第44話 ファミレス会議④ 結果
「駄目だな。……ぜんっぜん、駄目だ!!」
『――!』
「お前等、級長の器じゃねぇよ。悪い事は言わねぇ、止めときな――」
返って来た言葉は、辛辣な一言。
1-D生徒。級長候補生を値踏みした結果、生徒会副会長の我道竜子の御眼鏡に叶う生徒は誰一人として存在しなかった。
この結果を誰よりも不服と思い、真っ先に声を上げたのは、意外にも卜部正弦であった。
「芳川の実力は単純な力量ではありません! その性格、人望の高さこそが彼女の本領! 副会長には、先程の言葉を撤回して頂きたい!!」
食って掛かる卜部だが、それは悪手だろう。
「あァん!? 何か言ったか――?」
「!?」
我道竜子の一睨みで、卜部は思わず黙ってしまう。パッジプ・スキルとか、そんな次元では決して無い。生物としての本能が、我道竜子に逆らう事を拒否しているのだ。
「人望が何だって? んなもんはなァ! 実力と一緒に付いて来るもんなんだよッ! ウダウダと理屈を捏ねて他人を矢面に立たせんのは面白れぇか? 級長ってのは成る気のある奴が成るもんだ! テメェが指図する問題じゃねぇッ!!」
「く……ッ!」
「それと、そっちのオホ女ァッ!」
「オホ女――って、わ、私……!?」
「言っといてやるぜ! テメェには才能が全くねぇ! 努力で覆せる程、この世界は甘ぇ所じゃねぇんだよ! 分不相応な生き方をすんな! 最悪な結果を残す事になんぞッ!!」
「……ッ!!」
「最後に、そっちのツンツン頭ァ!!」
「お、俺も!?」
「テメェはもう既に一杯一杯だろう? これ以上は抱えられねぇ。無理をすりゃ自滅だぜ!?」
「――」
「揃いも揃って、雑魚ばかり!! とても級長の器にゃ見えねぇなぁ!?」
我道の言葉に、皆は一斉に俯いてしまう。恐らく、感じる事でもあったのだろう。この女の野生的な審美眼というのも侮れない。
「――こりゃあもう、アレだな。お前が成るしかねえなぁ? ――なぁ、翔真?」
「………………は?」
コイツは一体、何を言ってるんだ?
豪速球で飛んで来たキラーパス。いやいや、そんな物を投げられても僕は受け取れないし、躱せもしないよ?
頭からぶつかるのがオチで、つまりは死!
……ふと、我に帰ると。我道により散々
完全なる、とばっちりである。
「待って下さい! 何で石瑠が級長に適任なんですか!? そこはもっとほら、他に適任が――」
「――いねぇよ! いねぇ! 他の連中は小粒も良い所じゃねーか! 唆られもしねぇし、食う気もしねぇ!! こんな連中を上に添えたとしても、D組は上には上がんねぇよ! 低空飛行で墜落すんのがオチだ! なぁ? そんなつまんねぇ学校生活でお前らは満足なんか!? あぁ!?」
「……ッ、我道先輩は、石瑠ならA組に上げられると信じているのですか!?」
「さぁ? そこまでは知らねぇよ」
「石瑠翔真の何処を見て評価を!? それが分からなければ、私達は納得出来ませんわ!?」
「評価も何も、私からのコイツの評価は何も変わらねぇ……ただの雑魚だ!」
『!!』
「だが――気になるってのも本音でな? こんな何の変哲もねぇ雑魚を、天樹院は特別扱いしてやがる。私はその理由を知りてぇんだ……」
「そんな事で……!?」
「生徒会長――天樹院八房は絶対だ。アイツの眼が石瑠翔真を特別と言うのなら、それは正しいってコトだろう?」
その理屈はおかしい!!
僕はブンブンと首を横に振る!!
「後は仲間内で決めんだな。どう言う結果に落ち着くか……楽しみにして待っててやるぜ」
言って、我道竜子は満足気に店内から去って行く。残された僕達の空気は最悪だ。
あの
後で泣かすリストに追加してやるゥ!!
僕が心中で決意をしていると――
「ふ、ふふふ、ふはははは……」
「う、卜部君?」
「まるで暴風の様な人だったな――? アレが生徒会副会長か……災害めっ!」
「……どうする気だ、卜部?」
「相葉。それは俺に聞く事じゃない。発案者は武者小路だ。奴の話をまず聞こう」
「……話? ――えぇ、そうでしたわね。不愉快な事が多過ぎて、記憶が少し飛んでましたわ」
沈黙する周囲。いや、コレはもしかしたら武者小路流ジョークかも……? 皆、重苦しい空気は止めて欲しい。何だかちょっぴり針の筵です。
「……土日には"自由探索"がありましてよね? そこで、各PTが到達階層を競うというのはどうでしょう? 階層数の高い者が勝者となり、1-Dの"級長"に決定致しますわ」
「同数の場合は?」
「互いに、決闘がベストかと」
「待て! 代表者が決闘というのでは駄目か?」
「……随分と芳川さんを推している様ですけれど、我道先輩の言う通り、級長には強さも重要ですわ。記憶違いで無ければ、芳川さんも総合力は上位の筈。庇う必要はありません。よって、ルールは据え置きで行かせて頂きますわ」
「くッ!」
「大丈夫よ、卜部君。私も精一杯頑張るから」
「……了解しました」
トントン拍子に、話が決まって行くなぁ。
「ちなみに、僕が不参加って場合は――?」
念の為、聞いてみる。
「――無しね」
「無い」
「ありませんわ」
「頑張りましょうね、石瑠君」
「……まぁ、そういう事らしい」
「何でこんな奴が……」
皆、暖かい反応をありがとう――!
僕は思わず、天を仰いだ!
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