第102話 クラス対抗戦③ 翔真
何だろう?
多様性という奴か?
目の前ではホモの間に割って入った榊原冬子が、瀕死の重傷を負って死に掛けていた。
そんな状況下でもイチャつく事を止めない二人の男は異様だし、出来得るならばそのまま誰の目にも留まぬ場所で、一生乳繰り合ってて欲しいと僕は願ってしまう。
「お前!? 石瑠翔真!?」
色白金髪の女顔が、僕を見るや否や驚いた様な声を上げた。……認識するなよ、煩わしい。
「はいはいはい、ちょ〜っと通りますよ〜」
「!」
「榊原は――これは、酷い……」
二人の男を押し退けつつ、僕は倒れた榊原へと近寄った。その容体は非常に悪く、まるでダンプカーにでも轢かれたような有様だった。
敵の生徒の情報は予め頭に入れてあった。確か、
因みに、彼我の戦力差はこんな感じだ。
1-D 15.[魔法戦士] 榊原冬子 LV.7
1-A 06.[オラクル]
1-A 07.[狂戦士]
率直に言って――酷いぞ、コレは……。
弱い者虐めというレベルじゃない。
蟻と象の戦いか? こんな事が今、迷宮内の其処彼処で行われているのだろう。
――だから棄権しろと言ったのに……。
「馬鹿め」
吐き捨てながら、僕は
一つじゃ足りないかもな。
キャップを開け、中の薬液をジャブジャブと榊原の身体へと掛けていく僕。一本、二本と回復薬を使い切るが、それでも完治には程遠い。
やっぱり、直接飲ませなきゃ駄目か。
……後で怒るなよな。
思いながら、僕は回復薬を呷って口内に薬液を含ませた。すかさず榊原の唇に口を付け、含んだ薬液を彼女の喉奥に流し込む。
所謂、マウストゥマウスという奴だ。
背後からは揶揄う様な口笛が聞こえたが、今はソイツ等は無視をする。応急処置を終えた僕は、榊原の胸ポケットを弄り、彼女の
直後――燐光と共に、消えていく榊原。
後の事は教職員に任せよう。
さて、と――
「律儀に待っててくれたんだな?」
「伽藍はこう見えて紳士でね。君程度の男を背後から襲う趣味は無いんだよ」
「それは結構。紳士的というなら、このまま僕を見逃してくれても構わないんだけどね〜?」
「ハッ、ほざくなよ石瑠翔真! A組に行った所業を忘れたか!! 鶯の仇だ……この俺、伽藍華院が貴様を成敗してやるッ!!」
「はぁーん? 君が? 出来ると思ってんだったら、お目出度いとしか言い様が無いね?」
「ぬんッ!!」
軽口には付き合わない――か!!
次元収納から取り出した大鎌を振るい、僕へと攻撃を仕掛けて来る伽藍。ギリギリの所をスウェーで躱しつつ、僕も細剣を取り出した。
撃ち合えば折れる……! 武器種の特徴を比べながら、僕は徹底的な回避を選択した。迫り来る黒刃を次々と避け、バク転しながら間合いを取る。追い討つ横薙ぎの一線を馬跳びの要領で回避しつつ、顔面に飛び蹴りを喰らわせてやると、伽藍の奴は驚愕しながらたたらを踏んだ。
「くっ! 伊達に級長は張っていないか!?」
「気付くのが遅いんだよ!!」
「伽藍!!」
「! オラクルの力か、チッ――!!」
好機と見て伽藍の腹部へと細剣を突き入れた僕だが、シュルクリスタの切っ先は光の壁に防がれてしまう。【オラクル・ガード】――戦闘支援を主とする神官職の技だ。単体での戦闘能力こそ低いものの、前衛と組まれると厄介だ。
時間は僕の味方じゃない。
此処は退くのが賢明か。
翻って、通路の奥へと駆け出す僕。
「ま、待て!! 逃すかァッ!! ――ッ!?」
「なァァんちゃってぇェェ――ッ!!」
誰が逃げるかアホタレ――ッ!!
ばーかばーか!!
支援職の魔法範囲から離れてやんのッ!!
「――どっせい!!」
「ごはッ!?」
渾身のラリアットが伽藍の首に決まる。
今までの僕とは違う。総合力250のステータス値から繰り出される打撃だ!!
カウンター気味で放ったのも良かったのだろう。空中で一回転する伽藍に追撃の顔面蹴りをお見舞いして止めを刺す――!!
「な、な、――嘘だッ!!」
「残念ながら現実だよ。御自慢のナイトは綺麗に伸びちゃってるけど……まだやるかい?」
「ひっ!?」
近寄って襟首を掴んでやると、天使の奴はベソ掻きながら震えていた。……ちらりと見える鎖骨が何だか艶かしい。こいつ、本当に男だよな? こうしていると妙な気分を抱いてしまう。
「――貸せよ、
「……ッ、わ、分かった……ッ」
命令通りに従う天使。倒れた伽藍の分も入れて、僕は二人分の【緊急脱出】を押してやる。
途端に、転移の光に包まれていく二人。
「お、覚えてろよ……! いつか絶対、お前の事をギャフンと言わせてやるからな!!」
「はぁ……?」
ギャフンて。
捨て台詞も可愛いかよ。
……まぁいいや。
「コレで少しはRPも盛れたかな……? 他の連中も心配だし……ぼちぼち、急いでみるかー?」
うーん、と伸びをしながら呟く僕。
経過時間は20分。
クラス対抗戦は、始まったばかりである――
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