第104話 クラス対抗戦④ 相葉
――SIDE:相葉総司――
「紅羽、歩、歌音!! 皆、大丈夫かッ!?」
「人の心配……してんじゃねェェ――ッ!!」
「がッ!?」
「総司!! くっ、この――!」
「ギャハハハハ、行かせるかよーだっ!」
「こ、こいつら……!」
「――私達を分断しようとしている!?」
角刈りの生徒――米田健児が、肩に真剣を担ぎながら傷付いた俺へと躙り寄って来る。
斬られたのは右肩だ。
流血はしているが……大丈夫!
まだ腕は動く。
……4対2の状況で決められなかったのが、痛かった。結局、後から敵が合流して来て数の上でも同数になってしまった。時間は俺達の味方じゃない。こうしている間にも刻一刻とD組の生徒を狙う連中は集まっているんだ。早い所、決着を付けなければいけないのに――!!
コイツ――強い!!
「良いザマだなぁ、相葉ァ。一目見て分かったぜ? テメェは才能に恵まれてやがる。此処に来るまでは挫折なんざ一つも経験してなかったんだろう? 自信満々なその態度を見りゃ大方は察するぜぇ……俺はな? そういうクソ甘ったれた、井の中の蛙の小便みてぇなクソ野郎をブチのめすのを生き甲斐としてんだよォッ!!」
「……ッ!」
「ハハハ! どうするよ相葉!? 此処からどう逆転する!? ――ねぇよ! そんな手段は何もねぇ! テメェはお仲間と一緒に仲良く俺等にボコられるんだッ! 泣きベソ掻いたって許さねぇからな!? 徹底的に嬲り散らかして、もう二度と俺達に反抗出来ねぇようにしてやるぜッ!!」
「――言いたい事は、それだけかッ!!」
「ッ! と――」
横薙ぎに振るった"鋼の剣"の一撃を、米田は一歩後退しながら回避した。お返しとばかりに繰り出される西洋剣の二段切り。型も何も無く振るわれるこの剣が何故にこれ程脅威なのか!?
「くッ!!」
刀身で攻撃を防ぎながら、自身の体が衝撃により後退していくのが分かった。ステータス差による暴力。それがこれ程までに厄介だとは思わなかったよ……!! 技量なんて関係ない。力任せに振るわれた一撃は、その全てが必殺なのだ。防ぐだけでも体力を持っていかれる!!
皆は――!?
「くっ、当たれ、当たれ――!!」
「退がれ、鳳ッ!!」
「歩!? ――キャアッ!?」
「紅羽ちゃん!?」
……駄目だ。あっちはあっちで手一杯。とても支援は期待出来ない。
俺達の陣形はバラバラだ。
【アタッカー】【タンク】【ヒーラー】の三竦みは機能していない。個々の能力差で負けており、敵の思い通りに動かされた結果だ。
どうすれば良い……!?
どうすれば……!?
「そらそら!! 怖くて何も出来ねぇかッ!?」
「ぐ、ぐ、ぎ……ッ!」
「所詮テメェ等はその程度なんだよッ! D組のカス共がッ!! テメェ等の級長……石瑠翔真も後で俺達がぶっ飛ばしてやるよォッ!!」
「――」
翔……真……!?
そうだ――
アイツは、何時もこんな戦闘を行って来たのか? 圧倒的なステータス差。勝てる筈もない力の差を覆し、勝利を掴み取っていた――!
天樹院が、認めた男……。
………………天樹院?
……天樹院。天樹院、天樹院。
天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹院天樹――!
「うぅわァァァァァ――ッ!!」
『!?』
「な、何だコイツ、――急にッ!?」
――剣を振るう。最適化された動作で自身の最速を更に塗り替える様に力強く!!
「ぐぅッ!?」
防がれたか。だが構わない。腕の筋繊維がブチ切れても良い。目の前の障害を排除する。俺はそれだけの機械で良い。回転しろ、鋭くなれ、全てを抹殺する機構に成れ。お前に出来るのはそれだけだろう!?
斬って斬って斬りまくる――ッ!!
「が、ぐッ……ぎぃッ!?」
ほらほら被弾が増えてきた。
やれば出来るじゃないか馬鹿野郎。
そんな低脳だから、お前は天樹院に――
「天、じゅっ……いんンンンンッ――!!」
「は、はぁ!?」
赦さない。アイツだけは絶対に赦さない!!
父さんの……仇ッ!!
それに何より……ッ!
俺を見ろ。
俺を認めろ。
俺は――此処に居るッ!!
「死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェ――ッ!!」
「ひ、ひゃぁぁぁぁぁ!?」
米田健児を切り刻む!!
俺にだって出来るんだッ!!
アイツと同じ事は――俺にだって!!
「危ない、総司ッ!!」
「――はっ」
横合いから強い衝撃を受けた。
何が起きたかは分からないが、俺はその場から吹き飛ばされ、部屋の壁に叩き付けられる。
呼吸すら止まりそうになる、その一撃。
放ったのは、別の新手だった。
「下民が。随分と楽しそうにしているな?」
「……針将、仲路ッ!!」
「名を呼ぶ事を、許したつもりは無いが?」
「貴様がァァッ!!」
激昂する歩の声が聞こえる。
――が、駄目だ。
もう、此方の意識が持たない……。
また俺は……何も……。
◆
遠のく意識の中で、俺は懐かしい夢を見ていた。それは、過ぎ去った過去の残滓だ――
京都御所。
御池庭の辺りに白い髪の美しい少年が佇んでいた。幼かった俺は、父に手を引かれながらその少年の横顔を遠目から見詰めていたんだ。
『――総司よ、お前が守護する御方だ』
父に言われた事を、俺は何となくとしか理解出来なかった。ただ――池の前で佇むあの子が自分の"王様"なのだと言う事は感覚的に分かっていたと思う。浮世絵から出て来た様な、幻想的な少年。因縁とも言える天樹院八房との出会いは、そこから始まったんだ――
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