第107話 クラス対抗戦⑦ 敵々大集合


 ――SIDE:幽蘭亭地獄斎――



「なんや仕舞いか? ほんま、あっけない連中やな? そんなんで良くウチらにちょっかい掛けて来たなー? そのお目出度い神経が分からんわ」


「ぐ、ぁ……ッ」



 式神"前鬼ぜんき"に頭を鷲掴みにされながら、呻き声を漏らす眼鏡君。コイツはもうアカンな。他二人の女共もウチの"蟒蛇うわばみちゃん"が簡単にやっつけてくれたわ。多少やり過ぎ感はあるけども、こっちは"朱雀すざく"と阿弖流爲あてるい"が消されとるんや。全ッ然、満足出来ひんでッ!!



「――しゃあないのぅ。この鬱憤はリーダーはんに責任取って貰おうやないの……」


「うッ!? ――あぁッ!?」


「――!? 芳川さん!? 貴様、何をッ!?」



 苦悶の声を上げる、のほほん女。真面目そうな眼鏡君には、ちぃーっとばかし刺激が強かったかも知れへんな? 見方によっちゃ、扇状的でごっつうエロいでぇ、コレ。


 のほほん女は地面に寝そべりながら、一人で体をくねらせてたわ。知らん奴が見たら、何やヤバい薬でもやってんちゃうかと誤解されるんちゃう? 透明なウチの"蟒蛇ちゃん"が巻き付いた結果なんやけど、"見知の術"が無い哀れな連中には、何が何だか分からんやろうなぁ?



「姫子……ッ、大丈夫!? 姫子!?」



 陰気なデカ女がよー取り乱しとるわ。


 自分だって、ぎょーさん痛め付けられた筈やろになぁ? どれ。そろそろ種明かしと行こうやないの。気付いたとしても、連中じゃあどうにもならへん。全〜部、無駄無駄無駄やさかい。



「苦しそうやなぁ? そりゃそうや。ウチの蟒蛇ちゃんが、その女に巻き付いとんのや。早くひっぺがさんと骨バッキバッキにいわすで〜?」


『!!』



 二人に教えてやったら傷付いた体ぁ押して、のほほん女の体ぁ、必死に弄り始めたわ!!



「――ぷ、あははははははははは! あかん! あかんって阿保やなぁ!? そんなんじゃ助かれへんよっ!? ほんま卦っ体な連中やなぁっ!?」



 触れない、触れない。と叫ぶ戯けを眺めながら、ウチは思わず爆笑してもうたわ。ほんま何やっとんのやコイツら!? ウケるわー。全く学習せんのな? さっきまで何思うて戦ってたんや? あぁ! 何も考えてへんかー!? そんならほんまにアホタレやなぁ!? あははははは!!



「そ、そうだ! 緊急脱出!!」



 ……眼鏡が何か思い付いたようやけど、トロいトロい! 哀れやなぁ? ウチはさっき拾っとった魔晶端末ポータルを手元にフリフリと翳したったわ。



「探し物はコレかいな〜? 大事なモンやったら、簡単に落とさんようにせんとなー?」


「ッ!! ――か、返せッ!!」


「はぁ? 実力で奪ってみろや」


「――ッ!!」



 煽ってやると、眼鏡の方がウチに突進を仕掛けて来た。……さっきの焼き直しやな。流石に飽きて来たわ。当然の帰結としてウチを守護する"前鬼"に阻まれ、そのまま眼鏡は強烈なアッパーダウンを取られとったわ。



「……弱い男は哀れやなぁ? 自慢のリーダーが時間を掛けて壊れる所を見物しときや」



 なんや興味も失せて来たわ。締め付けられた女もそろそろ限界やろう。意識は無くなり、股からは汚い小便を漏らしとるわ。全身複雑骨折で探索者稼業は廃業やな。ま、死ぬ前に気が付いて良かったんとちゃうか?


 自分には才能は無かったです――ってな?



「ッ、ぁ、ぁ――ッ!!」


「やめて……やめてやめてやめてやめてッ!」


「――仕舞いや。ぽっきり、折れろ――ッ!」



 泣き叫ぶ連中の顔を見ながら、ウチはこれ以上ない悦に浸る。やっぱ弱者を甚振るのは最高やなぁ? 自分の存在が上位に感じるし、何より胸がスーッとするわ。性癖から言って、ウチはサディストなんやろうなぁ? なんや若干濡れて――「地獄斎!! 後ろだー!!」――は?



「――おげぇぇッ!?」



 背後からの痛烈な一撃に、ウチの体はくの字に曲がる!! なんや!? 一体何が起こったんや!? 吹き飛びながら振り返り、ウチは憎々しいの驚愕した面を拝んでまう。



「石瑠――翔真――ッ!!」


「ギャアアア!? 何だこの状況ォ――ッ!?」



 なん、だは……こっちの台詞や……糞ッ!!


 痛みに耐えながら地面を滑り、体勢を立て直すウチ。おんどりゃぁぁ!? 田中ァァ!? ちゃんと見張ってろやぁァァァ!!



『――い、石瑠ッ!!』


「卜部に高遠! 芳川!? それ大丈夫なのか!? てか、何この魔晶端末ポータル? 誰の……?」


「!」



 あかん!! アレはウチが落とした――!?



「緊急脱出を押してくれッ! 石瑠ゥゥッ!!」


「わわわ!? え、えーっと……ほいっ!」


「芳川さん!!」



 燐光と共にその場から消えて行く、のほほん女。しくったァァ!! 一人逃したかッ!!



「――セレスティア、鈴、風太郎!! もう様子見はええ!! あのド阿保をやれやッ!!」


『応ッ!!』


「ひょえェェッ!? 一難去ってまた一難!?」



 脱兎の如く逃げ出す石瑠翔真。だが、そうはいかへん!! 絶対に逃がさ――ッ!?



「ヘイヘイヘーイッ!! Go To Heeeeell!!」


「通天閣……ッ、おどれは邪魔やァッ!!」


「地獄斎!? now battingか!?」


「おい、石瑠が逃げるぞ!!」


「ダーリン急ぐジャン!?」


「待ちなさいデースッ!!」


「ヒャッハー! 兎狩りだぜぇぇぇ!!」


「やれやれ……走るのかぁ」


「……!!(ギターを掻き鳴らす音)」



 なんやなんや!?

 滅茶苦茶騒がしくなって来たやんけッ!?



「卜部〜〜! 高遠〜〜! お前らは今の内に脱出しとけよぉ〜〜〜〜!!」



 逃げつつも、そんな事を叫ぶ石瑠翔真。


 ウチらに追い掛けられてんのに、余裕そうやんけ……! 一丁前に級長のつもりかいな!?


 そういう所も腹立つわァァ……ッ!!



「雑魚は放っとき!! 今は石瑠や!! 石瑠翔真のタマを取るゥゥッ!!」

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