十五、知らないことばっかり

92 プレゼントは何がいい?

 もうちょっとであいの誕生日……。

 でも、今まで彼女ができたことないから……、何を選んだらいいのか全然分からない。好きな食べ物なら知ってるけど、もう子供じゃないからそんなことできないし。今年の誕生日プレゼントは、あいが喜んでくれるのを贈りたい。だから、丸一日それだけを考えていた。


 こういうのはやっぱり女の子に聞いた方がいいのにな……。

 てか、周りに女の子いねぇ———。


「あいちゃん! 今日、一緒にショッピングしない?」


 いるし!


「あ———!」

「ど、どうした? 北川くん……」

「井原! ちょっと……! 話がある!」

「えっ?」

「京子……? あれ……?」


 誰もいない廊下で、ぼーっとするあいだった。


「ええっ! ど、どうしたの? いきなり……!」

「井原、頼む! 俺……あいに何をプレゼントしたらいいのか全然分からなくてさ、手伝ってくれぇ……!」

「なんだよ……。そんなことなら、あいちゃんに直接聞いた方がいいんじゃね?」

「そんなことできるわけないだろぉ……!」

「ぷっ、そっか〜」


 井原……。めっちゃニヤニヤしてるけど……、大丈夫か……?

 それに、からかわれてるような気がする。


「じゃあ、この京子様が可哀想な北川くんに恩を売る!」


 言い方、ムカつくぅ……。


「お、お願いします……」

「あはははっ、仕方ないね〜。じゃあ、北川くんも一緒にショッピングしよう!」

「そんな方法があったのか?」

「あいちゃんには私が言ってみるから、楽しみだね? 北川くん」

「頼むぞ! 井原」


 ……


 放課後、俺はテンション高い二人とショッピングしにきた。

 そういえば、俺付き合ってからあいとショッピングしたことないよな……? ずっと部屋に引きこもって、一緒に映画を見たり、甘いものを食べたりしたからさ……。でも、いつか二人っきりで行ってみたいなと思っている。


 洋服を買ったり、美味しいものを食べたりして。


「珍しいね。りおくんが来てくれるなんて」

「そ、そっか……? たまに……、たまに…………うん」


 くすくすと笑う京子。


「いいじゃん! 私、りおくんがそばにいるのが好き!」

「ふふっ、あいちゃん! そういえば……、最近買いたい物とか、欲しい物とか、ないの?」

「甘いもの!」

「…………」


 昨日も食べたはずなのに……。


「いやいや、そんなことじゃなくて……! あのね、ううん……。ネックレスとか! そういう物ね!」

「あ……! そっか……! ごめん……、私アクセサリーとか……考えたことないからよく分からない」

「…………」


 なんでこっちを見るんだ……! 井原。

 俺もあいがアクセサリーに興味なかったこと知らなかったから……! そんな目で見ても無駄だぞ。てか、女の子なら可愛いアクセサリー一つくらい持ってると思ってたのに。あいはそんな物に興味なかったんだ……、それは初耳だった。


 そういえば、あいって洋服買うのが好きだったよな。

 それと……下着とか。


「そ、そうなの? でも、女の子なら……ピアスとか……」

「穴開けるのがちょっと怖い……」

「ううん……。ネックレスとか……!」

「それは値段が高いから……」

「指輪など……!」

「指輪を見ると離婚した時のお母さんを思い出しちゃって、ダメ……」

「…………え」


 だから、なんでこっちを見るんだよ! 井原!


「うう———っ、行ってみよう! あいちゃんもキラキラするアクセサリー欲しいよね? あいちゃんも女の子だよ? 一つくらい買っておかないと! そして、北川くんとデートする時に絶対必要だから!」

「そうかな……?」

「それに……北川くんが可愛いって言ってくれるかも?」


 何かコソコソ話してるけど……。


「行ってみたい! どこ?」

「よっし! 行こう行こう!」


 そうやってあいをアクセサリーを売る店に連れて行く井原。


「わぁ……、綺麗!」

「でしょ! あいちゃんはどんな色が好きなの?」

「私……考えたことないけど、もし買うならロズゴールドとか……。私には似合わないかも……しれないけどね」

「ううん……! 似合うよ! じゃあ、これ! このネックレスはどー? 可愛くない? あいちゃんはやっぱりこのネックレスが似合う!」


 ロズゴールド色の可愛い花柄ペンダント、それをあいにつけてあげた井原がこっちを見る。

 今度はドヤ顔なのか……。


「ど、どー? りおくん……、私に似合うかな?」

「う、うん……。か、可愛いよ……」

「あいちゃん、めっちゃ似合う! 私はロズゴールドとか、似合わないから……シルバーのネックレス買っちゃったけどね……。やっぱりあいちゃんは何をしても可愛いね〜」

「う、うん……。あ、あ、ありがと……」

「あっ! あいちゃん、照れてる! あはははっ、可愛い〜」

「ち、違う……! でも、このネックレス……綺麗だね」

「でしょ〜?」


 ネックレスを見つめるあいを見て、微笑む。

 それより、ネックレスをつけたあいやばくね……? 可愛すぎて顔が熱くなってしまう。やっぱりあれしかないよな。普段からスカートやワンピース着るのが好きだから、それに似合うネックレスを贈りたかった。


 でも、あいは喜んでくれるかな……? それがよく分からない。


「あいちゃん! こっちのネックレスはどー?」

「あっ! うん……!」

「どー? 可愛い?」

「ううん……。やっぱり、私は花柄の方が好きかも……ちょっと高いのが問題だけどね……」

「だよね……。他にたくさんあるから! どんまい!」


 またこっちを見てドヤ顔をする井原……。

 全く……、俺も知ってるから……! その顔やめろぉ……!


「…………」


 あっちで二人が話している時、俺はネックレスの値段をチェックした。


「2万4千円…………か」


 よっし、いけそう。

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