない訳だから、軽々に許すとか、そう言った判断を下す事は出来ないし、する気は無かった。


 だから、僕に言える事は何もない。



「――許すも許さないも、言葉では何とも言えないね。だから、麗亜が何かを思ってるのだとしたら、これからは行動で示して欲しい」


「行動で――?」


「あぁ。お前が行動で示すなら、僕も同じ様に態度で示してやる。反応と反射……人間関係っていうのは、その程度のモノだろう?」


「――」


「それじゃ、僕は部屋に戻るから」



 呆然とする麗亜を残しながら、僕はリビングから出て行く。当然、通路には聞き耳を立てていたメイド達が存在した。彼女達は一様に僕に向けて土下座をしており、黙って通り抜けるには、余りにも邪魔過ぎた。



「――お前達も聞いただろう? 僕はお前らを許す気がない。申し訳なかったと思うなら、全ては行動で示せ! 言葉は尽くさないが、僕も態度で示してやる。分かったなら邪魔だ! 退け!」


「も、申し訳――」


「夏織……」


「!」



 土下座から立ち上がり、すぐさま謝ろうとしたメイドの夏織を嗜めてやる。口元に人差し指を置いてやると、彼女は困った様に眉尻を下げながら、通路から退いてくれた。


 他のメイド達も同様だ。


 二階に上がり自室へと戻ると、これまた本当に僕の部屋かと困惑してしまう。整理整頓が行き届き、まるで新品の様な綺麗さを保つ室内。


 荒らされ尽くしていた今までとは、ギャップが余りにも凄まじい……ていうか、此処までされたら逆に不快だわ。僕は天邪鬼あまのじゃくなのである。



「さーて、と……」



 制服を脱ぎ、クローゼットから取り出した部屋着に着替える。ラフな格好となった僕は、そのままメイクされたフカフカなベッドへと身体を預けていく。今日も今日とて激務であった。



「相葉達……大丈夫かな?」



 結局、被害はゼロには出来なかった。相葉や神崎、他数名の生徒が学生主導の保健室から特機管轄のホスピタルに移された事を、影山の口から知らされた。要はそれだけ重傷って事だ。


 暫くは、学校に復帰出来ないかも知れない。


 これは僕の責任だろう。



「何とか、しなくちゃな――」



 言いつつも、自然と目蓋は重くなる。気を張って疲れていたのかも。僕は襲い来る睡魔に抗えず、そのままベッドの上で眠ってしまう――





「ん……う〜〜ん……」



 窓から聞こえる鳥の囀りが、僕を優しく覚醒へと誘ってくれる。腕を伸ばして身体を捻る。固まった筋肉を解しつつ、今は朝の何時なのかと、思考を巡らせたその時だ。



「すー、すー」


「……」



 ――麗亜が居た。


 ベッドの中に。それも何故か下着姿で。意識してなかったから気付かなかったけど、右手のこの柔らかい感触はもしかして――



「ん……っ」



 ケ、ケツだぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!

 朝から妹のケツを揉んでいた!!


 あ、ありのまま今起こった事を話すぞ? 朝起きたら下着姿の妹と同衾していて、兄である僕は妹のケツを揉みしだいていたッ!!


 それ何てエロゲー!?


 レガシオン・センスはエロゲーだった!?



「……しかし、眠ってると可愛いなコイツ」



 すーすー、と。いとけない表情で眠る妹。


 頬っぺたでも、つついてやろうか?


 不埒な考えを抱いた、その時だ。



「――失礼翔真。帰って来たのは知っていたが、今日は早朝トレーニングは――ッ!?」



 ああああああああッ!?

 またも最悪なタイミングで、藍那姉さん!?


 開けて良いとは言ってないですよぉぉ!?



「……翔真、貴様ぁ……このご時世に……!」


「姉さん! これには深い理由わけがッ!?」


「問答、無用!!」



 石瑠邸にて、ぼくの叫びが木霊する。

 我が家はまだまだ落ち着かない様である――



―――――――――――――――――――――


 此れにて第03章終了です!


 麗亜との決着はこういう形となりました。読者様は納得出来たでしょうか? 詳しい感想や次章の予告は作者の近況ノートにて綴ろうと思います。気になる方は是非チェックして下さい。


 画面下部の☆での評価や♡の応援は作者のモチベに繋がります。感想コメントなども(全部は返信出来ないかもだけど)楽しく読ませて頂いていますので、是非お願いします。


 ギフトもありがとー!!

 毎度感涙しております( ;∀;)!!


 それでは、また次回꜀(.ო. ꜆三꜀ .ო.)꜆!!


 


 

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