95 奇跡のないクリスマス②
なんか、今日……いつもより寒くね?
「はくしょ……!」
はあ……? まさか、俺……風邪ひいたのか?
そういえば、頭痛いし……さっきから熱が出てるような気がするけど。
それに喉も痛くて声が出てこない。
「……あっ、い……」
なんで、あいだけすやすやと寝てるんだろう……。
てか、下着姿で寝てるけど、寒くないのか……? 風邪ひきそうな格好をして、もしあいも風邪ひいたら今日遊園地に行くって約束は破るしかない。俺はもうダメだから仕方がないけど、あいは……みんなと思い出を作るのを楽しみにしていたから。
パジャマ……、どこだろう。
「寒っ」
そっか、俺……昨日あいに襲われて下着姿のまま寝ちゃったよな。
大人になったらどうなるのか、ちょっと怖くなってきた。
「……けほっ!」
「り、りおくん……?」
「あ……い、ふっく着ろ……」
「えっ! こ、声出てこないの?」
「うっ……ん」
びっくりしたあいがすぐ俺を抱きしめてくれたけど、風邪が移ると大変だからそのまま距離を置く。
「えっ! なんで!」
「俺……、風邪ひいたぞ」
そして床に落ちている布団を指した。
「…………」
「昨日、何した……?」
「あああ……。ちょ、ちょっと暑くて……布団を蹴っただけなのにぃ……」
「あい……。寝る時は……ちゃんと布団をかけないと、こうなるんだからさ」
「ご、ごめん……。昨日、やりすぎて……つい」
「いいよ、幼い頃も……そうだったし。そろそろ、準備した方がいいぞ……」
「ダメ、風邪ひいたりおくんをほっておくわけにはいかないから……」
「子供じゃあるまいし、一日くらいはいいよ……」
てか、風邪ひいたのは久しぶりだな。
幼い頃にはあいがよく風邪ひいたからそばで面倒を見てあげたけど、俺が風邪ひくなんて……、またお母さんに一言言われそうだ。それより、約束の時間! まだ八時半だから、早く準備してそっちに向かえば……ギリギリで到着しそう。
そして、話すたびに喉が痛くなるのはしんどいな。
「うん。ごめんね……、今日はりおくんが風邪ひいたから……また今度にしよう。うん、うん……」
「い、行かないのか……?」
「うん。だって、りおくんがいないと遊園地に行く意味ないんだから……」
きっと、今日のこと楽しみにしていたはずなのに……。
「はい! 温かいココアだよ」
「ありがと……」
「今日は丸一日私がそばにいてあげるから、早く治ってね! 治ったら……また一緒に遊園地行こう! りおくん」
「そうしよう」
……
なんか、こういうのは慣れていないって言うか。
あいが俺の面倒を見てくれるなんて……、それにあいが作った料理をベッドで食べるのも不思議だな。てか、これ……幼い頃に霞沢さんが作ってくれた料理と同じ味がする。お母さんに学んだってことか。それよりずっと待っていた高二のクリスマスなのに、こんな風に過ごしてもいいのか……? あいは。
「…………」
そして、丸一日布団の中にいるのも慣れていない。
「夕飯まで任せちゃって、ごめん。あい」
「ううん! 大丈夫、私のせいで風邪ひいちゃったから」
「てか、俺なんか気にせず、あいは遊園地行ってきてもいいのに……」
「あ、あのね……! りおくん」
「うん?」
なんだろう……。さっきからうじうじして。
「私は……その、昔からね……! 適当ってことを知らない人だったから……」
「確かに……」
「…………っ! そ、それで……! もし、りおくん……が嫌だったら私も減らすから……」
「減らす……? 何を?」
「昨日も……私とやったじゃん! 夜遅くまで……! だから、減らすって言ってんの」
あ……、アレのことか。
確かに、あいは俺と過ごす時間が一番楽しいって言ってたよな……。付き合う前には好きな話をして、俺に聞きたい言葉を言わせたけど、付き合ってからはキスやそれ以上のことを求めている。恥ずかしいことばっかりだな。
でも、あいの真っ赤になった顔、すっごく好きだから……。
声も、肌も……、俺は可愛いあいと付き合って本当によかったと思う。
「…………」
てか、自覚してたんだ……?
「ううん……。なんで、減らす?」
「えっ……? なんか、りおくん……私のこと避けてるように見えてね……。や、やる時に……」
「違う。ごめん……、そんな風に思わせた俺が悪かった。俺もあいとやるのは好きだから心配しなくてもいい。ただ……、あいに勝てないっていうか。避けた理由は……その……。恥ずかしくて言えないけど、とにかくあいとやるのは嫌いじゃない」
「何が恥ずかしいの? 教えて!」
「あっ……」
教えてって……、そんなこと俺の口で言えるわけねえだろ。
「教えて!」
「…………嫌だ」
「教えて!」
「嫌だ」
「教えて!」
「嫌だ! あい!」
「教えて!」
「はあ……、本当にあいは……」
「私も知りたいよ! なんで、私を避けるの?」
「そ、それは……あいがいつも俺の上にいるからだ。それ以上言えない……」
「…………」
そして、あいの顔が真っ赤になる。
「そ、それって……つまり……私が重くなったってこと……?」
「ちゃう、それじゃない」
「そう……? ううん……」
「…………恥ずかしいから、もういい!」
「でも、私はそれが一番気持ちっ———!」
「分かったから、それ以上言わないでくれ……」
恥ずかしくて、ついあいの口を塞いでしまった……。
「う、うん……。とにかく、嫌じゃないってことだよね?」
「うん」
「ひひっ」
そういえば、熱が下がったような気がする。
あいのおかげか。
「りおくん、雪だよ! 外見て!」
「あっ、ええ……。こういう時にホワイトクリスマスはずるいんだけど」
「でも、りおくんと一緒に過ごすホワイトクリスマスだから、私は好き!」
「うん、俺も」
そして、後ろからあいを抱きしめる。
「り、りおくん……。動いてもいいの? 熱は?」
「おかげで下がったよ。ありがと〜。俺もさ、あいがいないと何もできない人だからずっとそばにいてほしい」
「当たり前でしょ? ふふっ」
あいと雪を見るのは何年ぶりだろう。
誰かと一緒に雪を見るのはこんなことだったのか、一人で見た時は寂しさを感じるだけなのに、今はすっごくドキドキしている。やっぱり、あいと一緒にいるのが一番楽しいな……。
「りおくん!」
「うん?」
「熱、下がったから……!」
「今日はダメ、完全に治るまでアレは禁止〜」
「えっ! ずるい! さっき嫌いじゃないって言ったじゃん!」
「それとこれと別だから〜。そして、風邪移るかもしれないし〜」
「じゃあ……、風邪が治るまでりおくんとアレできないの……?」
「その通り」
「…………」
それを聞いただけなのに……ふらふらするのか、あいの性欲はすごいな。
とにかく、今日はあいに襲われないから……ぐっすり眠れるかも。
「…………りおくん、好きぃ……」
と、思っていたけど、なぜか俺の上にあいと重い冬布団三枚……。
早く治すためって言っても、これは……ちょっと。
「明日は……りおくんとケーキ食べたいな……」
俺は死にそうだけど、あいは寝言を言ってるのか……!
うん……。そう、これが俺の日常だったよな。
「このバカ……」
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