第94話 クラス対抗戦 ルール説明


「――クラス対抗戦の説明を行います」



 出席を取り終わった影山は、教壇に立ちながら淡々と話を進めて行く。てっきり、サボっていた事を咎められると思っていた僕は、影山の良い意味での関与しない姿勢に助けられた。



「今回のクラス対抗戦は一年生全体で行う事となります。上級生は参加致しません。見学者として会場入りする生徒は居ますが、それも強制ではありません。飽くまで任意での見学となりますので、皆さんは観衆の中、緊張で心乱されぬ様に普段通りの行動を心掛けて下さい」


 はーい。と、頷く生徒達。



「クラス対抗戦は学習区グラウンド横の特別競技場で行われます。施設の中には更衣室がありますので、皆さんは探索用の装備を着用しながらメインスタジアムへと入る様にして下さい」



 探索用装備か。つまりはガチって事だな。原作ではクラス対抗戦で死人が出る事は無かったけれど、非殺傷処理がどの様にして行われているかの描写は無かった筈……ワンチャン、事故る可能性もあるかも知れない。気を付けよう。



「さて、肝心のクラス対抗戦の内容ですが――今回は1学年合同のサバイバル戦となります」


『!』



 影山の言葉に、俄に騒がしくなる生徒達。



「各教室の生徒はそれぞれPTを編成し、魔晶端末ポータルを使ってスタジアムに構築した迷路状の擬似ABYSSへと転移して貰います。そこで遭遇した他教室の生徒を撃破すると、RPに加算が行われるというルールとなります」



 加算されるRPポイントは以下の通りだ。

 

 生徒を撃破……+10RP

 PTリーダーを撃破……+50RP

 級長(及び級長代理)を撃破……+200RP


 各教室の生徒数が25名。PT数が四人編成フォーマンセル5組。五人編成ファイブマンセル1組の計6組と仮定すると、一つの教室が保有するRPは640ポイントとなる。級長がPTリーダーを兼任した場合は+200RPの方が適用されるらしい。+50RPは切り捨てだ。級長がPTリーダーを兼任しないというケースはレアだろうから、大凡の計算は間違ってないだろう。



「――って事はよ、級長さえ倒しちまえば他は無視しても勝てんじゃねー!? ポイント200だぜ、200! 狙わねぇ手はねぇっしょ!!」



 興奮した様に鈴木が言う。

 実際、それが出来たら一番なんだけど――



「簡単に言うな。敵も級長の重要性は理解している。必然的に守りは固くなるだろう」



 それに――と、卜部は話を続けた。



「級長に選ばれるという事は、それ相応の実力を持っているという事だろう? 生半可な戦力で挑んでは、逆に狩られるのがオチだ」


「ならどうしろって言うんだよ!?」


「それは――……」


「もー、二人共! 今は先生の話を聞くのが先でしょ!? 言い争いは後にしてよっ!」



 宇津巳早希に一喝され、鈴木と卜部は互いに「すまん」と謝りながら静かになった。



「……ルールの追加説明を行います。サバイバルの制限時間は2時間。それまでに生き残った者は追加で+10RPを獲得出来ます。つまり、敵を倒さなくともクラスに貢献する事は出来るという事です。ただし、級長を討たれた場合はその限りではありません。級長を失った教室はその場で全員が行動不能となります。言い換えればゲーム終了。獲得したRPはそのままに、他クラスの戦いが終わるまで迷宮外で待機して貰います。当然、生存時に獲得出来るRPも無効となります」



 守りに徹すれば250RPは獲得出来るかも知れないが、相応なリスクはあるという事だ。



「また、生徒の撃破判定ですが――これは敵の魔晶端末ポータルを操作し【緊急脱出】を押した事で撃破とカウントします。迷宮外へと出た時点で敗北となる訳です。各自は操作を誤らぬ様、充分に注意を行って下さい」



 ん? 待てよ……?



「それって、安全面とかはどうなのさ?」


「どう、とは?」


「いやさ、競技とはいえ真剣を使って相対するんでしょ? 間違って死んじゃうパターンもあるんじゃないかなって……」



 教室で発言するのは苦手だけれど、この部分だけは聞いとかなきゃいけないだろう。


 主に、僕の保身の為に。



「生徒を殺傷してしまった場合はペナルティとして獲得報酬を全て没収されます。また、学校が悪質と認めた場合は退学処分も検討されます」


「……成程」


「他に質問が無ければ、以上で説明を終了致しますが――」



 教室内を見渡しながら、影山が言う。

 挙手する生徒は誰もいなかった。


 此れにて、クラス対抗戦の説明は終了した。



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