84 誰かの視線②
「待たせてごめんね。北川くんとあいちゃん連れてきたよ〜」
二階で先に話している小林と水瀬、このメンバーが集まったのは久しぶりだな。
水瀬の話を聞いた後、ほとんど会えなかったし、会えるチャンスもなかったから仕方がないか。そういえば、この前に水瀬と電車で話したよな。クソ直人の話だったけど、やはり「興味ない」って言葉で終わらせる関係じゃないからずっと気になってしまう。今日も廊下でこっちを見てたし……、一体何がしたいんだ……? マジで分からない。
霞沢との関係ならとっくに終わったはず、今更……関係修復とか、そんなこと?
まだ分からないけど、あいつの性格上、そう簡単に諦めないはずだ。
「それで……、今日はこのメンバーで何をする?」
「北川くん、最近どう過ごしてるの?」
「俺? 俺は……あいと……」
「あやかちゃん! 二人は毎日イチャイチャしてるって!」
「いいね〜」
「井原ぁ……」
それにしても、水瀬は直人と縁を切ったのか……?
「りおくん、なんで水瀬の方を見てんの……?」
人差し指で脇腹をつつく霞沢。
「いや……、水瀬……明るくなったなと思ってさ」
「やっぱり水瀬の方を見てたじゃん!」
「そういう意味じゃねぇって!」
「ええ……、ジロジロ見てたじゃん……!!」
すぐ口喧嘩を始める二人を見て、あやかと京子がコソコソ話す。
「霞沢、あんなイメージだったの……?」
「だよね……。あいちゃん、初めて出会った時はちょっと怖かったけど、あれがあってからどんどん可愛くなってる……」
「確かに……、ちょっと可愛いかも。嫉妬してる子猫みたいだ……」
「あははは、そうだね。あいちゃんはずっと一人だったから、人と話すのが苦手だったかもしれない」
「うん……、明るくなったね。霞沢も」
……
結局、水瀬の方をちらっと見た俺は霞沢に背中を叩かれてしまう。
「今日は二人に話したいことがあるから、カフェに誘ったの」
「うん。二人も知ってると思うけど、西崎……最近調子が悪いっていうか……」
「直人?」
「そうだよ……。私、最近あやかちゃんと……うちでよく遊んでるけど、直人くんが急にベルを押して……」
「私は怖がってる吉乃ちゃんの代わりにラ○ンを送って、二人の関係をちゃんと終わらせたけど……。西崎は吉乃ちゃんの家に来て、ベルを押した。怖くね?」
「……あいつ、何をする気だ?」
「分からない。また吉乃ちゃんに何かを……? まさか……? あれ?」
確かに、あの二人はみんなの知らないところであんなことをやってきたから……。
ベルを押した理由はアレしかないよな。
霞沢との関係が終わった後、急に寂しくなったのか……? それに水瀬も直人との関係を終わらせたみたいだし、つまりお前は一人になったってこと。なのに、どうしてベルを押したんだ? ずっと霞沢に執着してきたお前に……残った選択肢は水瀬しかないからか? まだそんなことを考えてるなんて、情けないにもほどがある。
周りにまた迷惑をかけるつもりかよ、直人。
「大丈夫か……? 水瀬」
「う、うん……。でも、やっぱり怖い……。最近、あやかちゃんがうちに来てくれたから心強いけど、一人になる時は……ちょっと……」
「一体、あいつをどうすればいいんだ……?」
「そういえば、西崎……今日学校であいちゃんの方を見てたよね? 北川くん……」
「井原も知ってたのか……?」
「うん。後ろから変な視線が感じられてね……」
水瀬の家に行ったってことは、こっちに来る可能性もあるってことだよな。
どうして、あいつはそんなことしかできないんだ……?
「りおくん……」
「うん? どうした?」
「私、あの人……嫌い」
「大丈夫。あいのそばには俺がいるんだろ? クッキー、食べる?」
「食べる……」
まずいな……。
「念の為、二人にも教えてあげたかった。だから、カフェに呼んだよ」
「そっか……。ありがと、小林。でも、あいつのことをどうすればいいのか本当に分からない。俺もあいもあいつと連絡してないし、他の電話番号で電話が来ても全部無視してるからさ……。今できるのはせいぜいそれくらいだ」
「確かに、あのクソ男をどうにかできないのが一番怖いよね」
「そう、俺は無視したい。それ以上直人と関わりたくないから」
「だよね……」
小林と話している時、知らない電話番号から電話がかかってきた。
これは、あいつの電話番号か……?
「りおくん? どうした? あっ、この……電話番号は……」
「あいも知ってるのか?」
「お母さんに電話をかけた人……。最初は私の友達だと思って言ってくれたけど、そんな友達いないよって言ったらすぐ電話を切った……」
「え……? あいちゃんのお母さんに? キモすぎ……、怖いんだけど?」
一応電話を切ったけど……、また電話がかかってきた。
本当に怖いな……。
「北川くん」
「あっ、うん。どうした? 小林」
「スピーカーモードにして、私たちに聞かせてくれない……? 吉乃ちゃんも言ってたし、一体誰なのか……。私たちも知りたいから……」
「そっか」
「そして、今は一人じゃない。もし、その電話が西崎なら私たちが全力で手伝ってあげる! 心配しないで、二人とも」
「あ、ありがとう……。小林」
無視するだけじゃ……、この状況は終わらない。
俺も知っていた。
だから、電話に出る。
「…………」
そして十秒間、二人の間に静寂が流れた……。
「りお……、そこにいるのか?」
「……うん。そうだけど?」
やっぱりお前だったのか、直人。
「よかった。りお、俺の話を聞いてくれ……。なんで、二人はずっと俺を無視してるんだ……?」
「…………」
いや、今更何を…………?
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