37 線④
「…………」
違う……。それは違うと思う。
あいちゃんにそんなことをする理由があるの……?
私があいちゃんから感じたその感情は、人の彼氏を奪うことで解決できそうなことじゃなかった。むしろ、悲しそうな表情でりおくんを見ている。あの二人はそれに気づいてないかもしれないけど、私にはそう見えたよ……。まだ理解できないことが多いけど、それでも私にできることがあるなら手伝ってあげたかった。
北川くんも同じ顔をしていたから……。
「今更だけど……」
「うん……?」
「私は羨ましかった」
「何が?」
「北川くんが霞沢のことを大切にしたからだよ。クラスは別だったけど、私……あの二人を見るのが好きだったから……。多分、あの関係が羨ましかったかもしれない」
「私……北川くんと同じ中学校じゃないからよく分からないけど、きっと二人の間に何かあったと思う! 私はそう思うよ!」
「珍しいね。京子ちゃんがそんなことを言うなんて……。そんなに気になるの? 二人のことが……」
「初めてできた友達だから……。そして、なんか切ないっていうか……」
ずっと気のせいだと思っていた。
そんなことないって……。
「…………」
彼氏持ちのあいちゃんが、そんな目で北川くんを見るなんて……。
最初は偶然だと思っていたけど……、二人で話す時の雰囲気と北川くんの曖昧な答えが気になってしまう。もし、それが勘違いだったら……私はまた北川くんに告白をするつもりだった。友達のためって言ったけど……、あやかちゃんには言わず、一人でそんなことを企んでいた。
気持ち悪い女だよね……。私……。
「そういえば、〇〇高校の文化祭」
「うん」
「私も行く! 楽しそうだから〜」
「えっ? 来てくれるの? あやかちゃん……」
「だって、京子ちゃんこんなに可愛いのに……友達ないからね。可哀想だよ……」
「と、友達なら北川くんとあいちゃんと西崎くんいるし! もう一人じゃないよ!」
「ふーん。じゃあ、北川くんも呼んでくれない?」
「えっ? 北川くんを……? どうして?」
「ううん……。話したいことがあるっていうか……、いろいろね」
「…………」
あやかちゃんが北川くんと話を……。
「念の為、一つ聞いておきたいけど」
「うん?」
「京子ちゃん、まだ北川くんのこと好きでしょ?」
「…………どうして、分かるの?」
「顔に出るから……。そしてまだチャンスがあるかもしれないと……そう思ってるんでしょ?」
「うん……。あの時、私を振った時の……その顔をまだ覚えてる。私はね! 北川くんの邪魔になるその記憶を消してあげたい……」
「そうしたら私と付き合ってくれるかもしれない……そう思ってるよね?」
何も言わず、あやかの話に頷く京子だった。
そしてテーブルの皿を見つめながら、考えをまとめる。
「…………」
「あははっ、そうだよね。京子ちゃんは元々こういう女の子だったから……。バカみたいだけど、可愛い。私、そんな京子ちゃん好きだよ」
「でも、あやかちゃんは女の子でしょ……?」
「そんなことどうでもいい! 今は家に連れてってエッチなことしたい!」
「えっ……?! そ、それはダメ……!」
「あはははっ、冗談だよ。冗談〜」
「なんだよ……」
心の中は心配ばかりだった。
ねえ、私じゃダメなの……?
あやかちゃんの話を聞いても分からない、私には分からなかった。考えていたことと全然違ったから、ただショックを受けるだけ。そして人の心は難しい……、北川くんがあいちゃんのことを諦めないと……チャンスなど永遠に来ない。
「…………」
目に見えるものだけがすべてじゃない———。
私はそう信じていた。
「北川くんが何を考えているのか、私が聞いてみようか? 同じ学校だったし」
「えっ、いいの?」
「うん。京子ちゃんが元気になった欲しいから」
「うん……。ありがと……」
「私が知っていること以外のこと……、それが知りたいよね? 京子ちゃんは」
「うん。家に帰った後……考えをまとめてラ〇ンするから」
「うん。分かった。本当に……京子ちゃんはね……」
頭を撫でてくれるあやかちゃんに、私はちょっとだけ安心したかもしれない。
頼りになる人がいるのは本当にいいことだよ……。
「ううぅ……」
「へえ……。いつも告白を断ってきた京子ちゃんが、恋に落ちるなんて。本当に……北川くんはすごいね」
「わ、私は……」
「いいよ。分からないとは言わない。私も応援したいけど……結果がどうなるのかは私も予想できないから」
「うん……」
「そして、塾にはちゃんと出てよ。いつまで引きこもるつもり〜?」
「ご、ごめん……。明日からちゃんと行くから」
「うん……。あっ、そうだ。あの子に、あやかが心配してるってラ○ン送ってくれない? 京子ちゃん」
「うん。分かった……」
「ありがと〜」
話が終わった後、すぐ家に帰ってきた。
そして今まで北川くんに送ったラ○ンを見つめながら、枕に顔を埋める。
今はそうするしかなかった。
そうしないと誰もいないこの家で、私は耐えられなくなるから……。
「…………」
初恋がこんなに苦しいなんて、私は知らなかった。西崎くんの話通り、積極的にアピールしたらきっと私のことを見てくれると思ってたのに……、北川くんの中にはすでに誰かがいた。
私ではない……もっと大切な人が。
その中にいた。
私はどうして北川くんのことが好きになっちゃったのかな……?
「…………」
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