第6話 readme
独りっていうのはとても怖い
だってそうすればいいかわからない
失敗だってするかもしれない
誰もやり方なんて教えてくれない
なのに
必ず誰かがその失敗を見ていて
私を怒るのだ
ああすればいいのに
なぜこうしなかったのか
そしてそれはどんどん伝染していき
やがて皆にとっての共通認識となる
「おい…」
がっかりした
信用してたのに
期待外れだ
そうやって
私のことを…
「ねえって!」
その声でラララは
はっと我に返る
学校である
「話って…なんだよ…」
「えと…」
そうだ
確か男の子になんとか話しかけて
その後授業中ずっとそのことしか考えられなくなっていたのだ
「ギガのこと…持ち帰って
調べて
欲しい」
言えた
言いたいことをちゃんと
昨日の自分よりもだいぶ成長したものだ
しかしそれに対して男の子は酷く動揺していた
「持ち帰るって…
昨日はあんなに嫌がってたのに…」
「それは…
あの…
その…
もういらないから」
だって私にはもうギガは必要ない
もう私一人で生きていかなければならないし
生きる道しるべは既に
ギガからもらっている
しかしそれに対して
男の子の反応は冷たいものだった
「なんだよそれ」
「え…」
急な態度の変化に
ラララはただ驚くしかなかった
「今までさんざん一緒にいて
壊れたからもう用済みってか?」
「そんなつもりじゃ…」
違う
「じゃあどんなつもりだったんだよ!」
「…」
えっと
えと…
全然違くて
そんなんじゃなくて
私はもう
もう…
なんだっけ
上手く考えられない
私酷いことしちゃった?
つらい
つらいつらいつらいつらい
「うっ…うぅ…ひっぐ…うぇ…」
「あ…そのいいすぎた…」
ラララは急に立ち上がると
いてもたってもいられず
そのまま走り出してしまう
「あ!おい!」
しかし
急に走り始めたため上手くバランスをとれず
教室の扉に頭をぶつけてしまう
その衝撃でラララの頭から外れるギガ
前回ギガを外したとき
再装着が甘かったのだろう
しかし
そんなことを気に留める心の余裕が
今のラララにあるわけもなく
ラララはギガを外したまま
逃げるように廊下を走り去ってしまった
※
ラララさん
俺に話しかけるとき
おどおどしてたけど頑張ってたな…
教室には自分とギガだけが取り残されている
ラララはきっと
あの時変わろうとしたのだ
ギガがいないと何もできない自分と決別しようと
恐怖の中一歩を踏み出したのだ
なのに自分は…
そこまで考えると
自分に怒らずにはいられなかった
謝ろうにもラララはもうこの近くにはいないだろう
なら今自分にできることは…
それからすぐさま帰り
親からパソコンを借りて
ギガを繋げてみる
端子は案の定USBだったので
アダプタに苦労することはなかった
だが問題は
読み込みに恐ろしく時間がかかり
それを超えればファイルの数々
何を見ればいいのかさっぱりだった
コンピュータ言語もわかるはずもなく
バグ修正などできない
バグ修正以前に
データが大きすぎて自宅にあるパソコンのスペックでは
システムを起動させることすら叶わない
ただただファイルを開いては閉じの繰り返し
完全に手探り状態だった
だがここで一つのドキュメントを発見する
readme
どれもファイル名がアルファベットで書かれているため
一度見たときは見逃してしまっていたのだろう
「これは…?」
恐る恐るそのドキュメントをダブルクリックすると
あっさりと開かれる
そしてそれは
ラララへ
から始まる長い日本語で書かれた手紙だった
機械少女は微笑まない 那由田 なむ @teikiatu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。機械少女は微笑まないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます